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第2話

「本当にじゃまね」


いづみは勢いよく立ち上がる。


手にしたパントレイの角を、振り向きざま男の脇腹にぶつけた。


間髪入れず、その足をぐっと踏みつける。


「お客さま、ポケットに未会計の商品が入っているようですが、防犯カメラで一緒に確認できます?」


「そ、そんなことはない、離せ!」


逃げようとする男の足を、彼女は引っかけて転がした。


「痴漢も犯罪よ」


背後から襟首をつかむと、一度その顔面を床に打ち付けてから持ち上げる。


「ね、あそこにカメラがあるの分かるでしょ? あんたの顔、しっかり記録されてるから」


「俺は万引きなんかしてない!」


いづみはふぅとため息をつくと、手を離した。


汚いものでも触ったかのように手を払う。


「みんな、そうやって言うのよね」


男の背広のポケットに、手を突っ込んだ。


中から袋入りのお菓子を取り出す。


「これ、今日の8時から発売開始の新商品。いま私が並べたばかりのものが、どうしてあなたのポケットに入っているの?」


「し、知らねぇよ! 俺は関係ねぇ!」


男は店を飛び出した。


慌てて追いかけようとした俺を、いづみは引き留める。


「だ、だって逃げたよ。捕まえなくていいの?」


「それは私たちの仕事じゃないわ」


「で、でも、万引きしたうえに痴漢まで……」


「磯部くんって、いい子ね」


ショートヘアの短い髪先が、ふわりと微笑むのと同時に揺れた。


「早く着替えてらっしゃい」


有無を言わさぬ眼光に、バックヤードへ駆け込む。


コーヒーの香りが漂う地下空間で、竹内は動画編集をしていた。


先ほどのいづみと男のやりとりの映像を、さっそく切り出している。


「し、仕事早いな」


「この店はな、表の営業はカモフラージュなんだから、売り上げとか気にしてねぇんだよ。それは分かるだろ?」


店での犯罪行為を、異常なまでの数で保存している動画の中から、切り貼りをしていた。


「あいつ、動物と機械には優しいけど、唯一人間には容赦ないからな」


出来上がった画像は、どうみてもあの男の罪を立証するものだった。


竹内はその画像をいづみとの共有ホルダーに放り込む。

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