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クラウド・ルインズ  作者: 時野 京里
八章 雲之遺跡
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目覚めの時


――ん~~~ふふ~ん~~ふふ~――


 何処からともなく、歌が聞こえてくる。

 何処かで聞いた事がある様な優しい旋律。

 気持ちが安らぐ柔らかな響き。

 それが、誰かが鼻歌を歌っているのだと気が付いたのは、僕の意識がはっきりと現実へと戻ってきた時だった。

「ん、く…はぁあー」

 大きく伸びをすると、片腕だけ何かに当たる感触が。

 目を空けると、目の前に顔があった。

「かずくん、おはよう」

「え、あ、ああ、おはよう…ございます」

 突然の言葉に、思わず挨拶を返すが、同時に体は固まる。

 全く状況がつかめない。

 おはようと言ったものの、辺りは暗い。

 どうやら外に居るらしく、木の葉が風に揺られてサワサワと鳴る音が聞こえてくる。

 と、そこで自分がどうやって寝ていたのか気が付き、瞬時に上体を起こす。

「あん、もっとそのまま寝ていて良かったのに~」

 先程の挨拶の主が、残念そうにそう口にするが、そんな事は気にしない。

 振り返り、そして確信する。

 自分が今まで目の前の人物、聖風来夢に膝枕をされて眠っていたのだという事に。

 一体どういう事だ? 確か、さっきまで聖風家の地下室に居たはずだ。

 そう、そして、今までと雰囲気の違う予知夢を見ていて……。

 だが、今は何故か野外に居る。

 それは、座っている尻の下から感じる冷たい土と、まばらに生えた草の感触がはっきりと物語っている。

 周囲には目の前の人物一人だけしか居ない様で、他に人の気配は感じない。

 辺りはすっかり宵闇に包まれていて、月と星の輝きだけが辺りを照らす灯のため、周囲の様子はあまり見て取る事は出来ない。

 ただ、一つだけはっきりしているのは、僕らは大きな一本の木の下に居るという事だけだ。

「来夢さん…だよね?」

 一応そう確認して見ると、

「もう、かずくん! そんな他人行儀な呼び方はやめて、昔みたいに来夢って呼んでよ!」

 何故か怒られる。

「あ、ああ。ごめん。えっと、それじゃあ来夢」

「なあに? かずくん」

 何と言うか、先程夢の中で星河と会話していた時とは全く喋り方が違う。

 凄く甘い声で、とりあえず……頭を抱えたくなるが、それは何とか堪えて会話を進める。

「えっと、ここは何処なのかな? ってか、俺は何でここに居るんだ? 何があったんだ?」

 疑問はまだまだあったが、何とかそれだけで言葉を抑える。

「ん~と、話すと長くなるんだけど、一応順を追って説明するね。かずくんが寝ちゃった後、地下室にうちの――私達の両親とかずくんの所のお義父さんがやってきたの」

 何だか変な響きがあった様な気がするが、たぶん気のせいだろう。

「あれは、やっぱり現実でも――」

「ん? 何か言った?」

 予知夢を思い出しながらの僕の小さな呟きに、来夢が聞き返してくる。

「いや、何でも無い。続けてくれ」

「そう? なら続けるけど、それで、親達は私達に色々と隠してた真実を語ってくれたんだけど……詳しい事はお義父さん本人から聞いた方が良いと思うから、省略するね。で、結論としては、星河さんは地下室に残って時雨とうちの両親と共にクレセントムーンの扱いの修行するって事になって、かずくんはお義父さんと一緒にクラウドルインズの修行をするって事になったんだよ」

 ふむ。僕がクラウドルインズの継承者だというのは確定した訳か。

 まぁ、地下室に父さんが現れた時点でそれはほとんど決まった様なものだったが…。

 だが、

「父さんと修行って言われても、ここには来夢しか居ないみたいだけれども?」

「私は、かずくんと一緒に居たいからこっちに来させて貰ったんだよ」

 疑問に対して、斜め上の回答をしてくる来夢。

「いや、そうじゃなくて……父さんはどうしたのかな、と」

「お義父さんは、今ちょっと見周りに行ってる所だよ。かずくん、ここが何処だか分かる?」

 何処って、分からないからさっき質問したんだけれども…。

 そう思いながらも周囲に視線を巡らせる。


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