第3話
竹内の言葉通り、飯塚さんの追跡に本部はかかりきりになってしまった。
換気ダクトの出力を最大値に設定して、籠もった湿気を外に出す。
サーバーは入れ替えることが決定した。
それだけでも大きな損害を出している。
コンビニは営業停止の張り紙をして、店舗用アンドロイドをお掃除片付けロボに書き換えた。
時間はもう、夜9時をまわっている。
ここにはもういない、飯塚さんといづみの人形も動いていた。
「飯塚さん!」
俺はそれに向かって、大声を上げる。
「はい。なんでしょうか」
『飯塚』と名札のついているアンドロイドは、搭載されたAIで返事を返す。
「いつからこんなことを!」
「つい先ほどです。片付けを優先するようにしています」
「何を考えてんだよ」
「すみません、申し訳ございません」
「……本当に、何考えてんだよ……」
俺はそのロボットの肩に手をかけた。
触れた感触も、人の肩と変わらない。
「申し訳ございません。私にはそれに対する答えを、持ち合わせておりません」
鼻水をすする。
なんだよその答え……。
「答えなんかないさ。あるとしたら、さっさと片付けを終わらせることだ。重人、ちょっとこっち来い」
竹内は支部のメインディスプレイを操作した。
「飯塚さんの電波ジャックは全国放送だった。あの破壊された噴水はすでに民間レベルで特定されている」
ネットは騒然としていた。
破壊された噴水の残骸画像が、世界中にあふれる。
「これ、横浜方面の公園だ」
横浜といっても、ずいぶんと田舎の山奥だ。
人気もなかったのだろう。
特定されるまでに、しばらく時間がかかっている。