説明終わり
「それで、何をすれば良いんだ?」
「修司の役目は、連絡役だ。まずは、一輝、アンビシュンの奴らは、予定通り二十時に学校に来るのか?」
急に話を振られ、少し虚を突かれたが、僕は夢の記憶を思い出して口を開く。
「確か予知夢の中では、少し待たされた…みたいな事を時雨が言っていたと思う」
「という事なので、二十時にアンビシュンの奴らが学校に居るという保証は無い。だが、計画の開始は奴らが学校に着いてからだ。という事で、時雨君には奴らが来たタイミングで合図を送って貰う事になるのだが、その合図を修司に送って貰う」
僕の話を継いでの父さんの説明に、
「合図ってのは?」
時雨が問う。
「まぁ携帯でワンコールでもすれば良い。ポケットの中で、後ボタン一つ押せば電話が修司に掛かる状態にしておいて、掛けたらすぐに切る。奴らに気が付かれない様にな」
「なるほどね」
「で、私はそれを四人に伝えれば良いって事かな?」
父さんの説明を先回りして修司さんが問い掛ける。
「そういう事だな。皆に携帯で連絡する。俺達の方は、一輝じゃなくて俺にしてくれ。そして、連絡があったら三か所はすぐに起点の作成を開始する。作成が終わったという事は連絡しなくても良いぞ。星河ちゃんが直接感じ取れるはずだからな。クレセントムーンの力で」
「はい、それは大丈夫だと思います」
星河が同意し、他の三人が、
「おっけ」
「了解」
「分かりました!」
それぞれ返事をした。
「それで、三か所の作成が無事感じられたら、星河ちゃんは修司にそれを伝え、修司が俺に連絡する。その後、最後の起点を一輝が能力を使って壊し、俺が新しいのを作ると。それが感じられたらすぐに星河ちゃんは結界を張る。星河ちゃん、ここの所の流れはおっけー?」
「はい、分かりました」
「で、その段階まで行ったら皆が結界の中心地に集まる事にする。それまでは、起点に何かしらの妨害があるかもしれないからその周囲で待機って事で。もし妨害があって…という事も本来なら話し合っておくべき事なんだが、今回は予知夢によって結界が張られる事は確定している。だから、もし何かあっても臨機応変な対応で何とかなるんじゃないかなーと思うんだがどうだ?」
父さんの確認に、意外にも答えたのは美来さんだった。
「クラウドルインズの予知夢を信じるならそれで良いと思うわ。信じないというなら、根本からこの計画が間違っているという事だしね」
おっしゃる通りで。
僕の予知夢を根拠に計画が立てられているという事に不思議と疑問は湧かなかったが、確かに、予知夢が確定事項だという事をここに居る皆がちゃんと受け入れられているのかは分からない。
だから、受け入れているからこその計画だと美来さんは念押しをしたのだろう。
「ということで、皆もそういう事で宜しく頼む。問題は、結界が張られた後、予知されていないその先だ。もしかしたら、クラウドルインズの力をもってしてもアンビシュンの侵入を防げないかもしれない。その時のために、結界が張り終わったらすぐに皆が中心地点に集まり、ゲートから現れる者に対して対処する事にする」
僕が失敗した場合について、か。
確かにその先は予知夢で確定されていないのだから、何が起きてもおかしくは無い。
それに備える事に、反対する必要があるだろうか。
僕としては少し悔しい所もあるのだけれども、万が一つも許されない状況なのだ。
皆が頷き、父さんがポンッと両手を胸の前で叩く。
「ってことで、俺からの全体の流れの説明は終わりだ。後はそれぞれで分からない所、気になる所があったら確認し合ってくれ。ああ、もちろん、携帯番号知らない人が居たら、ちゃんと全員と連絡取れる様にしておけよ」
そう言い終わると、一仕事やり終えたといった感じで父さんは満足げに後ろに下がると、空いていたソファーに腰を下ろした。




