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クラウド・ルインズ  作者: 時野 京里
五章 三日月
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昼下がりの帰り道


 その後はもう大騒ぎだった。

 後から聞いた話によると、やはり爆発事故による死傷者は全くいなかったようだが、僕達生徒は避難場所で点呼を取った後、荷物を取りに教室に戻る事も許されずにそのままそれぞれ帰宅するという事になった。

 帰り道、駆けつける何台もの消防車やパトカーとすれ違った。

 そりゃあ、学校であれだけの爆発事件があれば大騒ぎになるのは当然だ。

 近所の人達が、野次馬として集まって来ているのも目に入った。その中にはテレビ局や新聞記者の様な報道関係の人達も見受けられた。

 幾らなんでも早すぎだろうと始めは思ったが、良く考えれば、昨夜の聖風家の事件の取材のために近くまで来ていた人達なのだろう。新たな事件発生に、目的地を少し変えて駆けつけたのだ。

 となれば、連続爆破事件なんて見出しで記事が書かれるのも時間の問題だろう。


「やっぱり、昨夜の事件から繋がってるのかなぁ」

 と、隣に並んで歩く星河が話題を振って来た。

 今日は緊急事態に全員一斉下校という事で、普段は下校時間のずれる星河と共に帰路に就いていた。

「うーん、どうだろ。二日続けて同じ町で爆破事件ってなると、自然と関連付けたくなるのが普通の心情だと思うけど…」

 事件と口にしたが、昨夜はともかくまだ今日の出来事はただの事故という可能性はある。関連付けるから事件と思ってしまう訳で、先程の学校での爆発の事は何も分かって無いのだ。

「まさか、これも夢に見てたって事は無いよね?」

「いや、これに関しては全然だね。爆発跡見た時の俺の驚いた顔見て無かった?」

 それには星河は首を横に振る。

「そりゃもう、さーっぱり。私は自分が驚く事で精一杯で、他の人のことは全く記憶に残って無いよね」

 変な言い回しだが、つまり、驚いて爆発跡にだけ気を取られていて周りの事は全然覚えていないって事だろう。

 言われてみれば確かに、僕も隣に居たはずの星河の驚き様を全然記憶して無かった。

「今日はともかく自宅待機だってさ。事件の詳細が分かったら、連絡網で連絡するって先生言ってたね」

「だなー。場合によっては明日休校も有り得るって言ってたな」

 ここ数日、色々な事件が続いて疲れも溜まっているので、学校が休みだというのは願っても無いチャンスではあるのだが、果たしてどうなる事やら。

「でもさ、あの話どうする? 夕方行くっていう――」

「お見舞い、か」

「うん、そう」

 通行人のある道でのやり取り。具体的な言葉は避けて会話する。

「別に今日じゃなきゃいけないって訳じゃないんだよな。ただ夕方だってだけで。うーん、でも今の見るペースだと、またすぐってことも考えられるから――」

「今日になる可能性が高いって事ね」

 経験上、予知夢で見た事の順番が逆になる事は無かった。

 まぁ、今まではここまで連続で見る事は無かったのだから、次に見るまでにその前の予知夢の出来事が現実で起らない事が無かったというだけで、連続で見た場合は現実で起こる順番は入れ替わる可能性があるのかもしれない。

 とは言うものの、今のペースは夢に見るのも現実に起こるのも早い。早過ぎる。ここまで来ると、早く済ませてしまって気楽になりたいというような気もしてくる。

「ま、今から行ったんじゃ夕方には早過ぎるし、一旦家に帰ってまた後で合流しよう。事件の事が伝わって、母さん達が心配してるかもしれないし」

「そうね、分かった。んじゃ、三時位に電話するからよろしく」

「ああ。んじゃまた後でな」

 そう言って、先に着いた日高家の前で僕達は別れた。


 星河が家の中に見えなくなった所で、

「ふぅーーーーーーーーーーーー」

 僕は大きく息を吐いた。

 正直、助かったと思っている。

 校庭の爆発のお陰で、その前に星河としていた話がうやむやになった事がだ。

 あのままだったら一体どうなっていた事か……考え出すと何だか顔が熱くなってくる気がするので、具体的な事は頭の奥に封印する。

 いつも通り雅人と帰ろうとした所、星河に捕まった時はひやっとしたものだ。

 雅人は雅人で、気を使ってだろうが、別の友人と行く所が有るとかいうあからさまな嘘をついて行ってしまうし…。

 実際下校中は、いつまたその話題に触れられるかとずっとひやひや――いや、ずっとどきどきしっぱなしだった。

 いや、でもまさか星河が僕の事をあんな風に――

 と、頭に浮かびそうになった映像を頭を振って振り払う。

 そんな事をしている内に、もうそこは自宅の前。



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