第4話
「磯部くんがいま見ているのは、ちょうどそのシステムね」
画面が切り替わる。
水漏れを示すような警告は、水道局画面では表示されていなかった。
「なんか、おかしくないですか?」
「あのね、実際には、普通に分からないものなのよ」
電話がつながった。
モニターにうつる水道局の事務室に、呼び出し音が鳴り響く。
閑散とした事務所で、受話器を取る職員の背中が映し出された。
ドンッ! 突然の衝撃が地下を揺らす。
いづみと目があった。
「下だ!」
この秘密基地に隠された、もう一つの地下へ向かう。
不吉な音が、俺の鼓膜を刺激した。
「水漏れだ……」
整然と並べられた量子コンピューターのサーバー保管室に、どこからか流水音が聞こえる。
竹内も駆け下りてきた。
「俺はちゃんとゆっくりバルブを閉めたぞ!」
「どっから水漏れが……」
場所を特定しようにも、あっという間に水深が3センチを超えてきている。
「もう遅い。データは本部と共有されている。すぐに上の資材を運び出そう」
「運び出すって、どこに?」
この上の階にはトレーニングジムと戦闘機や潜水艦のデモ機が並んでいる。
さらに上の司令部はどうなる?
テーブル回りのどれもこれもが、特殊な機械や実験装置だ。
竹内が駆け上がるのに続いて、俺も駆け上がった。
いづみはスプリンクラーを作動させる。
「ごめんなさいね。あなたのアンドロイド、最後まで作ってあげられなくて」
警報の鳴り響くなか、部隊のPCに容赦なく水が降り注ぐ。
「ガス消火設備に変えたんじゃなかったのか!」
大型設備搬送用のエレベーター口が開いた。
貴重な成果物を詰め込んだトラックの荷台が閉じられる。
運転席にいるのは、いづみ? それとも、そのアンドロイド?
「私、ここのこと結構好きだったのよ」
助手席に、もう一人のいづみが乗り込んだ。
「さようなら」
短く切りそろえた髪が、大きく開いた搬送口からの風に揺れる。
それが走り去るのを、俺と竹内はただ見送るしか出来ない。
「い、飯塚さんに連絡を……」
「……無駄だろうな」
竹内はため息をつき、力なく首を横に振る。
「多分、あの二人はグルだ」
『災害時保護モードにより、終了します』
司令部の巨大ディスプレイはそう言い残し、自ら黒く暗転した。




