04 植物図鑑
騎士の人に連れてこられた場所は木の家だった。凄くいい家でここが僕一人の住む家となると少々大きい気もするが大きいだけあって損は無いからね。
「じゃ、私はもう行く、そうだ・・・最後に確認だ」
道を案内してくれた騎士の人は帰ろうとしていた足をピタッと止めこちらに体を向ける。
「まず、外出だが。この辺りにモンスターは存在しないそこは安心してくれ、だからといって遠くえの外出は禁止だ。ご飯は三食分食べるように、食料は一週間に一度私が来るから安心してくれ、まあ、まず食料は尽きないと思うが生存確認のために一応食料とともに一週間に一度来る」
「はい。分かってます、何から何までありがとうございます」
この家で住む上での確認をし、それに礼を言う。本当に何もしないでただ魔王が倒されるのを待ってのうのうと暮らす生活をこれから送るのだ。
木でできたハウスの中に入り、とりあいずベッドに横になる。
「皆、今頃どうしているかな…」
思っている事を言葉に漏らす。
不安だから?恐いから?分からない、ただ一つ明確な事は僕は役に立たないって事だけだ。
僕はそのままベッドの中で眠ってしまった。
◇
目が覚めると、すでに夜になってしまっていた。辺りは暗く、モンスターの鳴き声なのか遠くから泣き声も聞こえる。
とりあいずは、電気をつけた。それから、夕食の支度をした。国から貰った食料はできたものではなく、食材を渡されたなだ。魚にお肉、野菜に色んなソースまで一週間では食べきれないほどの食料を渡された。
今日は適当に料理を作ってみた。僕は料理は得意ではないが不得意というほどでもない。家庭科の授業で料理を作ったときも普通と言われたし多分普通なのだろう。
「よし。できた!」
今日はハンバーグを作ってみた、異世界でハンバーグは作れるのかとは思ったが意外にも異世界の食材は僕達の住む世界となんら変わりないようだ。
ハンバーグを食べながら考える。向こうの世界では僕達はどういう扱いになっているのかな?死んでる扱い?とかなのかな…。クラス全員が消えたとなれば行方不明じゃ話はつかないだろうし…。疑問だなー。
現実世界のことを考えながらハンバーグを食べていると途端ドアがコンコンと鳴る。
「どなたですか?」
ドアを開けるとそこには。
「元気だったか?」
「一人で寂しかった?蛍夏?」
「奈乃香ちゃん!雪哉!!!」
そこにいたのは、奈乃香ちゃんと雪哉だった。2人は傷だらけで服は制服ではなくこの世界の服を着ていた。二人ともとても似合っている。
「どうして、ここに?面会とか?」
雪哉は頭をポリポリと書き「あーあ!なにから話せばいいか…」と言う。僕も当然のごとく状況は分からない。
すると、奈乃香ちゃんが整理がついたのか口を開く。
「単刀直入に言う。蛍夏、貴方にはスキルが存在していたの」
「!?」
僕にスキルが・・・あった。
「どうゆうこと!?菜乃花ちゃん!」
「あ、慌てないで」
と、とりあいずと菜乃花ちゃんは僕の手を引き家を飛び出す。僕はスキルの存在の話をしていたのになぜ家を飛び出したのか分からずキョトンとする。
「ど、どこ行くの?」
「取りいず逃げんだよ! 蛍夏お前のスキルは俺や霧崎のスキル以上に最強で凶悪なんだ・・・。詳しい事は落ち着いた頃に話す、とりあいず今は逃げるぞ」
雪哉はそう言うと俺をお姫様抱っこをし3人で森の奥へと逃げ込む(?)。
途中で国の騎士のような声が聞こえた。
森の家を出て数時間後。
6キロ位行った先に洞窟があった。
「ここまで、来れば大丈夫だな・・・ふぅー。疲れた」
雪哉は僕を下ろし洞窟の壁に寄りかかりながらズルーっと流れるように座っていく。
「あ、ありがとう」
「いいさ。それよかいきなり悪かったな意味も分からずにスキルの話をしたあとに連れ出したりしてよ」
「いいよ、訳があるんだもんね」
「そうね。まずは蛍夏のスキルについて話しましょうか」
菜乃花ちゃんも洞窟の隅に座り、僕のスキルについて話そうとしてくれる。
「蛍夏のスキルは『植物図鑑』」
「植物・・・図鑑・・・?」
自分のスキルに驚きを隠せず言葉に出してスキルの名前を言う。
当たり前だ、自分のスキルが植物図鑑だと言うのだから、植物図鑑がどう最強に繋がってくるのかが分からない。
「そう、植物図鑑。私はたまたま王の話を耳にしたの・・・」
◆
『蛍夏って奴のスキルは予想以上に危険だ』
『スキルペーパー偽造しといて良かったですね』
『ああ・・・全くだ。あちらも異世界人だ、馬鹿ではないだろうバレるのも時間の問題だ』
『殺しますか?』
『危険だがやるしかないな、今日の夜決行だ』
◆
「って話をたまたま聞いたの、まあ、蛍夏への対応が怪しかったからちょっと調べったらこういう結果だったんだけどね」
って事は僕は今日殺される予定だった・・・って事・・・。それを2人は助けてくれた?感謝を言っても言いきれないくらいじゃないか・・・。ありがとう・・・。僕は心の中でお礼をいい言葉に出しても言う。
「二人とも・・・本当にありがとう・・・!」
「礼は要らないさ、俺だって昔お前に助けて貰ってばかりだったしな」
「そう、結果的には私たちも国・・・王に反逆してしまったわけだしね・・・」
あれも、これもと言えば僕のせいなんだよね、僕がそんなスキルを持っていなければ2人を巻き込む事も無かったのに・・・。
「まーさ! お前のスキル見せてくれよ!世界を変えるなんてどんな力か見たいしな」
「え!? 僕だってスキルの使い方なんて分からないよ!!?」
「確かに言われてみれば私達のスキルは対象を選ぶだとかだけれど蛍夏のスキルは図鑑・・・だもんね」
図鑑か・・・植物図鑑・・・。思いある節はあるけど、まさか・・・ね。
僕は、一緒に持ってきた鞄の中からボロボロになった植物図鑑を取り出す。
「それって、お前が小さい頃から大切にしてる図鑑だよな」
「そうだよ、もしかしたらこれにヒントがあるのかなって・・・」
ボロボロになった植物図鑑を開いてみる。
するとそこには思いもよらないことが書いてあった。
「な、なんだよ・・・これ」
図鑑には見慣れた場所に花の写真が貼ってあり下には花の説明欄、そしてその下にはいつもとは違う箇が所あった。
「これってスキルだよね?」
「ああ! それも花の一つ一つにスキルがある、それも強力なやつが!!」
そう、説明欄の下にはスキルが書いてありさらにその下にはスキルの説明が書いてあった。
「本当に世界を帰られるのかもな」
「そうだね・・・」
「ねぇ、私達なら魔王・・・倒せるんじゃない・・・?」
魔王を倒す・・・?そうか、僕達がここに来たのは魔王を倒すために召喚されたんだったっけ。魔王が悪さをしていなければ僕達は今頃こんなところには来ていない。
そうだ、全部魔王が悪い。
「殺ろう・・・僕達で魔王を」
「結構簡単に言うけどいちおう魔王だぞ?実戦訓練を少しくんだ方がいい、2日後辺りにでも魔王を倒しに行こう、それに王の配下達に見つかるわけにも行かない・・・。隠密に行動しよう」
それでも2日後にはやりに行くんだよね。
「そうだね」
こうして僕達は魔王を倒すべく隠密に実戦訓練を積み戦闘に慣れることから始めた。