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闇に叫ぶは、人か魔か  作者: 輪島仁
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本家

本編始まります。

主人公の少年はまだ無名。



私と先輩は『本家』をめざす。

地図にも載らない異郷の地。

同じ場所から目指しても、その度、時間がころころ変わる。きっとここではない何処かにあるのだろう。考えるだけ無駄なのだ。

歩いているのは山の中、森の道。進むほどに頭上の梢は闇を濃くしてゆき、足下には膝丈までの霧が流れてくる。霧のくせにまったく湿度を感じない。むしろ乾いた感触なので、肌に涼しく快い。

左右の森が開けた。

現れたのは神殿造りの巨大な建築物と、左右に門柱のようにひろがった平屋が二つ。神殿造りのほうが通称『本家』と呼ばれる、お偉いさんの住むところ。そして左右の平やが私たちが見習い使用人が寝泊まりしている寮だ。男女で左右が分かれている。

「それじゃ、お疲れさん」

「はいはい、お疲れ様です先輩」

猫でも追いやるように先輩を送り出し、私は深く溜息をついた。

今更だが自己紹介をしよう。

私はトウコ。

十番目の使用人見習いだから、トウコ。

安直な名付けだが、これでもマシなほうだろう。名付けられずに死んでいった、他の子たちに比べれば。

この『お屋敷』の使用人といえば、家政婦さんのことではない。この世ならぬ妖魔・妖怪を討ち果たす退魔師である。その苛烈さゆえに、「見習い」に上るまでに命を落としたものも多い。

……だからこそ生まれつき異常な耐久力を持ったあの先輩は、たびたび嫉妬の対象として話題に上る。しかしその耐久力の原因であるこの屋敷の闇を見てしまった後では……。

やめよう。

忘れよう。

今日だけはあの先輩を見習って昼寝でもしよう。

そう思って女子寮のほうを振り返ると、そこには見慣れた女性が一人。スーツ姿でいかにもやり手そうな、しかしどこか憎めない愛嬌もただよう女性が。

「りょ、寮監さん?」

「ごめん、トウコちゃん。あなたちょっと本家に呼ばれたみたいよ?」

マジですか。思わず素で返しそうになった。

「ちなみに、呼んでるのはどなたで?」

「市松様」

「マジですか!」

思わず素で口に出ていた。

この時、私は素直に思った。

もう、帰れないかもしれない、と。









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