メーカーズ・マークとナポレオン
さて!善は急げだ!急ピッチで成すべき事を成し遂げてみせるぞ!
僕は家を出ると鉄工所のオーナーであるメーカーズ・マークさんに会いに行った。
カンッ!カンッ!カンッ!ガチャガチャ!
金属がぶつかり擦れ合う音が工場全体に響き渡っていた。
僕は大声で作業員のおじさんに声をかける。
『すみませーん!メーカーズさんはいらっしゃいますかー?』
カンッ!カンッ!カンッ!ガチャガチャ!
誰も聞こえていないようだ。仕方ないので近くの作業員のおじさんの服を引っ張る!
『なんだなんだ!このガキンチョが!邪魔だ!』
『メーカーズさんはいらっしゃいますかー?』
『親方の客か!?ちょっとまってろ!』
ふーっ!やっとアポイントメントが取れそうだ!ラッキー!
すると山のように大きな筋肉ダルマがのしのしとこっちにやってくるではないか!?
ひっ!僕は戦闘力の格差に身がちちごまる!
『ん?ジャックの小倅じゃねーか!?でっかくなったもんだな?どうした?何か用でもあるのか?』
おや?とっても優しそうではないか?それに僕の事を知っているみたいだぞ!
『ちょっと聞いて欲しいことがあるので少しお時間をもらえますか?』
『ふーん?面白いじゃないか。こっちへ来いや』
のしのしと歩くメーカーズさんの大きな背中を見ながら七歳の僕はちょこちょことついて行くのだった。
事務所のようなごちゃごちゃした場所へ案内された。
『ジャック!適当なところに座ってくれ。今ミルクでも用意するぜ』
『あ、お気を使わずにお願いいたします!』
『うるせえ!子供は子供らしく貰える物はもらっておけばいいんだよ!』
そうメーカーズさんが言うので僕はちょっこりと椅子?1斗缶?に座ってミルクを待つ。
のしのしとメーカーズさんがホットミルクを持ってきてくれた。
『まあ、飲めや』
『いただきます』
ゴクリ。
!!!旨い!!
『甘くてとっても美味しいです!』
『そりゃ、良かったぜ。で?今日は何の用があるんだ?』
『はい!潜水艦を作りたくて材料をお願いしたくて来ました。』
『ぶーーーーっ!!馬鹿野郎!てめえの父親の事を知らない訳じゃないだろう?え?』
『知ってるから父のやり残した事を僕が成し遂げたいのです!』
本当は信長さまに会いたいだけなんだけどね!
『ぐふっ!泣かせるじゃねーか!え?だがなあ、こちとら不景気でちょっと力になりたいが何も力を貸せねえかもしれねえ。すまんな。』
『お金、資金繰りが上手く行ってないのですか?』
『可愛くない子供だな、お前。その通りだよ』
『おいくら位不足しているのですか?』
『ざっと見て5000万ズブロッカだな、これはお手上げだぜ』
『メーカーズさん帳簿を見せてくださいますか?』
『どうせ読んでもわからんだろうしいいぜ、ちょっと待ってろ!』
僕はメーカーズさんから手渡された帳簿を見せてもらう。うーん、これは典型的などんぶり勘定ってやつを繰り返して来たケースだな。
ひどいバランスシートだ。
パタリと帳簿を閉じた僕はメーカーズさんに提案をする。
『メーカーズさん。もし良ければこの会社を僕が借金ごと買い取りますよ!』
『は?』
『本当です。その代わり社長はメーカーズさんのままで僕はオーナーと言う立場を頂きます。そして潜水艦を作る際には全面的に協力してもらいたいのです。』
『金はどうするんだ?』
『明日、僕の母の立ち会いの元で譲渡契約を結びましょう。当然、経営改革は僕が指揮を取りますのでメーカーズさんは作業員の意識改革を全面的に手伝って貰います。よろしいですか?』
メーカーズさんは目を閉じて考え込んでいた。
しばらくすると、ふーっと深いため息をついて。
『何はともあれとりあえずバランタインには会いに行く。これは約束しよう。』
『はい!ありがとうございます!昼過ぎにお待ちしてますね!』
こうして僕は次の目的地である造船所のオーナーのナポレオンさんのところへ向かった。
『こんにちは!ナポレオンさんはいらっしゃいますか?』
『ん?ジャックの息子じゃねえか!大きくなったもんだ。ジャックに瓜二つじゃねえか!』
『はじめまして!ナポレオンさん。よろしければ少しお時間をもらえますか?』
『こちとら不景気で仕事がなくて暇こいてるんだ!構わねえぜ!』
『ナポレオンさん?お仕事の先の見通しってどうなっているのですか?』
『ぜんぜんわからん!』
『潜水艦を作りたいのですが、力を貸してもらえますか?』
『潜水艦?樽じゃねえのか!?は!?あきれた小僧だな!父親の成れの果てを知らないのか?』
『知ってるから僕が父の本願を成し遂げたいのです!』
ナポレオンさんは腕組みをしてしばらく考え込んでいた。
パン!と手を打った!
『うん!無理だ!人を雇う資金が足りねえ!すまんな。』
『資金が足りないなら僕が出しますよ』
『馬鹿野郎!1億ズブロッカだぞ!出せる訳あるまい!』
『出せます。明日の午後昼過ぎに僕の家へ来てください。契約を結びましょう。立会人として母を同席させます。』
『うーん。。よし!行くだけは行こうじゃねえか!バランタインにもしばらく会ってねえしな!』
こうして僕は2つの約束を取り付けて家へ帰った。
『おかえりなさい、ジャック』
『ただいま!母さん。えーとね、明日の午後にメーカーズさんとナポレオンさんが家に来るから、契約の時に母さんに立会人をして欲しいんだ!お願いします。』
『うふふ、何をするのかわからないけどもちろん母さんはジャックの味方よ』
僕は瞳が潤んで来た。
これが親の愛情というものか。
ありがとう!母さん!
口を開いたら泣き出しそうなので僕は自室へと逃げ出したんだ。だって恥ずかしいじゃないか!
武士足るもの涙など人前で流す物ではないのだ!
ひとしきりベッドで泣いたまま僕は朝まで寝てしまったようだ。
翌朝の空腹感は果てしないものであった。
よし!朝ごはんたっぷり食べるぞ!
僕はベッドから跳ね起きてダイニングへと向かうのであった。
親の愛情というものを僕は初めて感じたのかも知れない。前世では放卵されて親のカニの顔も知らないし。前前世では乳母に預けられて育ったので実母との触れ合いはさほど無かったのだ。
僕は気分を切り替えて思いの丈を心の中で叫ぶ!
信長さまよ!待っていてくだされ!と。




