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!?砂漠から始まるお約束だらけのゲーム的なロ―ファンタジー  作者: ハル山ルチロ
空の青、大地の白
12/28

第11話 ネーミング&チュートリアル

 いっぱい食べて眠くなったのだろう。リザードマンの幼体ことラスクとアミットはソファー席でスヤスヤと眠り始めていた。

 残ったリジ―はまだまだ元気いっぱいでステラと昔話をしている。

 

「それでねお姉ちゃん。ハチドリ軍団の……こう、そこそこ強いヤツ? と決闘して負けたアニキは名前を捨てちゃったの。敗北した戦士の名に価値はないんだってさ」

「うーん職業病といいますか、女性陣には理解しがたいこだわりですよねソレ。ショウトもちょいちょいそういう所ありそうですし」


 人間の精神は複雑だ。ショウトはその辺だいぶ楽観的で深く考えないタイプのようだが、それでもやっぱりIEMではなく人間なのだ。

 

 ――そうですよ。ショウトだってあれでけっこう、難しい事ををちょいちょい考えてるはずです。なんとなくですがわかります! でも、だからこそ……


 それなりに単純そうなショウトを見ていてそう思うのだから、複雑な人間同士みんなで仲良くパーティゲーム、なんて発想が夢物語であることは想像に難くない。

 

 そう、人間同士がわかりあうのは極めて困難だというのがお約束なのだ。

 

 ではIEMと人間はどうなのだろうか。自分とショウトは? 

 信頼はお互いにしていると思う。でも隠し事を含めて明かせない秘密が今はまだけっこうあって、ほんの少しだけ距離を感じてしまう時がある。

 

 それでも。

 

 ステラはショウトがくれた青空のように広やかな気持ちを信じているし、ショウトが連れて行ってくれる世界ならどこだろうと信じようと決めている。

 

 ――ええ、もちろんです。それなのに、わたしはまだ……

 

 決意が、遠い。ステラには全てを捨てる覚悟がない。全てを救う権限もない。

 もともと選択肢なんてないのだ。全てを捨てる。それ一つしか。

 

 夢はいつか終わる。ただそれだけの事なのに……!

 

「お姉ちゃんだいじょうぶ? 難しい顔してるよー!」

「……ああ、ごめんなさいリジ―ちゃん。なんの話でしたっけ」

「うんそれでね、アニキに新しい名前つけてあげたいなーって」

「ええ、いいと思いますよ。きっとアニキさんも喜んでくれるでしょう」

「だよねー! お姉ちゃんはなんかない? 良さそうなお名前」

「アニキさんはリザードマンの成体と言いますか、要はトカゲの亜人なんですよね」

「そうだよー。ウチの軍団はそういうのばっかり」


 雑念を払いのけ、ふんわりとした笑顔でステラは断言した。

 

「トカゲA」

「えっ」

「トカゲAですね」

「それは……いいのかな……?」

「はい! わたしの眷属と紛らわしくなっちゃいますが、いい名前ですよー!」


 リジ―は最初こそ戸惑っていたものの、せっかくお姉ちゃんが付けてくれた名前だしねと素直に喜んでくれたようだ。

 

 お仲間にもお知らせしようとソファー席までとっちとっち歩いていく。のだが、

 

「あれれ?」

「どうしましたリジ―ちゃん」

「ラスクとアミットがいなくなっちゃった」

「……え! こ、これは……わたしの監督不行き届きというやつでは!? もしかしてわたし、なんかやっちゃいましたー!?」


 ソファー席、店内、はす向かいの店舗……近場のどこを探しても二体のベビーリザードマンは見つからなかった。

 

   

 




 噴水広場で対峙した相手はステラにそっくりな姿をしていた。




 この世界を壊すか救うかして、と目の前の少女は言った。

 ひどくどうでも良さそうに。明日の天気よりも興味がなさそうに。

 

 ステラよりもやや幼い印象を受ける。双子の妹みたいな立場なのだろうか。

 

 少女の言葉に、その姿に、ショウトの精神はかつてないほど動揺する――わけでもなく、やはり明日の天気を思案するように答える。

 

「そんなのさー、あるがままでいいんじゃん? この世界は自由だよ。それなりにな」

「はー? バカにしてんのあんた? 私がステラと同じ姿だからって、中身まで同じ能天気だと思わないでよね。ったく、これだから頭の悪い人間は」


 肩をすくめて心底呆れた様子で嘆息している。


「なんとでも言ってくれよ。アホでバカで端末オタクで戦闘狂の突撃厨ぐらいまでなら覚えがある。でも世界を救うだの壊すだのなんてスタイルは俺のガラじゃない」

 

 ケェーと嫌味ったらしくそっぽを向く謎の少女。


「べつにいーけどぉ? あんた嫌いなのね。世界を救う英雄のゲームとか」

「どうだかな。普通のゲームでなら英雄になるのも悪い気はしないけどさ」

「でーもー? リアルになるとそれはないわーってヤツ? アホくさって気分はまあわかっちゃうわねえ。あら意外と私たちって相性いいのかしらー? アッハッハー」


 ふらふら、くるくる、踊るように滑るように空中を舞っている。


「さあな。それこそどうでもいいよ。俺は誰も救わない。自分のやり方でひたすらにこのゲーム世界を攻略するだけだ」


 そこでショウトは愛用の端末刀を構えた。小声で非戦闘モードを解除し、青白い刀身から物質的なエネルギーを解放する。


「フォースエッジ、戦闘モードへ移行。物質化情報式マテリアライズ


 ショウトの全身から刀身と同じく青白いオーラが沸き上がる。

 

 それに反応したステラと同じ姿の少女は意地の悪い笑みを浮かべた。

 

「あーらここで私とやる気なの? 我慢できない早とちりなのね、突撃厨ー!」

「お前の中にボス属性を見た。たぶんレベル三ってやつだろ。その力に興味がある」

「ハッ! あんたにこの顔が切れるのかしらー? 可愛いステラちゃんと同じ私の!」


 ショウトが遥かな上空を見上げる。その色はほんのりと朱に染まり始めていた。

 

「いつか、いつかさ。ずっと先の未来の話だ」

「なんて!?」

「今はまだ最悪の想像で、それを最良の未来に変えられたらいいと思ってた。レベル三の話を聞いた時からな」

「いやちょっとワケがわからないんですけどー!? 日本語でおkってやつ?」


 端末刀をくるりと回し、より攻撃的な構えへと持ち直す。


「お前たちを切る覚悟の話だ。いくぞ、えーっと……」

「――ふん!」


 名前を聞こうとした次の瞬間、なんらかの呪文が超高速で詠唱されて。

 

 時が止まった。思考だけは動いているようだが。

 

 次いでメッセージウィンドウみたいなのが視界に現れ、こう書かれていた。

 

『名前を入力してください。なーんてね! 実は私も探してたのよ。私の名前! 光栄に思いなさい。いい感じにつけてくれていいのよ? もちろん変なのにしたら光の彼方へ消し去ってやるわ』


 いやそんな、名前一つで時間を止められても。

 

 ――ああこれ、前にもあった気がするな。決めないとこのまま動けないやつか。

 

 光の彼方に消し去られるのは困る。だがご機嫌取りでいい感じの名前をつける気もない。

 

 ショウトはただ感覚的に出てきた名前を言葉にした。

 

「いくぞ、ニセステラ!」

「…………うーん」


 判定中らしい。まだ動けない。

 

「…………なしよりのアリで」


 なんとか及第点のようだ。体が動く。

 

「っつおお!?」

 

 放たれた矢のごとく、直前の時間停止すらバネにして、正直自分でも驚くほどに。

 

 すさまじい速度の斬撃が空中で微妙な顔をしているニセステラに向けて放たれた。

 

 だが当然のようにあり得ないほど強固なバリアっぽい力場に阻まれる。

 

「ああごめん。言い忘れたけど今あんまり時間ないのよ。この私と全力で戦いたいなら第三の砂漠までいらっしゃい。ストレスフリーな戦場を提供するわ。はぁ……」

「かってーなくそ! そんでやる気ないんかーい!」


 めっちゃテンションが低下しているニセステラだが、何かを閃いたようで意地の悪い笑みを浮かべる。

 

「でもでーもー! せっかくの機会だしー? チュートリアル的なやつ、いっちゃおうかしらー!」


 力場に弾かれ着地するショウト。そのタイミングを狙ったかのように。

 

 真正面の空間がひび割れ、中から黒いマントを装備した何者かが姿を現した。

 

 背の高い亜人だった。フードの奥の肌は緑色で、瞳が赤く発光している。

 

「こいつは……リザードマンか!?」

「グオオオ……!」


 おそらくトカゲの戦士でリジ―たちの関係者だろう。会話ができる状態ではなさそうだ。知能がないというよりは洗脳されている感じか。


「だいせいかーい。異国の地から転生してきたー……えーっと……」


 上空でウキウキモードになりつつあったニセステラがなぜか言い淀む。

 

「はー? トカゲAだってさ。ひどすぎて草はえるわ。これならニセステラの方がまーだマシかしらね……」

登場人物紹介


ニセステラ(正式名称)

レベル三のIEM。夢の世界で重要なポジションにいるらしい。ステラと同じ容姿をしているが軽薄な言動が目立つ子。動きやすそうなワンピースを装備している。設定年齢は十三。

時間の一部を止めたりモンスターを操ったりできるようだ。



そんなわけで前話のタイトル『?????』はニセステラの名前が定まってなかったからですね……

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