表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クラウド・ルインズ  作者: 時野 京里
七章 伝承
53/119

話の後で



 ここまで、時雨一人が一気に話をした。

 途中でいくつも疑問が浮かび、何度も口を挟もうかと思ったが、とりあえず最後まで聞こうと星河と二人で黙って聴いていたのだ。

 やっと時雨は言いたい事を全て言い終えたのか、一息つく。

「全部話が分かったとは言えないけど、あの時、アパートで急にペンダントが光った理由は何となく分かったわ。私はまだ、お父さんから聞かなきゃならない話があるって事もね」

 ゆっくりと、自分の言葉を確かめながら言っている様な星河の言葉。

 星河はそう言ったが、本当におじさんは全部知っているんだろうか。

 ペンダントの事を考えれば、シュトゥルーから来た者の子孫と言えるのは月夜さんの方じゃないだろうか。

 だとしたら…僕の父さんの方が色々と知っている様な気がする。ペンダントを渡したのも元々は父さんだ。

 と、そこで僕には一つの疑惑が起こる。そして、それを問いかけずにはいられなかった。

「ちょっと聞きたいんだけれども、いいか?」

「何だ?」

 こちらを振り向いた時雨に、ドキドキと心臓の音が大きくなるのを感じながら問いを口にした。

「星河の持つクレセントムーンっていうのは、持つ者の寿命を縮めたりする事は無いか?」

「一輝、それは――」

 続く言葉を飲み込む星河。

 そんな僕の質問と星河の反応に、時雨は眉根を寄せる。

「いや、そんな話は聞いた事は無いが…」

 そう言いながら、ちらりと星河の顔をうかがう時雨。

 おそらく、時雨は察したのだろう。僕の質問の由来を。

 つまり、星河は普通の人と比べて寿命が短いのだと。そして、僕がその理由を、今聴いたクレセントムーンという星河だけが持つ物と結びつけたのだという事を。

「いや、分からないなら良いんだ。忘れてくれ」

 僕は少し残念に思いながらそう口にする。

 もし、原因がはっきりしたなら、星河の寿命を延ばすという事も出来るんじゃないか――そんな思いが僕の中に少しあったのだ。

 少しの間、周囲は何とも言えない気まずい沈黙に包まれる。

 その沈黙を破ろうと、僕が口を開け掛けた時、

「いや、あるぞ」

 時雨が何かに思い当たった様に声を上げた。

 どうやら時雨は、ただ言葉を失って黙っていたのでは無く、何かに思いを巡らせていたのだ。

「え? な、何が?」

 聞き返したのは星河。

 星河自身も、僕の問いの答えが気になっていた様だ。そりゃあ、自分自身の事だ。当然か。

「考えてみたんだが、寿命が短くなるという事に心当たりがあった。さっきも話したが、アルドっていうのは『気』みたいなもんだ。『生命エネルギー』と言っても良い。だから――」

「アルドを使い過ぎると寿命が縮む?」

 俺は時雨の言葉を待ち切れず、先に結論を口にする。

「ああ、そういう事も有り得る。だが、勘違いしないで欲しいが、普通はそんな事は有り得ない。アルドってのは体力と同じ様に、食事を取って休息をきちんと取っていれば回復して行くものだ」

 アルドってのがいまいち良く分からないが、

「じゃあ、クレセントムーンってのが、必要以上にアルドを消費させるって事が?」

「本来のクレセントムーンにそんな効果は無い。むしろ、癒しの効果がある位だ」

 時雨は僕の問いをすぐ切って捨てる。

 けれども、自信が無さそうな声だが、すぐに言葉は続く。

「だが、今思い付いた事で言えば、二つに分かれていたクレセントムーン――つまり、効果が半分の状態で、完全な状態でぎりぎり使える様な紋章術を使えば……足りない部分のアルドを補うために、生命維持に関わるアルドを使ってしまう…かもしれない」

 その答えで十分だった。

 星河の寿命の問題は、やはりクレセントムーンと関係があると僕は確信した。そして、父さんに確認しなければいけないという事も。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ