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クラウド・ルインズ  作者: 時野 京里
六章 東階段
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「イル・デ・ション!」

 呪文と共に現れる赤い紋様。

 正面にいるザルードに向けて真っ赤な塊が発射されるのと、ザルードが動くのはほぼ同時だった。

 ザルードは向かい来る炎の横を、そのスピード以上の速さで走り抜け、地を蹴り、宙を舞う。

 瞬時に時雨の眼前にまで迫ったザルードが叫ぶ。

「爪よ!」

 時雨とザルードの間に黄色い紋様が現れる。

 そこを突進で突き抜けたザルードの両手には、言葉通りの光り輝く爪が現れていた。

 左右からの斬撃を時雨は地面へと降下する事でかわす。

「牙よ!」

 続けて、もう一度ザルードの叫び。

 下へ向けての追撃の途中に再び黄色い紋様が現れる。

 またその紋様を突き抜けて攻撃するのかと思われたが、ザルードはその紋様を足場にしたかのように空中で再跳躍。別方向から、その両手の爪で時雨に斬り掛かる。

 その急な方向転換に虚を突かれたのか、時雨は一瞬反応が遅れていた。

 正面からの突進を警戒し、後ろに飛び退こうとした時雨のその真後ろから光る爪をもつザルードが迫る。

 逆に前方へと回避しようとした時雨だったが、目の前に浮かぶ黄色い紋章に対する警戒心が薄れてしまっていた。気が付いた時には遅く、その紋章からは時雨へと向けて無数の光る棘の嵐が降り注ぐ。

 後ろに回って攻撃すると見せかけたザルードの動きはフェイクで、ただ足場にしただけの様に見えたこの紋様の方が本命の攻撃だったのだ。

「デムリ!」

 鬼気迫るただ一言の時雨の叫び。

 それだけで、赤い紋様が時雨の正面に浮かび上がり、続いて降り注ぐ光の棘への盾として燃え立つ炎の壁が現れる。

 炎で光というものを防げるのかどうか謎だが、実際目の前では、炎に衝突した光の棘達は、ジュッと水が蒸発するかのような音を立てて消えて行く。

 それでも、その全てを防ぎきる事は出来なかった様で、時雨のまとう制服が破れ、赤いしぶきが飛ぶ。

「くうっ」

 痛みに歪む表情と共に、漏れる言葉。

 だが、時雨に休む暇は無い。

 光の嵐とは逆方向から、ザルードが直接迫って来る。

 光の嵐が止むよりも早く二閃のきらめきが宙を舞う。

 時雨は炎の壁の後ろに止まり続ける事は出来ずに、その軌跡から逃れるために嵐の中へと飛び出す。

「アーレ!」

 再び赤い紋様が浮かび、今度は炎が時雨の体を包み込み、その身体が炎の中へと消える。

 炎の塊となった時雨は、そのまま降り注ぐ光の棘を炎で受けながら嵐の範囲から転げる様にして抜け出す。

 ザルードは、自分自身がその光の棘を受ける事を回避してか、追撃をせずに一度後方へと下がる。

 そうしている内に光の嵐は降り終わり、再び、ザルードは前方へと踏み込む。

 次の瞬間、両手の爪と二本の剣がぶつかり合う。

「ほおぅ」

 にやりと不敵な笑みを浮かべるザルード。

 対する時雨の両手には、いつの間にか二本の燃える剣が握られていた。

「いつまでも、避け続けるだけではいられないみたいなんでな!」

 力のこもった言葉と共に、その剣でザルードを弾き飛ばす。

 後方へと宙返りをしながら着地したザルードは、すぐに前方へと踏み出す。

 今度は真正面からの攻撃を避け、時雨の眼前で左へ回転、地面すれすれから片腕の爪で切り上げる。

 その一撃は炎の剣によって弾かれるが、すぐにもう片方の爪が横薙ぎに切り払われる。

 だがその二撃目も、もう片方の剣によって受け止められる。

 そこに、一撃目を弾いた剣が振り下ろされる。

 ザルードは身をひねってその軌跡から逃れると、反転、瞬時に時雨の背後へと回り込む。

 続け様に振り払われた二爪の斬撃は、前方へと倒れ込みながら身を捩る時雨には届かない。

 地に手をついた時雨は、その場でくるりと回転。

「ション・レド」

 赤い紋様が続け様に三つ、時雨とザルードの間に並んで現れる。



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