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クラウド・ルインズ  作者: 時野 京里
二章 前兆
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見覚え

 がばっ。


 ベッドから起き上がる。

 枕元の時計を見ると、時刻はまだ午前五時を過ぎたばかり。起きるにしてはまだ早すぎる時間だ。

 だが、

「今の夢は……。まさか二日連続で見るなんて…」

 予知夢である。二日連続で見るなんて初めてのことだが、この目覚めの感覚、予知夢を見た時のいつもの感覚である。

 しかし――

「いくらなんでも現実離れしすぎている…」

 真っ黒な影の化け物やら、男の使う不思議な術やら。

 普通では絶対に考えられない事で、アニメや漫画の中の出来事だ。いっそ、ただの夢であった方が納得出来る。

 でも違う。これは予知夢だと、はっきりとした思考と空腹感が告げている。

 しかし、あれが本当に予知夢だとして、現実だとして、それが一体僕の未来にどう影響するというのだろうか。

 夢に出てきたあの坊さん……昨日見た托鉢僧と同じ格好ではあったが、同一人物だという自信はない。

 暗闇ではっきりとは見えなかったし、編み笠を目深に被っていたため、その顔もほとんど見えていなかったからだ。

 もちろん、昨日の托鉢僧の声は聞いていないので、声から予想することも出来ない。

 だが、もう一方の男。

 制服姿のあの男の方は、昨日の夢にも出てきた男に間違いなかった。

 そして、現実にその男に心当たりがあった。昨日は気が付かなかったが、今日の夢で確信した。

 長髪を後ろで束ねている姿。それに、近明高校の制服。

 昨日の朝、玄関で出会ったあの男だ。校門を走り抜け、下駄箱の脇で息を整えている時に話しかけてきたあの――



 本日も昨日と同じように雲一つ無い晴天。いわゆる、五月晴れというやつだ。

 まだ朝早いというのに、日光を浴びて歩いていると汗が噴き出してくる。

 とは言うものの、いつも通りの三十分前の登校。昨日の全力疾走とは違って汗だくになるという程ではない。

 そうして僕は、始業のチャイムの時間まで余裕をもって学校に到着する。


 教室に着き鞄を置くと、僕はすぐに二年A組の教室へと向かった。

 昨日、下駄箱で見かけた男……確かA組の所で履き替えていたはずだ。

 開けっ放しにされていた入り口から中の様子をうかがう。

 教室にはまだ十人程の生徒しかおらず、目的の男子生徒は見当たらない。

 昨日、見かけたのは遅刻ぎりぎりの時間だった。いつも同じ様な時間に登校しているのだとしたら、教室に居ないのは当然なのかもしれない。

 一度教室に戻ろうと、後ろを振り向いたその時、

「あれ、一輝? うちのクラスに何の用?」

 今登校して来たのであろう女生徒が声を掛けてくる。

「あ、星河。おはよう」

 とりあえず挨拶をしてから、考える。

 いくら星河は予知夢の事を知っているといっても、あの夢の内容を話して良いものだろうか、と。

「うん、おはよう。で、どうしたの? 変な顔しちゃって」

 考え込んでいて変な顔をしてしまっていたのか。

 ええい、悩んでいてもしょうがない。

 星河もA組だ。話を聞いてもらった方が話は早いに違いない。

 僕は周りの目を気にしつつ、小声で答える。

「ちょっと昨日の話の続きしたいんだけど、良いかな?」

 何の話かはすぐに分かったようで、星河はうんうんと頷くと、

「分かった。じゃちょっと荷物置いてくるから待ってて」

 と、教室に入って行く。

 そして、すぐに戻ってくると、

「じゃ、行こっか」

 そう言うと星河は僕の腕を引っ張って、屋上へと向かって歩き出した。



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