第2話
「まぁほら、まだそんな出動経験もないわけだし?」
「そうやっていつまでもかばってたら、何にも出来ないじゃない!」
「飯塚さんが甘すぎるんっすよ。連れ回してるだけで、何もやらせようとしないし」
飯塚さんは鮭と昆布にから揚げ、そこに大概ポテトサラダがつく。
この組み合わせは絶対に変わらない。
鮭がツナに、ポテトサラダが大根サラダになることはあっても、それはいつも崩れない不文律を形成している。
「どっから始めます? 突っ込みどころが多すぎて、どうすればいいのか分かんねーし」
竹内は雑食なので、賞味期限切れを片っ端から片付けていくタイプだ。
「あんたの指導の仕方が悪いんじゃないの?」
「新人クラッシャーの異名を持つような人には言われたくないね」
俺の前にはなぜかいつも、同じ幕の内弁当が置かれていた。
「まぁまぁ」
にらみ合う二人の間に、飯塚さんが割って入る。
こちらを振り返った。
「いつも何となくそれを持ってきてるけど、その弁当でよかった? 好きなのを上から取ってきていいんだよ」
「えぇ、大丈夫ですよ」
箸をとる。
弁当の蓋をあけると、それはまだほんのりと温かかった。
「こないだは、ナポリタン食べてたわよ。大盛りの」
「その前は中華丼」
「そっか」
飯塚さんは微笑む。
「じゃあ、俺だけか。いつも同じ幕の内弁当置いてたのは」
その弁当の暖かさが、いまは腹にしみる。
「飯塚さんのお茶は、いつもその銘柄ですよね」
そう言ったら、ちょっとうれしそうな顔をしてから、また笑顔になった。
「お。そういう所はよく観察しているね」
「だから、そこが違うって言ってんでしょ!」
いづみはドンとテーブルを叩く。
「ちゃんとリーダーやって」
竹内の首も、激しく上下にシェイクしている。
その剣幕におされ、飯塚さんは渋々司令台巨大ディスプレイに、マップを映し出した。
「どうやっておさらいをしようか」
「最初っからよ」