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第5章 第1話

コンビニの朝は忙しい。


目覚ましと共に飛び起きると、俺は着替えもそこそこに家を飛び出す。


「ねぇ、ご飯はいらないの?」


「コンビニで食う」


ほんの半年前まで、家を出ることさえ希だった俺が、今は家族の中で誰よりも一番に出て行く。


「コンビニ店員がそんなに楽しいのぉ?」


起きてきたばかりの姉の嫌味を、珍しく父は牽制した。


「重人の性にあった仕事なら、なんだっていいんだよ」


「おうちでみんなでご飯食べるって約束だったじゃない!」


「今日の夜には帰れると思うから」


母の叫びを振り切った。


俺以外の3人には、自分そっくりに作られたアバターアンドロイドがいる。


他にも、首だけをすげ替えればいいように作られた、アルバイトロボも使われていた。


完璧にマニュアル化されたその行動様式が、そういったオモテの営業を可能にしている。


今朝はいづみだけが「本当に」働いていた。


「あ、おはようございます」


「おはよう」


「飯塚さんは?」


彼女の肌は真っ白なくせにつややかな光沢を帯びていて、人工樹脂の皮膚とも区別がつきにくい。


いづみは床にしゃがみ込んで、パンをきっちりと等間隔かつ寸分違わぬ同角度に並べていた。


画像をコピペで連続貼りしても、こんなにはきれいに並ばないだろう。


「今日は別のところへ行っているから。夕方には戻ってくると思うわ。あなたも早く着替えてらっしゃい」


立ち上がろうとした俺を押しのけるようにして、客の男が割り込んできた。


足は膝から下をピタリといづみの体に貼り付ける。


「おい、じゃまだ」


ぐいぐいと押しつけるその膝は、明らかに彼女の胸元を狙っていた。

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