表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

88/117

第5話

捕獲するか、呼び寄せるか。


彼は何かを運んでいるのかもしれない。


それとも情報収集? 何のために飛んでる? 


どうしたら接触できるだろう。


カラスは北北西に向かっている。


俺たちはすぐ近くにあった公園に駆け込み、もう一度空を見上げた。


R38と思われるカラスは、近くの木の枝にとまる。


「おいで」


腕を高く掲げた。


本当にR38なら、来てくれるはずだ。


カラスは枝を蹴って飛び上がった。


限りなく抵抗を減らした青黒い流線型は、滑るように向かってくる。


それは俺の頭上を通り越し、植え込みの向こうに消えた。


カラスの甘えるような鳴き声と、バサバサという羽音が聞こえる。


そこに現れたのは、隊長だった。


「はは、元気にしてたか? やはりお前にはかなわないな」


無邪気に笑う隊長の顎に、R38は頭をこすりつけた。


肩に乗ったそれを大きな手はそっと撫でる。


「貴様らより遙かに優秀だ」


隊長は甘えるカラスの首に、透明なナイロンの紐のようなものをかけた。


それを黒い羽の下に隠すと、もう人の目だけでは簡単に分からない。


カラスはもう一度隊長に頭をすりつけると、与えられたペレットを丸飲みしてから、空へ飛び立った。


「マーキングしたんですか」


「おとりはむしろ、お前らの方だ」


区役所管轄土木事務員の作業服を着た隊長は、冷たく言い放つ。


「余計な気を回しても上手くいかないと、まだ学習しないか。支部に戻れと言われたら、すぐに戻れ」


部隊の作戦なんてものは、俺のような下っ端はその全容を知る必要はなく、隊長や本部の動きなど、俺たちには関係ない。


それは作戦として、至極当然で当たり前のことだ。


「竹内」


隊長の声に、細くゴツゴツとした背が伸びる。


「08をしっかり見張れ」


通信傍受をこんなところでしていたのか。


機材を運ぶ数人の精鋭部隊と共に、土木事務所の軽自動車は走り去る。


「重人。お前が何をどう思っているのかは知らないけど、今は非常事態だからさ……」


俺は竹内を信頼している。


だから竹内が何をどう思おうと、そうするというのなら俺もそうする。


「いいよ。それくらいは、俺も分かってる」


竹内がバスに乗ったから俺もバスに乗り、コンビニに戻ったから俺も戻る。


そう、それだけのことだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ