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!?砂漠から始まるお約束だらけのゲーム的なロ―ファンタジー  作者: ハル山ルチロ
空の青、大地の白
14/28

第13話 無敵ボスのお約束

『システムメッセージ:

 この戦闘でニセステラにダメージを与える事はできません』

 

 なんだと。システム的な無敵状態かよ。

 だとしたら、あのバリアの正体も見えてくる。

 

「さっきのバリアは……特殊ボス用の無敵バリアってところか」 

「ほおーん? 気づいたようね。私が展開する絶対無敵障壁のエフェクトに!」


 いかにもバカっぽくて子供が考えそうな、だからこそ破れはしないと確信させられる無敵のスキルだった。

 

 普通にチートスキルなのだがそれはそれでいい。

 これはゲーム戦だ。突破口は必ずどこかにある。

 そうでなければ、ニセステラだって理不尽なクソゲーを押し付けたりはしまい。

 たぶん。

 

「無敵ボス戦のお約束といえば……!」

「さて何かしらねー。そんな難しい問題じゃないと思うけど。でーもー」


 考える時間なんて与えてあーげない。

 そう言わんばかりに高速詠唱するニセステラ。

 

 時が止まる。ただし思考は動く。

 

 おそらく時止めはすぐ解除されるだろう。長考している余裕はない。


 時を止めた上での攻撃手段なんて無数に存在する。

 だが今の自分に防げないような攻撃スキルを使って来る可能性は低い。

 

 なぜなら、ニセステラには殺意も敵意もないからだ。

 なんとなく感じるのは、多少ひねくれた遊び心。

 

 ならば。


「――フェザーダーツ」 

「む!」

 

 時が動き出したその瞬間。

 ショウトの周囲には大量のナイフが配置されていた。

 

 いや、それはナイフではなく鋭い鳥の羽だった。

 

 どちらでもいい。やる事は同じだ。

 

「こんなくそォーーーー!」


 単純かつ全力、イアイヌキからのフォースエッジぶん回し。

 力強い風の流れが巻き起こり、ナイフ代わりの鳥の羽は成すすべなく散っていく。

 

 完璧な読みと対応だった。自分で自分をほめてやりたい気分だ。

 

「なんですって!? 時が止まった世界にもう対応してきたってえの!?」


 やたらビックリしているニセステラ。どこか楽しそうにも見える。

 

 ショウトはそこはかとないどや顔で説明してやった。

 

「わかるさ。お前の時止めはゲーム中にポーズしてるようなもんだからな」

「はーん? なかなか理解が早いわね。まさか追撃のスキルまで把握されるなんて」

「はっはっは。時を止める相手の行動パターンなんて簡単に予測できるさ!」


 この発言は相当な強がりなのだが、ニセステラは神妙にうなづいている。

 

「そう……やっぱりお約束に関してはあんたらの方が一枚上手なのねえ……」


 頬に手を当て、感心しているような、どこか懐かしそうな。

 

「ねえ人間。話変わるんだけどさ」

「なんだよ」

「今のぶん回し、なんかこう風属性的なスキルの手ごたえ感じなかった?」

「いや別に……んん!?」


 言われてみれば、確かにただの剣圧で生み出したとは思えない風量だった。

 

 端末刀をがむしゃらに振り回した結果なのだが、もしも。

 

 あの風量に指向性を持たす事ができるとしたら……?

 

「はいシンキングタイム終了ー! レッスンツー行くわよー!」

「おい待てレッスンワンはどこ行ったんだよ」

「ごめん時止め中に言ってたわ。てへぺろー!」




 唐突に始まったレッスンツーはひたすらに逃げの一手だった。

 というかニセステラが無敵状態なので回避以外の選択肢が存在しない。

 

 羽を撃つスキル。斬撃を飛ばすスキル。炎を噴くスキル。ビームを撃つスキル。

 状態異常スキル。盾ではじくスキル。槍で突くスキル。風属性的な攻撃スキル。

 

 そういった無秩序にもほどがあるスキルの数々をやたらめったら使用してくる。

 もはや噴水広場は見る影もないほどに破壊しつくされていた。

 

「あっはっは! 逃げ足だけは一人前ねえ! お次はこれよ、腕力強化レベル2!」

「おっ肉弾戦か? 望むところだ、こいよ! バリアなんか捨ててかかってこい!」」

「んー……私そういうタイプじゃないから。チェンジで」

「使わないんかーい!」


 カードをドローするイメ―ジなのだろう。ニセステラはちょくちょく指を鳴らす。


「うふふふ。こいつはいいスキルを引いたわー!」


 満面のいやらしい笑みだ。嫌な予感がする。

 

「足で逃げるのは時代遅れなのよねえ。この意味、あんたにわかるかしらー?」


 謎の前置きをしてニセステラは新たなスキルを解き放った。

 

「――超重力圏!」

「うおおおおお!?」


 体が重い! 足元に亀裂が走る。まともに立っていられない。

 

「こ、これは……重力が十倍か百倍になる系のやつか……!」

「そんな感じだけど十倍と百倍って差がありすぎじゃない!?」

 

 ツッコミを入れつつニセステラが追加ドローならぬ追加パチン。

 そして複雑な、申し訳なさそうな顔になる。

 

「うわーこれ死ぬわ。ねえ見てよあんたの周り」


 超重力でそれどころではないのだが、視線ぐらいはかろうじて動かせる。

 赤い。そこら中の地面が真っ赤なエフェクトに染まっていた。

 

 これは前兆だ。古いVRゲームで見た覚えがある。

 

「危険地帯の視覚化……強力な範囲攻撃の予報エフェクトかー!」

「でしょうね。これもゲームのお約束かしら。そんじゃま」


 前兆が発生した以上、すでにスキルは発動寸前なのだろう。

 ニセステラの下方からすさまじいプレッシャーがほとばしっている。


「なんにも思い出せないなら、このまま死んで巻き戻っちゃえ」


 だが結局、この戦闘において、


「じゃあね人間。亜流衝術奥義・黒蛇波動しょ……アレ?」


 件の範囲攻撃スキルが発動する事はなかった。


 予報エフェクトとショウトを縛っていた重力スキルが同時に効力を失う。


 解放されたショウトは自身の調子を確かめている。


 それから納得がいったような不満だらけのような複雑極まりない心境で告げる。 


「無敵ボスとの戦闘。終了方法は一定ターンの経過か強制イベントの発生ってか」


 自嘲気味に笑ってやけくそ気味に叫んだ。

 

「実質勝ちだろコレー!? いやなんもやってないけどね俺!? 時止めだけで普通の人間はお腹いっぱいだっつーの!」


 無理のある勝利宣言に対し、ニセステラはツッコミの余裕すらなくサーッと青ざめている。

 どうやら意図的な中断ではなさそうだった。


 

 

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