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!?砂漠から始まるお約束だらけのゲーム的なロ―ファンタジー  作者: ハル山ルチロ
空の青、大地の白
19/28

第17話 第一フェーズ

 エリアチェンジの暗転中、ショウトは懐かしさを感じる幻聴を確かに聞いた。

 

 

 

「――三つだ。貴様がこれから覚えるスキルは三つだけでいい」


 幼い頃の記憶だろうと思った。

 

 その声はきっと女性のもので、家族のような相手だった気がする。

 

「基本衝術、基本流術。まずはこの二つでそこらの雑魚モンスターと戦い続けろ」


 思い……出せる! 

 

 この声は姉さんだ。あり得ないほど強くて恐ろしくて、けれど冗談なんかはよく言っていた――姉というよりは育ての親に近く、もっと言えば師と呼べる存在だった。

 

 いわく、魔王軍の最高幹部。魔軍司令クライスティナ。

 

 いわく、政経を牛耳る秘密結社の生き残り。アーカーシャの寵児クリスティーナ。

 

 そういった笑えない冗談にどうリアクションしたらいいものか、戸惑っていた記憶がよみがえる。

 

 いや、姉の素性はどうでもいい。いま大事なのは、三つのスキルのうち二つ。

 

 その名も基本衝術インパクト。そして基本流術ストリーム。

 

 生まれる前の戦争で活躍したというゲームスキル、その基本にして奥義だ。

 

「基本を極め、自らの戦闘スタイルに合わせて拡張していけ。こればかりは他人が口出しするものではない。それに……」


 おぼろげながら脳裏に姉の容姿が浮かび上がる。憎悪を凝縮したような性格に反して、桃色のゆるふわな髪が印象的な喪服っぽい服装の女性だった。

 

「お前の戦い方なら、いずれは三つ目もスキルも自在に放てるようになるだろうさ」


 その言葉は、いま思い出しても意味がよくわからない。

 

「せいぜい上位のIEMと仲良くしておけ。貴様らが紡いでいく『絆』とかいうカスみたいな因子が……あるいは、歴史の境目を打ち破る楔になるのだからな」


 暗転が終わりかけ、徐々に意識が次のエリアで覚醒していくのを感じる。

 

 ショウトは一言も発する事なく、ただぼやきのような姉の幻聴を聞いていた。


「あの頃の私たちには使えなかった。おかげでカス同然の結果を残してしまったよ」


 懐かしむように、悔やむように。

 

「九十九パーセントの死者ならば十分な成果だが……まだ一億も残っていたなぁ」


 底知れぬ憎悪のように。

 

 薄れていく幻聴を捨て置き、ショウトは意識を回想から引き戻した。




『システムメッセージ:

 途中参加者が現れました。

 これより空の女王が展開した特異点、『第一フェーズ』の再起動を行います。

 それにともない、プレイヤーの皆様には三分間のインターバルが与えられます。どうぞご活用ください。

 また、途中参加のグループはお手持ちの端末やナビゲーターからステータスやフェーズ概要の確認をお願いします。

 繰り返します。途中参加者が現れました……』

  

  

  

  

  

  

【第一フェーズ :地獄極楽殲滅陣】

【ゲームマスター:空の女王】

【ロケーション :始まりの砂漠EX】

【クリア条件  :敵の全滅もしくは特定エリアへの到着】

【ゲームマスターから一言:

 うむうむ、そんなわけで空の女王である。くるしゅうない、くるしゅうないぞ。

 今回は世界中から多くの参加者が集まってくれたようで何よりじゃ。

 しかし、よりにもよってあやつの特異点がこのようなカオスに見舞われるとはな。

 人生、何が起こるかわからんものよのう! コソコソするのも限界のようじゃな!

 

 さて本題じゃ。この即席で用意した砂漠には七つのフラグが隠されておる。

 それらを集めたらリザルトシーンで報酬が追加されるぞ。

 報酬は……そうじゃな。妾に可能な願いならなんでも叶えてくれようぞ。

 どうじゃ太っ腹じゃろう! 何事も景気よくいこうではないか! ワハハハハ!

 

 では皆の者。がんばって生き延びよ。がんばって攻略せよ。

 殺意はまあまあ高めじゃ。やる気のないやつもおるが、ひとまずヨシとしよう!

 そんで第二フェーズなのじゃが……すまぬちょっと今から考える】

  






 目を開けると、どこまでも続く青空が見えた。

 どこまでも続いていそうな真っ白な砂漠が見えた。

 

 遠くで激しい剣戟が鳴り響く。鬨の声。鼓舞。何かが弾ける音。爆ぜる音。

 

 斬撃。刺突。殴打。炎。風。水。負傷。回復。追撃。悲鳴。追撃。消滅。

 

 そして静寂が訪れた。

 

 穏やかな風の流れを感じ、ショウトは落ち着いた様子でフィールドを見渡す。


「ここが最初の戦場か。休憩時間に入ったみたいだけど……間に合ったな!」

 

 肩にはつまらなそうに肘をつくニセステラの小さな姿があった。

 

「あんた暗転おそすぎ。ナウローディングってやつね。懐かしいわー」

「処理が遅いのは俺のせいじゃないし。にしても、やっぱりお前も来るんだ……」

「イヤそう!? 言っとくけどあんた、私のナビなしじゃ百パーゲームオーバーよ!」


 怒りマークをぷんすかさせつつニセステラが空中にウィンドウを投影する。

 

「いいこと? まずこの第一フェーズの目標は各地に散らばった……」

「ああ、いいよ」

「はあ?」

「俺はやりたいようにやるさ。お前はなんかこういい感じにサポートしててくれ」


 その場でフォースエッジを起動し、青白い刀身をしばし意識的に見続ける。

 

 そして確信した。さっきの幻聴は事実だ。間違いなく俺の記憶だ。

 

「姉さん……いや師匠、先生……見ててくれよ、俺の戦場おぶゥーッ」


 ニセステラが真横からウィンドウを投げつけてきた。物理ダメージ!

 

「こんのアホンダラ! アンタなめてるでしょ女王様を! いいこと? 女王様はゲーム戦で妥協しないわ。これがどういう意味かあんたの脳みそで理解できる?」

「本気で殺しに来るようなタイプじゃなさそうだけどなー。単なる腕試し気分じゃ?」

「そうだとしてもよ! 大事なのはバランスなの! プレイヤーの戦力とフィールドのギミックやモンスターレベルを考慮し! 天秤を釣り合わすように調整するのが上位IEMのマナーなのよさっき知ったけど!」


 こいつも知ったばっかりなのか(女王に説教されたらしい)。

 

「だーかーら! 私が全力でナビしてアンタや他の連中が全力で戦って、それが最適解になるようなバランスにしてる可能性が一番高くて……つまり!」 

「うん。だから、頼む」

「何をよ!」


 砂漠にフォースエッジを突き立てる。

 インターバルとやらはそろそろ終わるだろう。

 出発の準備である。

 

「俺が剣で、お前が頭だ。俺の間違いはお前が正してくれ」

「え……自分で言うのもアレだけどそこまで委ねていいワケ!? 信用なくない!?」

「つってもお前、女王の命令で協力してるんだろ?」

「そりゃそうだけどさ……私ら一応敵同士よ!?」 

「今は仲間だ。信じるさ! 今はな!」

「はァ~……これだからこの手のバカ人間は……」


 たっぷり嘆息し、ニセステラがジト目で尋ねる。

 

「で、初手は何すんの? 乱入参戦の一ターン目よ」

「決まってるだろ」

「いや知らんし」


 空気が変わった。インターバル終了の合図だろうか。

 砂漠全体がかすかに鳴動し始める。

 

「俺の足元」


 そこから青白い光の帯がゆらめくように生じ、ショウトの全身を包み込む。

 

「基本流術ストリーム。普段はただの移動スキルさ」

「あーーーね。こんなんあったわねー。やっぱ使えたんだ」


 この光の帯は使用者の意思である程度のコントロールが可能だ。

 今は足元に波のような形状でまとわせており、その効果は、

 

「加速する。いくぞ、フォースエッジ・ストリーム!」

 

 機動力の大幅な増加である。

 

 砂上をサーフィンのようにすいすい進んでいくショウト。

 その背中をどうにか飛行で追いながらでニセステラが叫ぶ。

 

「ゲェーー! ちょい、アンタ! エンカウントがー!」

「このパターン前にもあったな……おおう!」


 前方の砂漠から巨大な影が現れる。

 深緑の鱗で彩られた六つの首を持つモンスターだ。

 

「むづらのオロチ! 私が設定したモンスターじゃないわアレ!」

「そうかい!」


 障害物にもならないとばかりにショウトが六つ首の魔物に突入していく。

 

 敵を認識したオロチは即座に戦闘態勢へと移行した。

 いくつかの首からなんらかの連続ブレス攻撃が放たれる。

 

 それらをストリームの機動操作で難なく回避し、足元、臀部、背部、首の一本を滑走路代わりにショウトは真上に飛翔した。

 

「ニセステラ。お前はきっと勘違いをしている」

「知らんけどそれ今言う必要ある!?」


 フォースエッジを真下に構え、狙いを定める。

 

 ――こういう頭がたくさんあるやつの弱点はたぶんあの変だろ。 

 

 首の付け根。人間の場合は背中の中央あたりだろうから、だいたい合ってるハズ!

 

「ゴアアアアア!」

 

 オロチの首が上空に向けてなんらかの攻撃行動を取ろうとするが、遅い。

 

 空中で重力とストリームによる加速を得て、ショウトはまさに一本の剣となりオロチの急所っぽい部分に突入、力任せに両手で端末刀を突き立てた。

 

「この世界はクソゲーだ! そしてそのクソゲーっぷりがあの子を苦しめている!」

「ああ、そういう」

「だから俺は! トカゲのガキどもを助けるよりも!」


 この時ショウトは、スキル名を叫ばずに基本衝術であるインパクトを起動した。


 衝撃波を生み出すスキルであるそれは、フォースエッジの切っ先、つまりオロチの首の付け根に突き立てた部分の内側で発動し、

 

「お前の希望通り、この世界を!」


 まるで体内の爆弾が爆発したかのように――オロチは内側からの衝撃波に耐え切れず、六つの首が周囲に飛散し残ったボディからは青色の噴水があふれ出ていくのだった。

 

 最後のあがきか、飛び散った首の一つがショウトめがけてあぎとを開き襲来する。


「ぶった斬りに来たんだよ!」

 

 全力の一刀両断。七本に増えた首は砂上でびちびちと蠢いたのち、動きを止めた。

 

 

 




「あんさ、私が言ってたのは世界を壊すか救うか、だからね? 切れなんて一言も言ってないんですけど?」 

「そこは言葉のアヤ的というか……まあアレだよ、開戦の合図ってやつだ」

「なるほどね。そういうのは嫌いじゃないわ! ブッタブッタにしちゃえー!」


 相変わらず、空と大地以外に何もない砂漠エリア。

 ストリームの気流エネルギーを乗りこなしながら進んでいく二人。

 

 第一フェーズ攻略への道のりはまだまだ遠い。

  

今いるエリアは女王様主体の特異点なんで普通に色つきですね。

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