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!?砂漠から始まるお約束だらけのゲーム的なロ―ファンタジー  作者: ハル山ルチロ
空の青、大地の白
20/28

第18話 まるで軌道エレベーターだな!

 その特異点は第一の砂漠にそっくりだった。

 名前からして『始まりの砂漠EX』なのだから当然と言えば当然なのだが。

 

 何もない砂漠を進みながらエンカウントしたモンスターを倒していく。

 

 その過程に違いはない。

 だが進み始めてから少しずつ二つの砂漠の相違点が見えてきた。

 

「あっれェ―!?」


 熱砂の巨人サンドゴーレム。

 いかにも守備力に自信アリという感じの大型モンスターである。


 瞬殺だった。ストリームからの突撃でそのままスパッと真っ二つ。

 

「今のマジ!? 見た目に反して防御力が貧弱すぎるだろ」

「どうも相当な格下みたいねえ。さっきのオロチもクソザコだったし。ヘンなの」


 肩の上でゴロゴロしているニセステラ(小)がどうでもよさそうに答えた。

 

 


 逃げ惑う貧者ゴブリンエヴィサレイタ―。

 ガリガリの体にぼろきれをまとい苦悶の表情を浮かべるゴブリンである。

 

「ぬおおお! 早い! 鋭い! 殺意たけえー!」


 すさまじいナイフの達人だった。

 砂漠で戦った中では一番の強敵かもしれない。

 

「ぐっ! インパクト、最小出力!」

 

 ショウトが刺突連撃を防ぎながら口早にそう唱える。 

 次の瞬間、今にも首筋にナイフを突き立てようとしていたゴブリンの右手が爆ぜ、ほんの一瞬だが致命的な隙が生じた。

 

「野良モンスターに構ってる場合じゃないんだよ!」

「待ちなさい人間。それ捕獲」


 そのまま雑に切り捨てようとしたのだが、ニセステラから妙な指示が飛び出る。

 

 それで結局――

 

「おいニセステラさん? この絵面は割といけない気がするんですけど?」

「なーに言ってんのよ。首級じゃないだけ寛大な処分でしょーに」


 フォースエッジの青白い刀身がゴブリンの腹部を貫いている。

 それを高く掲げると「敵将討ち取ったり!」みたいなセリフが似合う状態だろうか。


 生かさず殺さず利用する。

 ニセステラの話では、プレイヤーが戦闘状態に移行しそれが継続しているうちはエンカウントの判定が行われないらしい。

 

 思えば始まりの砂漠でも戦闘中にエンカウントが起きた記憶はなかった気がする。

 戦わずに逃げを選んだ時は百鬼夜行のごとしだったが。

  

 何はともあれ残酷な仕打ちではある。

 相手が野良モンスターとはいえ、瀕死の状態で砂漠引き回しの刑なんてちょっと人としてどうかと思わなくもない。


「こんなザコに構ってられないでしょうが。前座ですらないのよこいつら」

「わかってるよ。節約できる時は節約する。余裕がないのは確かだしな」


 エンカウントを極力減らすニセステラの作戦は正直ありがたかった。

 ゴブリンには悪いが、その命尽き果てるまで利用させてもらうとしよう。

 

 

 

「前にあんたら乗り物でエンカ回避してたけどさー、ここであんなんやったら確実に女王様から妨害されるからね」

「さっきから出てくる妙なやつらは全部女王のお手製か?」

 

 ストリームで砂漠エリアを北上しながら雑談する二人。


「なんか不自然なんだよな。見た目とスペックが噛み合ってないというか」


 例えば強そうな見た目のくせに瞬殺だったオロチやゴーレムだ。

 あいつらはレベル一の中位種で実質ハリボテみたいなものだったのだという。

 

「てきとーに作ったんでしょ。あの方、ルールやマナーは守るタイプだけど、逆に言うと最低限でも守れば何やってもオッケーみたいな感じだったし……」

「あんまりガチガチに来られても勝てる気がしないから……まあ多少はな」

「あれあれェ~? 女王様とワンチャン戦えるかも? みたいにイキってたのはどこのどなたでしたっけ~?」

「うるせーな状況次第だよ。今は何よりもこのゲーム戦を……ん?」


 ザザー、っと軽くブレーキをかけて停止する。

 

「なんだあれ? 塔か? どこまで伸びてるんだ」


 ぼんやりと、雲を突き抜けて天まで届く塔が地平線の向こうにそびえていた。


「あれね。ようやく見えたようね。このエリア唯一にして最大のオブジェクトに!」

「ほんとだよ。なんで今まで見えなかったんだ。まるで軌道エレベーターじゃん!」


 ショウトは機械的なデザインの建造物に途方もないロマンを感じ。

 一方、肩にいる小さなニセステラは邪悪な笑みを浮かべる。

 

「あれが特異点の中心にして攻略ルートの一つ。その名もカンダタワーよ!」

「カンダタワー……神田さんの塔? 誰だよ」

「最近の人間は古典文学すら読まないようね。まあ私も人の事言えんけどさ」


 なんでも遠い昔のお約束――文学作品から拝借してきたネタらしい。

 地獄に蜘蛛の糸を垂らして罪人を救う話。いや、救おうとした話か。

 

 肩の上で仁王立ちしたニセステラが力強く宣言する。

 

「ちゅーわけでシステムメニュー! ルールの再確認よ! はよはよ」


 即座にシステムからのレスポンス。

 

『システムメッセージ:

 七つのパーティのいずれかがフラグを所持した状態でカンダタワーに到達する。

 これが第一フェーズクリア条件の一つとなっております。

 もう一度確認されたい場合は端末のメニュー画面から……』

 

 ニセステラが鬱陶しそうに手をひらひらさせる。

 

「ハイハイ。ごくろーさん。んでフラグについてなんだけど」

「おうよ」

「私たちもすでに一つ持ってるわ。七つあるフラグのうちの一つ、『銀』のフラグね」

「な、なんだってー!?」

「というか最初から持ってたのよね。あんた何も聞かないからさあ」


 どうやらフラグというのはパーティリーダーに一つずつ与えられるイベントアイテムのような扱いらしい。

 ただ、バグりまくった端末ではどの道確認のしようがなかった。

 アイテムボックスにでも入っているのだろう。そう信じるしかない。

 

「ふっふっふっふ」

 

 ニセステラの笑みの邪悪さがマシマシになる。

 

「このフラグさ~、持ち主を殺したら奪えるのよね。降参すれば受け渡しも可能よ」

「ほーん。つまり各パーティのリーダー格とは必然的に戦える仕組みなのか」

「そういう事ね。さてさて、ここが最後のチャンスよ人間」

「というと?」

「あとほんの十数メートルでも進めば恐ろしいものが見えるわ。本格的な戦いになると思う。だから、ここで考えなさい。最適解と行動目的を」

「…………」


 ずきりと側頭部のこめかみ付近が痛む。考えようとするといつもこれだ。

 

「いててて……」

「そこさ。なんか入ってんの? たまに叩いたりしてたわよね」

「体内のナノマシンを調整する基盤が埋め込まれてるんだよ。今は市販品だけどな」

「なにそれ。あんたってサイボーグとかそういうやつだったの?」

「普通の人間だよ。人間は製造されたらまずチップを埋め込むんだ。常識だぞ」

「くっだらない事やってんのねえ、最近の人間って。IEMは気楽でいいわ~」


 ニセステラが妙な事を言っているが今は砂漠ゲームの攻略に集中しよう。

 

 第一フェーズ。七つのフラグ。七つのパーティ。カンダタワーの攻略ルート。


 タワーに到達したパーティは特異点から解放されるのか?

 それとも第二フェーズに進めるのがカンダタワーに到達したパーティなのか?

 

 ニセステラに尋ねる。

 

「わかんない。女王様の性格的にはあの塔もハリボテの一種にしてそうだけど」

「露骨に誘導されてる感じはするよな……無策で突撃するのは……」

「ただのバカよねえ。でーもー?」


 ショウトはストリームを再発動した。青白い気流エフェクトが全身を包む。

 

「最高ォーーーにゲームしてる感じがするだろォーーーー! ヒャッホォーー!」

「グッドね! 考えるだけ無駄よ無駄! バカみたいにいっちゃいましょーーー!」

 

 ゲームというのは往々にしていくつもの攻略法が存在し、最適解に近いプレイルートが稼働直後から出回っているなんてよくある話である。

 

 だからこそ。

 

 今しかできない攻略法をショウトは選んだ。

 ついでにニセステラも『人間だった頃は』そういうタイプだった。

 

 しかし、ストリームで加速したほんの数秒後――

 

「げぇ!? なんだありゃあ!」

「出たわね。おそらくこの特異点で一番やっかいな、エンカウントを軽々スルー出来る最大勢力!」


 二人が目にしたのは、上空を数百体規模の団体で飛行するモンスター軍団だった。


 それぞれの固体に見覚えがある。ピンクの羽毛を持つバードマンの仲間たちだろう。

 そんなショウトの考えを肯定するようにニセステラが叫んだ。

 

「向こうじゃ『ハチドリ』とか呼ばれてるらしいけど……要するに鳥獣軍団よ!」

・裏設定

 ニセステラは令和生まれですね。

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