夢の話
時雨は僕らの事を信用して話をしてくれた。
であるならば、今度はこちらの番だ。
「話は変わるけど、もし俺が星河と同じ様に――クラウド…何とかの継承者だったとしたら、何か特殊な力が使えるって可能性はあるのか?」
「クラウドルインズだ。星河さんのペンダントの様に分かれた欠片を持っているなら何か使えるかも知れないが、一輝からはそれを持っている感じはしない。つまり、特殊な力が使える様な事は無いと思うが」
時雨の答えに少しがっかりする。
もしかしたら、僕のこの予知夢を見るという事が、クラウドルインズに因るものではないかと考えたからだ。
だが、まだ時雨の言葉は続く。
「そうは言っても、断言は出来ないぜ。他の家の事までははっきりとは知らないからな。そして、お互いに知らない様に隠されている可能性もある。結界の起点の様にな」
お互いに力の事を隠す事で危険が迫っても万が一に備える…そうか? どちらかというと、本当に危険な場面では、お互いの出来る事をしっかりと把握して連携して行動した方が良いのではないか?
そんな考えが頭を過ぎるが、どちらにしろ僕は時雨に夢の話をする事に決めていた。
意を決して口を開く。
「俺には、特殊な力があるんだ。それは、予知夢を見れるという事」
「一輝――」
驚いた様な顔で視線を向けてくる星河に頷き返し、再び時雨へと視線へと戻す。
「予知夢っていうのは、つまり、夢で未来が見れるって事だよな?」
と、確認をする時雨の言葉。
「ああ、そうだ。未来に起こる事が夢で事前に分かるんだ。証拠、と言われても見せる事は出来ないけれども…普通なら知らない事を知っているって言ったら納得してくれるかな?」
その問い掛けに時雨は真剣な眼差しで応える。
「例えば?」
「昼間の学校の爆発を起こしたのは、青木時雨――君だっていう事とか」
「えっ!?」
その言葉に驚きの声を上げたのは、隣の星河だ。
この事はさっき見た夢で知った事。星河が驚くのも当然だ。
時雨の方はというと、声こそ上げなかったものの驚きに目を見開いていた。
「なるほどね……それは…それを、知っているからこそのさっきの継承者の話か」
僕が、時雨がイーストステアーズの継承者だと信じていた件は、先程話した内容の外にも理由があったのだと時雨は理解した様だ。
「といっても、時雨が爆発を起こした所を見た訳じゃないけどな。君が、自分でそれをやったと話している所を夢に見たんだ」
実際には、爆発を起こしたと言ったのでは無く、招待状を用意したと言っていたのだが、それはこの際問題無いだろう。
「あの爆発がどういう意味があるのか、一輝は分かっているのか?」
「はっきりとした事は分からないけどな。一つは事件を起こす事で学校からの人払い。もう一つは、ある人物への招待状」
「読めるのか?」
その問いの意味が分からず聞き返す。
「読めるって?」
「いや、そうか。そうだよな。アルドの事を知らなかったんならそうだよな」
何か一人で納得している時雨。
と、そこで星河が口を出す。
「ちょっと! 私にも分かる様に話してよね!」
「ああ、ごめん。俺が夢に見たのは、夜の校庭で時雨と敵――アンビシュンの者が一緒にいる場面だった。そこで、その相手は校庭の爆発跡を見て、時雨から招待状を受け取ったみたいな事を言っていたんだ」
「それって、さっき見たって事?」
確認する星河。
やっぱり、僕が予知夢を見ていた事で起きなかったという事には勘付いていた様だ。
「そうだよ」
星河へと肯定の返事をすると、今度は時雨から言葉が返ってくる。
「今言われた事は確かに、俺がこれからしようと思っていた事だ。あの校庭の爆発は、ただの爆発じゃないんだ。あそこには、アルドが見える者だけに見える文字でこう書かれている。『明日、夜八時、ここで待つ』とね」
なるほど、単に爆破跡だけで呼び出したのかと思ったが、それだけでは無かったのか。




