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第6話

『走行音の異常から、荷台が張り付いているのは2両目の前方付近と推測。19は1両目後方、05は3両目で前方、08は2両目後方で待機』


19とはいづみの番号で、05は竹内、08は俺のことだ。


飛び乗った6両目からゆっくりと歩く。


No.05竹内から連絡が入った。


『移動中は常に周囲を確認。乗客の特徴はもちろんのこと、網棚の荷物、車両の違和感、全てに気を配れ』


山奥の郊外から都心方面に向かう遅い午後の電車だ。


乗客は1両に2、3人くらいしか乗っていない。


若い女性が一人と、70代くらいのお婆ちゃんが一人。


60過ぎたような太ったおっさんと、妊婦、子連れの母子、アジア系外国人の女の子2人と高校生男子……。


出来るだけ顔と服装の特徴を頭にたたき込む。


網棚に置かれた荷物はない。


不審に思うほど大きな荷物を抱えたような人物もない。


ひたすら端末をいじり倒している竹内の前を素通りする。


俺は指定された場所に腰を下ろした。


スーツを着たサラリーマン風40代後半男性が一人。


同じく40代と思われる女性と、50代男性、俺。


網棚は何もないし、車内の様子も別段おかしなところはない。


振動に合わせてつり革は揺れる。


俺はほっと息を吐き出し、目を閉じた。


いつもならここで寝てしまうところだが、今は仕事中と思い直し端末を起動させる。


どこまで行くのだろう。初めて乗る電車だ。


連結部の窓越しに竹内の横顔が見える。


彼はずっと画面をにらみつけ、操作に余念がない。


午後の緩やかな西日が差し込んでいる。


まぶしさにブラインドを下ろそうとして、ふと手を止めた。


そういえば、どの車両もブラインドは下がってなかったな。


当たり前といえば当たり前なのかもしれない。


西日が当たり始めるのは今からの話で、乗客が乗り込んでくれば、自然と順番に下がっていくだろう。


そこになにかの疑いを持つほうが、難しいかもしれない。


自分の座っていた背中側のそれを下げた。


隣のも下げる。


そのまた隣を下げようとしたとき、40代風サラリーマンはビクリともしなかった。


次のブラインドに手をかける。


そのまた次の次は、異音がするという箇所だ。


下げようとしたブラインドが、カツンと止まった。


下ろそうとしても下りない。


あきらめて隣のに手をかけると、それは素直に俺の手に従った。


そのまた次も素直に下りる。


俺は指定された位置に戻って、そこに陣取った。


なるほどこういうことかと、初めて理解した。

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