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クラウド・ルインズ  作者: 時野 京里
七章 伝承
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急がねば

   七章   伝承


 僕は自転車にまたがり、青木時雨宅に向けて急ぎペダルをこぐ。

 夢で見た限り、星河が一人であの部屋に入って行くのは確定している訳だが、見て無い部分、つまりあの場面の続きで僕がすぐさまあの部屋に入って行っても問題ない。

 だから、なるべく早くたどり着きたい。

 そう思って急いではいるが、頭の中では今さっき見た夢の内容を思い出し、確認していた。

 これから青木時雨に会う確率は高い。今さっき得た情報は、きちんと精査しておいた方が絶対に良い。


 夢の場面は僕達の学校、近明高校の校庭。時刻ははっきりしないが、夜だという事は確かだ。

 そして、青木時雨が昼間の校庭爆発の犯人だという事だ。

 青木時雨は、あの爆発によって学校から人払いをした。今はまだ事件の捜査などで多くの人が訪れているかもしれないが、夜遅くなればごく少数の、場所のはっきりとした警備の人間しか居なくなる。その警備の人間さえどうにかすれば、暗闇の中訪れる人間は居なくなるという事だろう。

 まぁ、そんな事をしなくとも、夜中の学校など誰も居ないのではないかと思うが……。

 という事は、爆発は敵――僧侶に身を扮していたザルードという男を呼び出すためのメッセージとしての役割が大きかったのだろう。

 爆発跡に何か本人しか気が付かない様な暗号が隠されていたか、はたまた爆発を起こしたというその事自体がメッセージになっていたのか…。

 考えてもそれは結論は出ない。その事から分かるのは、夢の出来事が今晩である可能性が高いという事だ。

 予知夢の順番が入れ替わる事は無いだろう、何て考えていたら早速、今朝見た夢が現実になる前にその後の夢か……。

 いや、もしかしたら、今もう既に今朝夢に見た事は現実になり終わっているのかも…?

 そんな事はどちらでもいいか。

 問題は、あの爆発があったのが今日の昼ならば、この夜あの戦いがあるのだろうという事。

 とにかく、これで昼間の爆発が、全く意味不明な校庭の隅で起こった事の理由が分かった。

 あれは、わざと人の居ない場所で起こされたのだ。そう、あの爆発は何かを破壊するためではなく、逆になるべく破壊しない様にして起こされたのだ。

 夢の中の青木時雨は悪役の様な立ち回りだったが、少なくとも誰かを傷つける様な行いはしない――そう思って大丈夫だろう。

 逆に、礼儀正しい騎士の様な行いのザルードの方が、聖風家の屋敷を焼き、一人の命を奪っている……。

 気を付けるべきはどちらか、はっきりしている。

 あのザルードという男は、確か何とかという国の皇帝の騎士だという様な名乗りをしていた記憶がある。

 聞き覚えの無い国…魔法の様な力…。

 こんな非現実的な出来事なのだから、思い浮かぶのも非現実的なものでも問題無いのだろうか。

 あの男は、ここではないどこかの――魔法が使える様な異世界からやってきたのではないか、と。

 だが、青木時雨も同じ様に魔法の様な力を使っている。

 僕が知らなかっただけで、本当はこの世界にはあのような力があふれているのではないか。

 まぁどちらにしろ、大っぴらにされている様な力では無い事だけは確かだけれど。

 ザルードは自国、または皇帝のために青木時雨の持つ何かを求めてやって来た。

 それに対し、青木時雨はザルードを倒す事を目的と見せかけていたが、実際の所はザルードが自国に帰れない様にするのが目的だった。

 結界をどうとかするという事で帰れなくなるというのは意味不明だが、魔法の様な力で国に帰る事が出来るのだとしたら、その魔法が使えなくなったという事だろうか。

 考えれば考える程、疑問は湧いてくる。

 一体、今この町で何が起こっているのか。

 そして、それが一体僕にどう関わって来るのか…。

 今はとにかく、一刻も早く星河の元へ。そして、星河が夢の中の戦いに巻き込まれる様な自体にならない様に――


 そんな事を考えている内に、僕は青木時雨の住むアパートへと到着した。



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