表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

98/117

第5話

地面に転がった端末を拾い上げた。


何一つ傷ついていないパネル強化技術の高さに、俺が傷つく。


竹内だけは俺を、それなりに認めてくれているのだと思っていた。


機能不全に陥ってはいけない使命を受けているのは、自分だけじゃない。


何も傷ついていないように見えるこの端末の動作プログラムは、本当は再起不能のレベルで侵食されているんだ。


天命の完全復旧は難しいと聞いた。


二人乗りの自転車を一人で押すには重すぎる。


「ただいま」


午前のパートから帰ってきていた母は、居間に掃除機をかけていた。


二階に上がる。


拾った端末を放り投げると、床に寝転がった。


城壁のように積み上げられた機器の数々が、俺を取り囲んでいる。


パソコンを立ち上げてみても、しばらく放置されていたそれは、そのままでは動かない。


壊れているわけじゃない。


それでも動かせないものは動かない。


それでは俺も動けない。


時間だけが過ぎていく。


結局隊長からも飯塚さんからも、竹内からもさえ、なんの連絡もないまま数日が過ぎた。


世界は相変わらず平和で、俺がいなくてもやっぱりこの世は回っている。


何をそんなにムキになっていたんだろう。


俺にだって、本当はもっと違う世界があったのかもしれない。


そんなことを考えながら、ぼんやりとただゲームと動画を見て日々を過ごす。


眠たくなったら寝て、腹が減ったら勝手に何かを口に入れ、目が覚めた時に起きた。


何もする気が起きなかった。


本当はしなければならないことが、やりたくてたまらないことが、自分を殺しにくるくらいあるのに、それに押しつぶされて動けずにいる。


銀色の小さな端末が目に入った。


久しぶりに触れたその形を、手は覚えていた。


しっとりとした冷たさが妙に心地いい。


ふいに、パッと画面が明るくなった。


新たな連絡が届いた合図だ。


未読の通知が鬼のように溜まっている。


どうせ俺には、もう何も関係ない。


部隊を無断で離脱したような奴だ。


もう除隊処分になっていたって、おかしくはない。


「はは。俺はやっぱり、ニートだったんだな」


そっか。


今日は飯塚さんの予告した、決戦の日か。


そう言われればそうだったな。


実感がなさ過ぎて、忘れていた。


再びメールが送られてくる。


それが届いたことを知らせる通知画面だけが、また明るく光る。


だけどそれだけでは、メールの中身まで確認できないんだな。


見たくないのなら、見なくてもいいように出来ている。


俺はそれを開く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ