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第2話

「R38」


一羽のカラスがまたそこにとまっていた。


慎重に窓を開ける。


今度は背に何も背負っていない。


そっと呼びかけると、彼はきゅっと首をかしげた。


どうやって引き留めよう。


カラスの気を引くコミュニケーション術なんて、今までやったこともなければ、気にとめたこともない。


コンビニ地下室での、楽しかった日々を思い出す。


R38はいつもいづみに甘え、俺をからかって頭の上に乗り、竹内の肩にとまって、飯塚さんに撫でてもらうのが好きだった。


もうそんな日々は戻ってこないのか……。


「そうだ、なんか食べる?」


彼の好物はササミだ。


しかも国産鶏じゃないと受け付けないというグルメでもある。


頭の中でざっと我が家の冷蔵庫の中身を思い出そうとしても、ササミの存在など普段の俺の意識の範疇にはない。


なんてことだ。


立ち上がって、驚かせはしないだろうか。


冷蔵庫を探っている間に、飛び去ってはしまわないだろうか。


じっと目を合わせたまま動けない俺を見て、カラスはぴょんとプリンターに飛び乗った。


R38の眼だけが周囲をうかがっている。


俺はゆっくりと引き出しにあったストラップを取り出すと、キーボードの横に置いた。


彼はじっとそれを見つめる。


カチカチと爪音を鳴らして、テーブルに移った。


頭をカクカクと左右にかしげながらも、それを用心深く観察している。


ここで何か話しかけた方がいいのか、やめた方がいいのか……、もっとカラスの気持ちを考えろ、俺!


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