幸せのカタチ
今日は珍しく雨。足取りは重い・・・。
天候が私の行く手を塞ぐような大粒の雨、私の気持ちのように空は暗くこの季節には珍しく寒かった。
「わたし、どんな顔で会えばいいんだろう」
行きたくないわけではない、むしろあの時のようにドキドキしていて複雑だった。
会うのは何年ぶりなんだろう。そんなことを思いながら目的地の駅に到着する
懐かしい、そんな気持ちが込み上げてきた。あれから私はここに一度も来たことがなかった
「なんだか、あの時から時が止まってるみたい・・・」
そう歩きながら呟くと急に携帯が震える
私はドキドキしていたのもあるが完全に油断していたのだ。携帯を見るとあの人で
【今日は雨が強いけど、大丈夫?喫茶店にいける?もし、無理そうなら連絡ください】
その文を見ると思わず懐かしい記憶が私を支配する
「何だか、変わらないのは風景だけじゃないみたいなぁ」
そんな独り言の後、【大丈夫だよ、行けるよ】とメールを返信をして目的地の喫茶店に到着した。
そして、傘をたたんで店に入る。
あの人は出会ったときから太陽のような人だった。どこにいても明るく誰でも友達になれて、あの人の回りには常に誰かいたんだと思う。私はそんな彼の近くにいれるのがすごく嬉しかった。
そんなことを思いながら席につく
案内された席はあの時の席の隣だった
「あの席だったら運命だったのになぁ。まあ、しかたないよね」
私の大きな独り言を聞いた店員さんは困った顔でこちらを見ていた
「「いかん、いかん、私。いつも調子で独り言を言ってる・・何か注文しないと」」
そう私は思っていると、そんな私を見かねた店員さんは
「申し訳ございません。そちらの席は本日、ご利用頂けないんです」と申し訳なさそうに言ったのだ
私は顔が真っ赤になっていたと思う。
自分で言うのも変なのだが、表情や喜怒哀楽は激しい方だと思う。そんなことを思いながら私は身体も冷えていたのでホットコーヒーを頼むことにした。
もともと、私はコーヒーは苦くてあまり好きではなかった。それでも頻繁に飲むようになったのはたぶん、あの人の影響だと思う。
『■■さんはいつものコーヒーだよね』
私は一度聞いたことがある。それに対してあの人は遠い目をして
『そう?でもそうかな、コーヒーを飲むと落ち着くんだよ』
そう言ったあの人は寂しそうな顔をしていたのを覚えている。今でも心に残る思い出の1ページだった。
店員さんが持ってきたコーヒーが鼻をくすぐる。今日はあの人の事ばかり考えている、もちろん仕方ない事なんだと自分に言い聞かせる。
今日、私がここにいるのは2日前の出来事だ。私は少し前に仕事を辞めて新たに就職活動をしていた時に携帯が鳴ったのだった。
面接の後、お昼を食べてた時だった。メールが来たのでこの後の面接の連絡かと思い何気なくメールを開く
その時、私の世界は一瞬止まったのだった。
【君が良ければでいいんだけど、今度、時間を作ることできないかな?】
たった数行のメール。
(私が心から待ち望んでいたコトバ)
(私が心から恐れていたコトバ)
その後の面接は言うまでもなく、何をしたのか当然覚えていない。帰り道も自転車とぶつかりそうになるぐらい、世界は早い速度で私を置いて回りつづけるのであった
私は緊張していたのもあるがその時は返事を返す事ができなかった。
家に帰りもう一度メールを見る。やっぱりあの人だ。たまらく嬉しい。でも以前、職場の先輩に言われた事がある。
『思い出もいいけど、捨てないと先に進めないよ』
私はその人と数年前に別れたのである。彼との思い出が強く、携帯の番号、思い出のアルバムなどはいまだに捨てずに置いてある。
その時の先輩の言葉は今でもわたしの中に残っている。もちろん、別れた後あの人の事は忘れようとした。自分でも理解はしている、けれども気持ちの整理ができないのだ
あの人が初めての恋人ではなかったけど、今でも私はあの人の事を・・・。
今までは言いたくても言えなくて胸にしまいこんだ思いを伝えたいと私は思う。
私は家のベットの上で正座をしながらメールの文章を作るのだった。
一文字、一文字打つたびに手の震えが止まらなくなる。書いては消して、書いては消して集中してメールを作る。
こんなにメールに時間をかけたのは初めてだった。結局、長い文章は出来なくて
【ひさしぶり(>_<)私はいつでも大丈夫だよ。言ってくれたら時間を合わせるよ】
これが限界だった・・・。変な部分に顔文字、就活で時間があんまり無いのに、あの人の前では良い子でいたいと思う気持ち・・・。
私はまだ、あの人の隣にいたいんだなぁと呟きながら、携帯をそっとテーブルに置く
手をみると尋常じゃない手あせで、テーブルの隣の鏡をみると私の頬に涙が流れていた。
嬉しい気持ちと不安が押し寄せて、身体が悲鳴をあげてるんだと思った
そっと、鏡の前に立って
「ねえ私、私はどうしたら良い?もう、傷つきたくないよ・・・でも私、あの人にもう一度会いたい、会いたいよ。会ってあの人に今の私を見てほしい」
そんなことを私は私に聞いてもらってた。なんだか、こっちを覗いている私が怒っているような気がした。
「そうだよね、あなたは会えないもんね・・・私が会わないとだよね」
その時、携帯が鳴る。たぶんあの人だと思い携帯に駆け寄る。画面を見るとあの人だった。短い文で
【わかった。なら今週の日曜日の12時に■■の■■喫茶店に来てほしい】
唐突の連絡だった。時間はほぼ朝なのにもかかわらず、すぐに返信が来た。
私は、すかさず返信する。
【わかった。遅れないように行くね】
私は待ち合わせに遅れたことなんて一度もない。まして、私の予定はあの人が最優先だ
そんなことを考えながら、私は布団に入る。たぶん、今日は素敵な夢が見れるのだと思った。
日曜日には朝から夕方まで何社も面接がある。でも、私にはもうそんなことは気にもならない
『だって、あの人が私に会ってくれるんだもん』
そんなことを思い出しながら私はコーヒーを飲む。その時、喫茶店の扉が開く。
カランコロン。カランコロン。
私は思わず顔を入り口に向けてしまう、入ってきたカップルに結果的に睨んでしまうかたちになった
カップルはビクビクしながら、店のソファーのテーブルに座る。
しまったと自分で反省する。こんな時間にあの人が来るはずがない。
だって・・・まだ、9時。
あの人の事はほとんど全部覚えている。ただ、初めて出会った時はあんまり、いい印象ではなかった。その時は私が付き合うだなんて夢にも思っていなかったからだ
そう、全ての始まりは一通のメールだった。
ある日、携帯が震えたのだった。仕事も休みでその時、家で好きな小説を読んでる時だった。
少し私は不機嫌になりながら携帯を覗く。
■子からのメールだった。この人の連絡はいつも唐突。しかも、今回は何だか漠然とした内容で
【あんたって、別れたって言ってたよね?次、いつ休み?】
言っている意味がなんかよくわからない。でも、素直に返信をする。
【別れたけど、その話はしたくないよ。どうせまた、笑い者にされるのもん。あれはもう終わったの】
その時の彼氏に私は捨てられたのだ、それはもうヒドイ感じに。その時、私はその事を■子には少し話していたのだった。
それはもう、大爆笑。私の傷はまだ癒えていないのだ。そんな中、次のメール来る
【大丈夫、大丈夫。あの時、盛大に笑っから、もう腹一杯(笑)でも、あんたがまさか■■されるとわねー。】
相変わらず、■子は性格が悪い。メールには続きがあり
【でさー、そんな落ち込んでいるだろう、私の友人に新しい人を紹介してあげようと思うわけ、どうよ?いい話でしょ?】
余計なお世話である。私はすかさず返信をする。
【結構です!この前の事で私、当分恋愛しないって決めたんだから】
恋愛は当分こりごりなのと思いながらメールを送る。しかし、数分でメールが来る
【そこをなんとか、お願い(^人^)会うだけでいいからさ。ちょっとだけ時間作って】
いつもは直ぐにひき下がるのに珍しく■子は、諦めず話をすすめてくる。・・・まさか
【あんたまさか、もう、会う約束してんの!?】
予想は的中だった。
【ほんっとごめんm(__)m大丈夫だと思って写真も見せちゃった(笑)その人がえらく気に入って、会いたいって言われたんだ。だから、一目だけでも会ってくれない?】
ここまで、話が進んでいるならしかたない。私は渋々、返信をする。
【わかったよ・・・。今回だけだし、会うだけだよ?少し話したら、私帰るから。】
数分も待たずに
【助かる~そんじゃ、都合の良い日また連絡くださいな(^人^)】
その時の私は簡単に決めてしまったけど、あの時、断るべきだったと考えたこともあった。
もしできるなら、あの頃に戻りたい・・
結局、私はあの人に心を奪われたままなのだ。あの人の後に出会う男性もいい人はいた、でも・・・
そんなとき、また入口が開く
カランコロン。カランコロン。
さすがの私もわかる。まだ1時間しかたってないのだ、まだ、来るはずがない。でも・・・。
わかっていても、入口を見てしまう。やっぱり違う人だ。
その男性は店員に
「予約してた■■です。席、取ってくれてますか?」
と聞いている。店員はすかさず
「■■様ですね。お待ちしておりました。ご用意させて頂いております。こちらにどうぞ」
そう、店員が言うと先程のカップルの隣の席に案内をした。そこには小さなプレートが置いてあり、ご予約席の文字。
私の隣の席を見ると同じプレートが置いてある。
「まさか、そんなことはないよね」
私は何気なく外のテラスを見る。まだ、大粒の雨が窓を叩く、まだ降り続くのだろう。家を出るときに見た天気予報の降水確率は午前午後ともに今日は100%で雨がやむことはない
「そういえば、あの人に初めて出会ったのはこんな雨の日だったなぁ」
待ち合わせの当日、雨が降っていて出掛けるのが憂鬱だと玄関を出た時に思った。
「何で雨なのよ。あーあ、今日は家にいたかったなぁ」
そんな事を呟きながら、私は目的地の喫茶店の前に■子との待ち合わせの場所に向かう。
「絶対、愚痴を言って、お昼奢ってもらうんだから」
電車を乗り継いで、目的地に到着。■子が先に着いてたみたい。■子がこっちに気がつく
「おーい!こっちだよ~」
わかってるって、そう思いながら駆け寄り挨拶もとばして私の第一声は
「めんどくさいんだけど」
そう、私が言うと■子は笑いながら悪気がない感じで
「大丈夫だって~すごく感じのいい人はだから、ぜーたっい気に入ると思うよ」
ここまで来たから断る気はないけど、愚痴を言わないと私の気がすまないのだ
「とりあえず、その人との待ち合わせに時間あるんでしょ?どっかでお昼食べようよ。もちろん■子の奢りで」
何か一瞬、■子がすごく嫌な顔をしたのだけれでも、渋々納得したのだった。もちろん当たり前でしょ。そしたら、■子は笑顔で
「なら、牛丼で」
「嫌!」
「なら、す○屋!」
「私、帰ります」
「わーかーりーまーしーたー」
そして、私と■子は近くのレストランに行ったのだった。
私たちは時間までレストランで最近の話など他愛もない会話をしていた。ただ、時間が近くたび何だか緊張してきた。不意に■子が
「もしかして、緊張してるの?そうだよねー。そう言えばその服どうしたの?珍しく可愛い服じゃん」
いくら気乗りがしないとはいえ、初めて会う人に普段着ってのも何だか嫌だったのでこの日に合わせて購入したのである
「・・・たまたま、だよ」
恥ずかしくて本当の事が言えなかった。そんな私の顔を見て、■子はニヤリと笑い
「気づいていないかもしれないけど、あんたってものすごく顔にでるんだよ?今も嘘ですって書いてる」
ばれてる・・・。はぐらかす為に時計を見ると待ち合わせの時間の10分前
「もう、そろそろ行こうか待ち合わせに遅れるよ」
そう、私が言うと■子は
「大丈夫、お店はすぐそこだから。まあでもそろそろ、行こうか」
私たちは待ち合わせの喫茶店に向かう事にした。レストランから数分で着いた喫茶店はとても落ち着きのある所だった。
「ここのコーヒーが絶品らしいよ」
そう入口の前で■子は私に言ってくる。私は扉を開けながら
「私、コーヒーはあんまり好きじゃないの。知ってるでしょ?」
と言ってお店に入る。お客さんは少なく、BGMはクラシックが流れている。とても良い雰囲気で、私と同い年ぐらいの店員さんが私たちに気が付いてこちらにくる。
「いらっしゃいませ。お二人ですか?お煙草吸われますか?」
■子は直ぐに答えて
「あとで、もう一人が来ます。煙草は吸わないんで禁煙で」
「かしこまりました。こちらのお席にどうぞ」
店員さんが案内をしてくれたのは窓側の席だった。■子はその席に座り
「天気がよければ、良い景色なんだろうね。あっ、私エスプレッソ。あんたどうする?」
私はメニューを見て、アイスティーを頼むことにした。ミルク付きで
「かしこまりました、少々おまちください。」
あの人が来たのは、私のアイスティーが半分になった頃だった。
カランコロン。カランコロン。
入口の扉が勢いよく開く。私は入ってきた男性と目が合う、その男性は急ぎながらこっちに向かってくる。
「遅くなってゴメン。僕はホットコーヒー、ブラックで」
男性についてきた店員は「はい」と言って奥に戻る。その男性はマフラーを取りながら、笑顔で
「はじめまして、■■です。ヨロシク」
すごく笑顔で話しかけてきた。瞬間に私は苦手なタイプかもと思い、早く帰るために目を反らしながら簡単に挨拶をしたのだ。
それから、どれだけの時間が過ぎたのだろう、他愛のない話をしてるときだった。男性が不意に
「そう言えば、女性に聞くものマナー違反ですが、先日フリーになられたとか?ちなみにおいくつなんですか?僕はーー歳です」
「「え!?今・・・この人何て言ったの。いや、聞こえたんだけれども・・・」」
そんな私が混乱して答える前に次の話をしてくる
「しかも、ちょっと前に奥さんには逃げられたんですよ。最近はさみしい夜を一人で過ごしてます。ははっ」
この人、何で笑ってるんだろう?私は混乱どころかほぼパニックだ。年齢のこともあるがバツイチ!?しかも、さらっと言った!?兎に角、訳がわからない私は■子に事情を聞くことにした。とゆうか、聞きたいことが山のようにある
「あの、お話し中すいません。ちょっと■子と話してきていいですか?」
そう私が言うと男性は笑顔で
「作戦会議ですね!大丈夫です。じっくり話してきていいですよ。できれば、後で僕にも教えてくれると嬉しいです」
そんな、男性を横目に■子を化粧室に連行。そして、二人っきりになったので質問攻めにした。
「ちょっと!どーなってるのよ!何であの人が別れた事を知ってるのよ!じゃなかった。いや、それも問題だけれど。あの人って私より一回りも上じゃない!てゆーかあの人、バツイチって私聞いてないよ!」
そんなパニックな私から目を反らしながら白々しく■子は
「あー・・・聞かれなかったから、言うタイミングなくてさー。でもあれでしょ?あんた年上好きでしょ?」
ダメだ・・・。確かに、興味がなかったから聞かなかった私も悪いけどさ。それに確かに私は年上は好きだけど・・・いや、違う。違わないけど、これはとんでもないことになった。
私はため息をつきながら席をみると男性と
目があった、何故か男性は嬉しそうにこちらに向かって手を振っている。
そんな私を横目に、■子が
「でもまあ、あの人は一緒にいてても楽しいと思うし。何より、退屈しないと思うよ」
そう言って■子は私を席に連れていく。
席に戻ると男性の無邪気な笑顔で迎えられる。席に戻るなり■子が
「この子、結構あなたの事が気になり出してるみたいですよ」
私はそれを聞いて意識が飛びそうになる。それを聞いた男性は嬉しそうに
「よかったぁ。遅れてきたから嫌われてると思っちゃいましたよ。これからもヨロシクね。あ、そうそうこれが僕の番号とアドレス。今、登録してもらってもいいかな?」
気にしてる部分が違うんだけれどもと思ってると私を置いて話が進んでいる。仕方なく教えてもらった、番号とアドレスを登録する。登録していると
「登録できたら、空メールと電話かけてね」
半ば強引に教える事になった。その後、男性は仕事ということで私たちも帰ることになった。帰り際に男性が
「今日は来てくれて、ありがと。とても楽しかったよ。次はいつがいいかな?今度は晴れた日がいいな。また、連絡するね」
そう言って、私たちに手を振って帰っていく。まるで嵐のような人だった。■子も一緒に帰ることになった。私は文句を言う気力はすでに皆無だった。
「何か、凄い人だった」
そう、私がつぶやくと■子は
「年齢は上だけど、子供みたいで無邪気でしょ。あの人と一緒にいると前の人の事なんて一瞬で忘れられるよ」
確かに■子の言う通りで、前の彼を思い出す前にとゆうか、一時間もたたないうちに最初メールがくる
【今日は君に会えて、うれしかった。君とは気が合うみたいだね。これからもヨロシクね。これからは君の大切な人と思ってもらえるように頑張るよ】
ど直球のどストレートである。私は目眩がしたような感覚に陥る。
「「今日、会って初対面で初メールで告白!?何かすごい人すぎるでょ」」
私はこれから大変になるだろうと思いながら、返事を返すことにした。告白(?)の部分は触れずに、もちろん普通に
それからの数日は語るまでもなく。あの人は毎日メールを送ってくる。ただ、私に心境の変化があり、何だかこの人のメールを楽しみに待つ自分がいたのだ。そんなことを思い始めていた時に
【今度の休みに二人で遊びにいこう】
あの人からの遊びの誘いだった。この時の私は断る気は全然なかった。
遊びに行く回数が増えるにつれ、私はあの人の虜になっていったのだった。
数回遊びに行って、ある日の帰り道。彼が急に
「そう言えば、考えてくれてる?僕と付き合う話。どうかな?付き合ってくれる?」
唐突に強引だった。でも、私には断る理由はないのだった。彼の問に私は
「うん。私 、貴方の事好き。だから、付き合ってほしい」
その答えを聞いた彼は、力強く私を抱き寄せて強引に唇を重ねたのだった。私は彼に身を預けて幸せを手に入れたのだった。
付き合ってからも遊びに行ったり、メールをこまめにするのは変わらなかった。変わった事と言えば、デートの帰りには必ず唇を重ねたり、私の仕事場のロッカーには彼の写真を貼ってみんなに自慢するようになったりしていた。
私はたまらなく幸せで満ち溢れるぐらい、彼で心が一杯だった。
そんなある日、彼の車で移動してた時だった。座席の下から女性のハンカチが出てきたのだった。彼はそれを見て
「あーそれ、仕事場の人が探してたハンカチだ。この前乗せたときに落としたのかな?ありがとう、見つけてくれて。君はやっぱり、凄いよ。流石、僕の彼女だ」
こんな、些細な事で誉めてくれる。私はとても嬉しかった。他の人はこんなことでは誉めてくれない。やっぱり私の彼が誰よりも優しいのだ
私はハンカチをすぐに彼に渡す。彼は喜んでくれた後、私の頭を撫でてくれた。
そして、月日が流れて彼と2泊3日の旅行に行くことになった。
彼が全て用意してくれたのだった。車で到着するとそこは海が一望できるホテルだった。部屋に着いたら彼が
「どう?気に入ってくれたかな?」
私はテンションマックスだった。
「うん、すごくいい!私の為にありがとう。すごく嬉しいよ」
私たちは少し部屋で休憩してから出掛ける事にした。
昼の日差しが柔らかくなったとき、私たちはホテルから近い、有名な景色のところに来たのだった。私は持ってきていたカメラを出して写真を撮ることにした。
「ねえ、写真撮ろっか」
私はカメラを構えて彼を撮る。彼の表情はとても優しかった。撮り終えた後、彼が
「君も記念に撮ってあげるよ。そこに一人で立って」
と言って私を撮ってくれる。その後も私たちはお互いに写真を撮りあった。誰にも邪魔されずに2人っきりの幸せなひとときだった。
ホテルに帰った後も2人っきりの時間が続く。ただ、1つ残念なのが彼は仕事の事があるので常に携帯を持ち歩いてチェックしているのだ。
彼は仕事に真面目だから仕方ないと私は思い、携帯を彼が触っているときは大人しくしているのだった。
彼の仕事は大変みたいで、トイレの時もお風呂も携帯が手放せないのであった。そんな大変な彼を私が癒してあげないとと思い。部屋に置いてあった、粉のコーヒーを使い彼の好きなホットコーヒーをそっと彼の前におくのだった。
彼はメール中でも、それに気がつくと
「ごめんね」と言って頭を撫でてくれのであった。私は
「がんばってね」と言って
彼が一段落するまで小説を読むのであった。
2泊3日もあるので私たちは色んな所に行き写真を撮りあったり、美味しいものを食べたり、ホテルに帰ったら・・・。それはもう、二人で沢山の思い出を作った。
その思い出は自宅に帰ってからも私の心は旅行の事で一杯だった。私はその思い出を何時でも思い出せるようにアルバムを作った。彼だけの彼のみの彼だけが写った、私の思い出の私のアルバム。
しかし、この幸せな日々は永遠に続かなかった。
彼とは合計で6年付き合っていた、合計っていうのは3年目に一度別れてから復縁したのだ。
一回目の別れは友達に戻った感じで、別れた後も交流はあった。その後結局、彼が復縁を求めてくれたので、もう一度やり直す事になった。
復縁してからの彼はそれはもう、優しかった。元々から、優しかった彼だがより優しく私を気遣ってくれることが多くなった。
ある日のペットショップでのデートの時だった。彼の携帯が鳴ったのだ。私に謝って電話にでる。私は
「「気にしなくても、いいのに。優しいなぁ」」
と思いつつ、彼の電話を待つ。電話が終わり彼が私に
「ほんとっ、ごめん。フットサルのメンバーが欠けたみたいでスケットで僕が呼ばれたんだ。行っても大丈夫?」
私は笑顔でうなずく、答えは決まっている。
「私は大丈夫だよ、行こうよ。迷惑かけられないもんね」
私は彼が多趣味なのは知ってる。バイクを乗ったり、フットサルをしたりしてる。しかも、メンバーや仲間からも信頼されている。そんな、彼が呼ばれているのだ、私の彼が。彼女の私は彼の事を優先するのが当たり前である。そしたら彼が
「たぶん、君が付いてきても面白くないと思うからここで待っててもらってもいい?以前に君が退屈って言ってたから、ここにいた方が面白いんじゃない?」
私は驚いた。そんな些細な事まで覚えてくれてる。しかも、私が退屈しないように気を使ってくれてる。私は嬉しくて、涙が出そうになる。私は笑顔で
「うん。そうだね、邪魔しちゃ悪いもんね。私、ここで待ってるね」
彼は再度、申し訳なさそうに私に謝ってくれる。私はとてもうれしかった。
その後、彼は急いでそのフットサルの会場に車で向かうのだった。
知らない土地の知らないペットショップだったのだが、動物が沢山いたので退屈はしなかった。ウサギとおしゃべりをしたり、お魚と遊んだりして私は彼を待っていた。
彼のおかげで、彼が戻ってくるまでの2時間は楽しく過ごせたのだった。動物たちと一緒にいたのもあるが、彼が今まさに活躍してるのを考えるだけで、あっという間だった。
彼が急いで帰って来て、私たちが車に戻る頃には夕日の日差しが私たちを祝福するように降り注いだ。私たちはその祝福の中、車の中で唇を重ねたのだった。
それからも、彼とは幸せな月日を過ごした。私も年を重ね、彼との結婚を考え始めた頃。あの日が訪れたのだった。
その日もかわりなく、彼とデートしてる時だった。朝から彼はどうも落ち着きがないように感じていた。でも、いつもとかわりなく、デートをして晩御飯のラーメンを食べた帰りだった。
私の家の近くまで彼は車で送ってくれて、いつも通り帰るはずだった。不意に彼が
「なあ、卒業旅行に行かないか?」
私は何か聞き間違いをしたのかと思った。私は笑顔で
「そうだねー。次はどこに行こうか?この前パンフレットに載ってた所もいいし、二人で見てたドラマの間のCMで写ってたとこもいいね。次だけじゃ足らないね。もっと、休み取らないと」
私は嬉しそうに彼に聞く。しかし彼の顔は辛そうにしている。その時、車のフロントガラスに雫が落ちたのだ。そして彼が
「ごめん、それは出来ない。君とは次の旅行で最後にしたい。だから、一緒にいい思い出を作ろう。」
私は何を言ってるかわからなかった。雫が多くなり、とうとう雨が振りだしたのだ。
「自分勝手なのはわかってる。けど、僕と次の旅行を最後にして別れてほしい」
私は訳がわからなかった。泣いてはなかったけど声は裏返る
「ねえ、うそでしょ?もしかして、何か私あなたに嫌われることした?もし、あったなら謝るし。ちゃんと直すから、ね?」
彼は私に目を合わせてくれない。そして、申し訳なさそうに
「でも、君を嫌いになった訳じゃないんだ。本当だ、でも僕は・・・君とは一緒にいられない」
外は大粒の雨が車を叩く。そして、私たちを引き裂くように雷まで鳴りだした。私は
「ねえ、ほんとに私たち一緒にいられないの?もう、私たちやり直せないの」
彼は黙ってうなずく。私は凄く辛くて辛かった。いっそ、私のことを嫌いになってくれたらと。
そんなことを思うが言いたくても伝えられない、私どうしたらいいの・・・
でも私は、大好きな人の幸せを願う。私は・・・。
「わかった・・・うん、そうだね、別れよっか・・・」
泣きそうだったが私は気丈に答える。彼をこれ以上、困らせたくない。最後に泣くのを堪えて笑顔でお別れをつげる。
「旅行の件は大丈夫、そんなに貴方が気を使わなくてもいいよ。私は貴方と今日お別れをする。さようならだね、バイバイ。あなたの事、大好きでした・・・」
「ーーーーー、ーーーー。」
彼が何か私に言ってくれてる。でも、聞くのが辛くて車から出て扉を閉める。
私は雨の中を走った。後ろを振り返らず。ひたすら走る。
愛しくて、愛しいのに彼から逃げたくて、足は止まらない、でもこの思いだけでも彼に届いてほしい。せめてこの気持ちはわかってほしい・・・
私の頬は濡れている。全身も濡れている。そう、雨のせいだよ・・・。
急に店員さんが急に駆け寄り。私は気がつく
「お客様、どうかなされたんですか?」
私はぼんやりしていた、気持ちを元に戻す。
「何かありましたか?温かい飲み物をお持ちしますね」
店員さんは急いで裏に戻る。私は窓ガラスに写る私を見た。泣いていたのだった。
「ああ、最後まで思い出しちゃた。最悪・・・」
私は思い出しすぎたのだ。その記憶は鮮明で追体験のような状態だった。
私には楽しい記憶と辛い記憶が身体に染み付いているのだ。
店員さんは戻って来てそっとテーブルにカップを置く。温かいコーヒーの匂いが心を落ち着かせる。私は
「すいません。私、頼んでませんけど・・・」
店員さんは笑顔で私に微笑みかける
「サービスです。どなたかお待ちなんですよね?これでもお飲みになって心を落ち着かせて下さい」
私は頂いたコーヒーを乾いた口に付け、少しずつ飲む。
「あ、おいしい・・・」
店員さんは笑顔で軽く会釈をして下がる。
「おいしいな、おいし・・」
私はまた、泣き始めたのだった。この涙は当分止まらない、今の気持ちをあの時のように偽りたくなかった。
私はしばらくして、落ち着きを取り戻し時計を見る、時間は11時30分。とりあえず私は店員さんにお礼を言い、お手洗いで化粧を直す。
「まさか、長時間滞在した挙げ句、1人で妄想して号泣とか。私、最悪だなぁ」
私は鏡の前で独り言を呟く。私は私を見る、そして。
「あなたも顔が真っ赤だよ、大丈夫?私はこれからあの人のに会うのに目が真っ赤になっちゃった、恥ずかしいなぁ。でも、がんばるね」
私は私に決意を告げる。一瞬ここから逃げたくなったが、そんな弱音を振り払う。
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彼女は決意し、彼に会うことにしました。ここからは貴方が彼女の運命を決めてあげてください。この先は読み手によって結末が変わります。
◆ルートA
【彼女にとっての不幸かもしれない幸せ】
→この後、彼女の願いが叶います。
◆ルートB
【彼女にとっての幸せかもしれない不幸】
→この後、彼女の願いが叶いません。
貴方が結末を決めて彼女を導いてください。
この後、ルートAなのでルートBの方はとばして、お読みください。
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ルートA
席に戻り彼を待つ。そして、12時になった頃。
店の扉が開く。
カランコロン。カランコロン。
私は顔を上げれなかった。入って来た人が店員さんに
「■■です。ただ、この後もう一人来ます」
私はその声、その名前を聞くと身体が固まったのがわかった。
店員さんは笑顔で案内をする。
「かしこまりました。こちらにどうぞ・・・」
あの人との距離が近づく。その時、あの人が
「あれ?先に来てたのか。しまった、ごめんね。」
彼は私にささやく。私は
「うん、先に着いちゃったんだ」
彼は笑顔で店員さんに
「すいません。彼女と待ち合わせする予定でして、席をこちらに移動してもいいですか?」
店員さんは笑顔で答える
「もちろんです。直ぐにご準備しますので、少々お待ちください」
店員さんは彼の物を私のテーブルに移動してくれる。そして、向かい合いに座る
「ごゆっくり、どうぞ。」
店員さんは彼のホットコーヒーを置き、席を離れる。テーブルには2つのカップ、2つのホットコーヒーが並ぶ。
私と彼は少しの間、沈黙だった。そして、彼が
「いきなり、呼び出してごめんね。迷惑じゃなかった?」
私は首を縦にふる。そして、
「そんなことないよ。急にどうしたの?」
私は恐る恐る聞いたのだった。そしたら彼が
「あれから考えてたんだ。それで・・・自分勝手なのはわかってるんだ、今さら迷惑かもしれないが、僕と今一度やり直してほしい。」
「僕は君じゃなきゃダメなんだ。だから、君が許してくれるなら僕と付き合ってほしい」
「そして、僕ともう一度やり直してほしい。君をもう離さない、だから・・・」
私は涙がまた、止まらなかった。でも、彼の決意を聞きたかった。
「私を捨ててこんなに待たした事を私は貴方を許さない」
私は彼を真っ直ぐ見る。彼はその言葉を聞いて悲しそうな顔をしている。私は追い討ちをかけるように
「だから、今さら謝っても許さないし、貴方とは付き合えないでも・・・」
私は泣きながら、笑顔で
「私を大事に思ってくれてるなら・・・今すぐ私と結婚してよ」
彼はその言葉を聞いて、ビックリしてる。そして、席を立ち上がって。
「わかった、じゃなかった。僕と結婚してください。これから、貴方を二度と泣かせません。君を、一生幸せにします。だから、これからも一緒にいて下さい。」
私も立ち上がり、彼の出してくれた手を握って。
「はい、よろしくお願いします」
その瞬間、喫茶店が歓喜に包まれた。他のお客さんや店員さんも私たちを祝福する拍手がおきる
私たちはみんなにお辞儀をして店を出る。会計の時、店員さんが
「末永く、お幸せになってくださいね」
結局、このお店には迷惑をかけっぱなしだった。
私は小さく「はい。ありがとうございます」と言い店を出る。
外に出た私は驚いた。今日、1日雨の天気だったのが雨が止み、晴れているのだ。
「うそ・・・晴れる事はないって天気予報が言ってたのに」
彼は笑顔で
「僕たちを祝福してくれてるみたいだ。ほら、虹が出てる」
空には大きな虹と温かい夕日の日差しが差し込む。彼は照れ臭そうにカメラを取りだし
「なあ、一緒に写真を撮らないか?」
私の答えは決まってる。
「うん。」
2人は大きな虹の下、優しい夕日の中で小さなカメラを向けて肩を寄せ合い。2人の写真を撮るのであった。
これからの幸せを願いながら・・・。
END
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ルートB
席に戻り彼を待つ。そして、12時になった頃。
私は入り口を見るが誰かが来る気配はない。
その時、入り口で外を確認する、店員さんと目が合う。誰かを必死で探しているようだ。
それから時間がたち、もうすぐ1時になる頃だった。私は少し寂しく
「「あーあ、約束すっぽかさせたのかなぁ」」
あの人は時間に遅れることは多々あったのだが、その時は直ぐに連絡はくれる人だった。流石にこれだけ待って連絡がないのは来ないのだと思う。
「「また、遊ばれちゃった。私って本当バカだよね」」
私は帰る決意をしたのだ。そして、立ち上がろうとした時、店員さんが近くに来て恐る恐る
「失礼ですが、もしかして■■様でしょうか?」
私は驚いた。確かにこの店員さんにはお世話になったが、名前は名乗ってないのだ
「はい、そうですが。なぜ名前を?」
店員さんは驚いた顔で
「申し訳ございません。気づくのが遅くなりました。■■様からご伝言とこれを預かっております。」
私は店員さんが差し出した物を知っている。私が見間違えるはずはない。これは彼の携帯だ
そして、店員さんは
「■■様が来られたらこちらの席にご案内するように頼まれておりまして。こちらにどうぞ」
その席は私の席の隣の予約席。私は手渡された携帯を開く。
その携帯の待ち受けの写真には、文字が書いてあり
【メールを見てほしい】
私は指示通りメールを開く。そこには1通のメールがあった、私はそれを開く。送り先はなく、この携帯で作ったものらしい。そこには、
【今日は来てくれてありがとう。君に直接会って言いたかったが、僕の決意が揺らぐ気がしたのでこれで伝えることにしました。僕は今日これで本当にさよならをしようと思う。別れてからもメールのやり取りをしていたのだが、君に迷惑をかけてると思い。これからは一切連絡を取らないようにしようと思う。もちろん、勝手な話だと、君は思うかもしれないが、僕なりのケジメなんだ。それをわかってほしい。だから、この携帯、番号、アドレスは捨てる事にした。僕はズルい男だから、これがあるとまた、君に連絡してしまうからね。僕がいれば君も前に進めないと思う(これは僕の勝手な想像だけど)だから、全部最後なんだ。今までありがとう、そして、さよなら。同じ空の下で僕は君の幸せを願ってるよ。だから、幸せになってね。最後になったけど、お誕生日おめでとう。追伸 面倒だと思うけどこの携帯は破棄してください。】
私は全てを読み終えた後、顔を上げるとそこには店員さんがケーキとアイスティーのミルク付きをテーブルに運んでくれて
「お誕生日おめでとうございます。こちらも、■■様からです。」
そういえば 、今日は誕生日だった。私はそのケーキを泣きなが食べた。店員さんに愚痴を言いながら。
「何かヒドイですよね。自分勝手過ぎるでしょ。こんなことされたら私・・・」
店員さんは「そうですね」と言い私の愚痴を聞いてくれた。
私は彼に結局会えずにサヨナラをされたのだった。ケーキを食べ終えて私は帰る事にした。レジで店員さんが
「そう言えば、■■様はお客様が来られる数分前にこの店を出たんですよ。私どもも12時に来ると伺っておりまして、お伝えが遅くなり申し訳ございませんでした。」
私は驚きながら、答える。
「いえ、謝らないといけないのは私の方なんです。勝手に早くに来て長時間滞在した挙げ句、泣き出したり。こんな、あの人のワガママまで聞いてもらって、本当にご迷惑おかけしました」
私は店員さんに深々と頭をさげる。そして
「こんなことされたんで、また当分忘れらなさそうですが、少しずつ前に進みたいです。彼とのこの思い出をいつの日か笑って話せるようにしたいです。」
店員さんも苦笑いをして
「確かに私もこんなことされると、当分忘れられないかも・・・でも、今日を1つの区切りにして、頑張っていい人見つけてください。そうだ、新しい人出来たら一緒に来てください。そしたら、お祝いにサービスしますね。」
とても優しい店員さんだった。私は
「ありがとう、ございます。必ず報告させてもらいます。もちろん、それ以外でもコーヒーを頂きにきますね。ここのコーヒーは絶品ですから」
私は再度、深々と頭を下げて店をでる。雨はやはり降り続いていて止む気配は無い。ただ、私の心はスッキリしていた。
「始まりも、終わりも、再スタートも雨かぁ。せめて、今日ぐらいは晴れてくれたらよかったのに。まあ、しかたないね」
私は傘をさしながら軽快に歩いて駅に向かう、手には彼の携帯。
「そうだ、帰ったらあのアルバムをみよう。そして、次の人を探そう。まずは婚活パーティーかな?」
あれから一度も開くことなく押し入れに彼のアルバム。たぶん、これからも捨てられない、しかも彼の携帯もある。それは、やっぱり思い出なのだ。
「よーし、いい人見つけて甘えるぞー」
回りの目を気にせず、大きな声で叫ぶ。ここから再スタートだ。私は決意を新たに駅で切符を買う。
希望が待っている未来の切符を片手に電車に乗り込んだ。
それは初めて彼に会ってから10年たった35歳の誕生日の出来事だった。
END