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第3話

竹内は表情なくつぶやく。


「隊長はもう、飯塚さんの元へ向かっている。捕まるのは、時間の問題だ」


「お前は飯塚さんを助けたくないのかよ!」


俺の手は、竹内の胸ぐらをつかんでいた。


強く引き寄せたはずのそれを、竹内は静かに押しのける。


「ふざけんな。児童養護施設で育った孤児を、見つけ出したのは隊長で、育てたのは飯塚さんだ。お前なんかと一緒にするな」


彼は表情のないまま、自作の掃除ロボをひっくり返した。


表面を繊維くずの出ない特殊な紙で拭き取る。


いづみの作動させたスプリンクラーで、全体がしっとりと濡れている。


司令台のある地下1階は、床にまで水は来ていなかった。


「分かったら、お前もさっさと片付けを始めろ。イチイチ指示がないと動けないとか、子供みたいなこと言ってんじゃねーぞ」


「……飯塚さんを、探しに行こう」


「うるせぇ、言われたことをやっとけ」


ここは地下室だ。


窓は何一つなく、空気は排気ダクトを通じて入れ替わる。


籠もってしまったこの湿度は、どこへたどりつくのだろう。


ふいに巨大ディスプレイが点灯する。


それは国営放送からのテレビ中継に切り替わった。


ニュース始まりの、よく見る緑と街の風景を映し出す。


静かな音楽が流れ始めたかと思うと、画面が切り替わる。


どこかの公園の、何でもない噴水が映し出された。


文書読み上げ機能から発せられた声が響く。


「易姓革命、禅譲放伐の世において、天の命ずるを性と謂い、性に率うを道と謂うなれば、我、道を修むるを問う」


ドンッ! という衝撃で、画像が揺れる。


カメラから見切れるほど吹き出した圧倒的水量に、すぐに映像は途切れた。


「あぁ……飯塚さん。あなたは本当に、もうここへは戻ってこないつもりなんですね……」


竹内はガクリと肩を落とす。


警報が鳴り響く。


襟元のマイクから、隊長の指示を出す声が聞こえる。


俺は、地下から抜け出した。

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