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クラウド・ルインズ  作者: 時野 京里
七章 伝承
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昔語り


 今から百年以上前、聖風家の現在の当主から数えて三代前。俺から見れば、ひいひい爺さんの時代、聖風家の先祖は、ここではない異世界で暮らしていた。

 その異世界の名はシュトゥルー。

 シュトゥルーがこの世界と大きく異なる点は、『紋章術』と言われる特殊な技術が発展していたという事だ。

 先程、この地下室に入る時に見たと思うが、地下への入口を開く時に赤い紋章が俺の手の周りに現れただろう? あれも紋章術の一つだ。

 紋章術というのは、決まった図形に対して、『アルド』と呼ばれる特殊な力を注ぎ込む事で様々な効果をもたらす技術って事だ。

 ここの入口で言えば、入口を開けるための紋章が分からなければ空ける事は出来ないようになっている。

 このアルドっていう力はシュトゥルー限定の力では無くて、この世界にも存在している。いわゆる、『気』だとか『精神力』だとか言われる様なものだ。

 だから、シュトゥルーに住む人々ってのはこの世界とは基本的には変わりは無いんだが、生活の様式はこの世界とちょっと変わっているんだ。

 まぁ、シュトゥルーってのがどんな世界かってのは、今はそんな重要じゃ無いがね。

 それでだ。シュトゥルーのとある王国で王宮に仕えて平和に暮らしていたひいひい爺さん達だった訳だが、ある時、『アンビシュン』という帝国が攻めて来た。まぁ侵略者がきて、戦争が起こったって事だな。

 向こうの戦争ってのは、つまりは紋章術による戦いな訳だが、アンビシュンは恐ろしい程の強さで爺さん達の住んでいた地域を瞬く間に支配してしまった。

 結果、爺さん達の王国は滅ぼされてしまった訳だが、爺さん達は王国の三つの至宝を持って、逃げ出したんだ。いつか、アンビシュンを倒し、元の王国を取り戻すためにだな。

 で、この至宝というのが凄い代物で、世界に散らばる五つの至宝を手に入れた者は世界を支配出来るとまで言われてたものらしい。

 その中の三つを手にしてたんだから、爺さん達の国も結構な国だったとは予想出来るんだが、それだけアンビシュンは強かったって事だな。

 そして、もちろんアンビシュンもその至宝が欲しいので、爺さん達を追い続けた。

 結果、逃げ場をなくした爺さん達は異世界へと逃げる方法を見つけ出し、この世界へと渡って来たという事だ。

 その時、聖風家の先祖と共にこちらに渡って来たのは他に二人いた。つまり、三つの至宝をそれぞれ持った三人がこの世界へと逃げて来たって事だ。

 三つの至宝の内の一つはイーストステアーズ。

 二つ目は、クレセントムーン。

 そして、最後の三つ目がクラウドルインズ。

 それぞれ、持ち主に絶大なアルドを与え、対応した強力な紋章術が使えるようになるという代物だ。

 と言っても、誰でも使える訳では無くて、至宝に選ばれた者にしか使えない。

 もし、別の者が無理矢理使おうとすれば、それ相応の代償を支払わなきゃならなくなる。

 この三つの力をもって、いずれアンビシュンを倒そうと誓っていた爺さん達だったが、そのままでは勝てそうにない。まぁ負けて逃げて来た訳だからな。

 力を蓄える期間が必要だったんだ。

 そのために、まずはアンビシュンが追って来ない様にシュトゥルーとこの世界を繋ぐゲートを結界によって封印した。

 続いて、もしアンビシュンが至宝を奪いに来たとしても、一度に全てを奪われない様に策を打った。

 つまり、イーストステアーズを除く二つの至宝を二つに分割したんだ。

 分割すると言っても、物理的に割る訳では無く、力を半分に分けるといった感じだ。引き出せる力が半減したって事だな。

 こうして、聖風家はイーストステアーズと二つの欠片を預かる事となった。

 同時に、聖風家が目立つ位置――つまり、この町でも有名な名家になるのに対して、残りの二人は市井にまぎれて目立たない様に暮らすという方針で生活をする事となった。

 アンビシュンが攻めて来た時に、聖風家が囮となって、残りの二人がこっそりと後ろから攻めるっていう計画だな。


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