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悪役令嬢は今日も今日とて恋愛相談を待っている。  作者: 聖願心理
序章 ここは乙女ゲームの世界で、私は悪役令嬢ならしい
4/47

3 この世界の説明回です

々語っていたが、長かったので忘れてしまった。というか、途中でまともに聞くのをやめた。

 でも、「最高っ! マジ最高!」でまとめられる気がするので、なんの問題もないだろう。


 というか、がっつりネタバレされたなぁ……。いや、別にプレイする気ないし、ネタバレ気にしない派だからいいんだけれど。


 攻略対象は、さっきから言っているように五人。


 ここザナドゥ王国の第一王子、セオドリック・ザナドゥ。

 宰相の息子、アルフィー・モフェット。

 駆け出しの騎士、メレディス・サクソン。

 国立最高図書館長、ジェーロム・デッカー。

 王宮庭師、クレイグ・オールディス。


 より取り見取りだ。男爵令嬢が、こんなに色々なキャラを落とせるなんて、凄いね。

 身分差ラブは萌えるからか。それにつきるのか。わからなくもない。

 そして、この攻略キャラにつきひとり、メインとなる悪役キャラ、もしくはライバルキャラがいるという。

「そのキャラたちの性格も最高で……! 良い感じに恋を盛り上げてくれるんですよ」とロイドが熱く語っていた。あー、はいはいって感じだった。


 私、ステラ・ラウントリーは、セオドリック王子ルートで、メインを張る悪役令嬢なんだそうだ。


「どうして?」

「ステラ・ラウントリーとセオドリック・ザナドゥは、婚約してるからですよ。ステラはセオドリックに恋をしてましたからね」


 興味のなかった乙女ゲームの話だが、『ステラ・ラウントリーは、セオドリック・ザナドゥ王子と婚約している』という言葉には思わず反応してしまった。

 王子と婚約なんて、普通にびっくりするでしょ。


「幼少期に婚約してるんですよ、おふたり」

「は……? 私と、王子が?」

「はい。年齢も近いですし、ふさわしい身分ですし、当たり前と言ったら、当たり前の話です」

「いつ婚約するの……?」


 今の私はまだ、王子と婚約していない。となると、そう遠くないうちに王子と婚約するということだ。


「近頃」

「近頃っていつなの?!」

「そこまではわかりませんよ。悪役令嬢の過去の話なんて、ゲームで描かれません」

「なんでよ?!」

「悪役令嬢だからに決まっているでしょう」

「ふざけないで!」


 悪役令嬢でも、少しくらい掘り下げなさいよ!

 ライバルがいてこその恋愛でしょ?!


「そもそも、過去の話に詳しい日付なんて、出てこないでしょうに」

「意味がわからないわっ!」

「お嬢様の方が意味不明ですよ……」


 そんな感じで、私が王子と婚約する日にちはわからずじまいだった。



 とまあ、こんなのが基本情報だ。


「……王子と婚約しなければ一件落着じゃないの?」


 要するに、王子と深い仲にならなきゃいいんでしょ?

 婚約しなくて、恋もしなえれば、私に王子とヒロインの邪魔する理由なんてないし。

 まあ、婚約してても互いに両思いだったら、私は潔く引くけど。


「政略的なものですし、そんなに簡単に破棄できるものとは思えません」

「それは一理あるわね」


 王家と公爵家の話だもんね。簡単に行くはずはないかぁ。


「ですから、お嬢様には完璧な公爵令嬢になっていただきます」

「つながりがわからないんだけど?!」


 どうしてそういう流れになった。

 私にはその理由が全くもってわからない。完璧な令嬢になる必要はなくない?!


「完璧で、美しく、上品で、優しい令嬢ならば、セオドリック様も間違いなく、お嬢様に惚れるでしょう」

「待って、私が王子に恋する前提なの?! そして、ヒロインと正面からやり合うの?!」


 勘弁してほしいんですけどっ!


「仮にお嬢様の恋のお相手がセオドリック様ではなくても、完璧な令嬢であれば他の方を落とすのは簡単かと」

「そのために今から頑張るの?!」


 普通、好きな人ができてから、『少しでも可愛くなれるように、頑張ろう♡』みたいな感じでやるんじゃないの?! その方がキュンとくるんじゃないの?! 

 恋愛漫画好きな私としては、そっちの方が断然良いと思うんですけど?!


「備えあれば憂いなしです」

「備えすぎじゃない?!」

「そんなことを抜きにしても、お嬢様は公爵令嬢なんですから、それなりの振る舞いができるようにならなければいけません」

「その理由を最初に言えば良いのではないかしら?!」


 これだから、乙女ゲーム脳は……。


「僕もお手伝いするので、心配しないでください」


 ロイドは私のツッコミを無視して、話を続けた。

 ロイドの手伝いはありがたいけど、絶対通常より高いレベルを要求されるよなぁ。


「具体的には?」


 今だって、算術や歴史を始めとする勉学や護衛術、マナーやダンスのレッスンは専門の先生に習っているのだ。

 五歳児がやる量や内容だとはぶっちゃけ思わないが、公爵令嬢だから仕方ない。身分には責任が伴う。


 かなりの量をこなしているのに、これ以上増えたら私が困る。

 こんなに小さいうちから圧迫しないで! もっと遊びたい! だらだらしたい!


「僕がお嬢様を教育します」


 …………はい?


「と言っても、たいしたことはしませんよ。その日習った事を僕と一緒に復習して、週末にはその週に習った事を復習して、月末にはその月に習った事を復習するだけです。たまに抜き打ちテストとかやるかもしれないですけど、基本はそれだけです」

「……全然“それだけ”に聞こえないのだけれど、気のせいかしら?」

「これでも抑えているほうですよ?」


 真顔でおっしゃるロイドさん。

 怖い。完璧主義者怖い。


 一緒に復習するとか言って、絶対完璧に覚えるまで繰り返すでしょ。

 十分二十分で終わるものじゃないでしょ!


「というわけで、頑張りましょう、お嬢様! 全ては破滅を回避するためです!」

「……もう完全にやる気ね」


 当の本人を置いてけぼりにするやる気ってこれいかに。



 というわけで、前世が乙女ゲーマーな執事による、悪役令嬢(わたし)の教育が始まったのだった。


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