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クラウド・ルインズ  作者: 時野 京里
五章 三日月
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爆発

「な、何が起こったんだ!?」

 僕らは慌てて立ち上がると柵に手を掛け、爆音の発生源であろう方向へと視線を巡らせる。

 屋上から辺りを見回せるという状況で、異変はすぐに目に入った。

「あ、あれ!」

 星河がそう言いながら指さした先は、校庭の外縁部に近い一角。

 遠くからではっきりとは分からないが、そこにはおそらく直径三十メートル程の焼け焦げた跡が出来ていた。

 敷地を取り囲む塀は所々ひび割れてはいるが、なんとかその形を保っている。

 けれども、その前に植えられていたであろう木々は真っ黒く焼け焦げ、あるものは倒れ、あるものは炎を身にまとって、もうもうと黒い煙を上げ続けている。

 恐らく爆発の中心部分であろう地面は他の部分より黒くなっていて、クレーターの様にえぐれている。

 観賞用の緑が植えられているだけの、本当に校庭の隅の方であったため、人的被害は恐らくないだろう。実際、人影は近くに見当たらない。

 幸いな事に風はほとんど吹いていないし、燃えている木々の周りには建物は無い。燃え広がるという可能性はほぼゼロだろう。

 だが、一体何故? どうして急にあんな所で――これ程大きな爆発があったのだろう。

 校舎内で爆発があった方がまだ、ガス爆発だの理科室の薬品だのと理由を思い付くが、何も無さ過ぎて、爆発が起こる理由が全く分からない。

 クレーターの様な跡から、もしや隕石? などという考えも頭をかすめるが、中心部に何か衝突したというようには見えない。

 ふと視線を横にずらすと、屋上で昼休みを過ごしていた他の生徒達も皆、同じ様に柵に手を掛けて同じ方向へと視線を向けているのが目に入る。

 そりゃあ、あの爆発音。たとえイヤホンをしていたとしても気が付かない方がおかしい。

「おいおい、一体何事だ?」

「うひゃー! すごいなこりゃ」

「何…? 大丈夫…だよね?」

 単純に驚いている声。

 突発的な出来事を少し楽しんでいる様な声。

 不安に思う声。

 様々な声が聞こえてくるが、これと言って気に留めるべき言葉は聞こえて来ない。

 そんな風に周囲に耳を傾けている内に、「ジリリリリリリリ」と、校内で緊急ベルが鳴り始める。

 同時に、あまりの出来事に言葉を失っていた生徒達の間にもどよめきが広まり始め、周囲は一気に騒がしくなる。

「か、一輝…これ、一体…?」

 星河も同様で、そう問いかけてくる。

 そう言われても、僕にも何も分からない。

 いや、正直に言うと、あの爆発音を聞いた直後に頭に浮かんだ物が一つあった。けれども、それがこの状況と関係あるとは――

「分かる訳…無いだろ」

 頭に浮かぶその不安を振り払いながら、僕はそう答える。

 そう、頭に浮かんだのは昨日見たあの夢の中での音。

 化け物達と青木時雨が戦う場に響き渡った大音響。それが、今の音とリンクしていた。

 聖風家を焼き払ったあの爆発が化け物達の起こしたものだとしたら、今の爆発も同じ様にあの化け物達が――

 だが、爆発跡の周りには人影も黒い影も見当たらない。まぁ、犯人がそうだったとしても、近くに居るとは限らないが。

 そうやってあれこれ考えながら、僕らはただ爆発跡を茫然と眺めているのみ。

 すぐさまこの身に危険が迫るという状況には思えない。だから、すぐに避難しなければいけないという気は起こらない。

 かといって、何か救助作業をしなければいけないという状況にも見えない。

 しばらくすると、うるさかった緊急ベルが鳴り止み、代わりに校内放送が流れ始める。


『緊急放送、緊急放送。只今、校庭にて爆発事故が起こりました。生徒の皆さんは、教師の誘導に従って、裏門側、職員駐車場まで避難して下さい。落ち着いて、焦らずに移動して下さい。繰り返します。只今、校庭にて――』


 そこまで聞いたところで、

「一輝、避難しなくちゃ!」

 星河が僕の腕を引っ張る。

「うん、とりあえず今は放送に従おう」

 相変わらず、すぐに避難しなければならないという状況だとは思えなかったが、学校としてはすぐにでも生徒の安否を確認する必要があるのだろう。生徒達が自由に動き回っていた昼休み中の出来事なのだから、もしもの事が無いとも言いきれない。

 そうして僕達は、屋上に居た他の生徒達と共に、階段を下りるために校舎へと入って行く。

 遠くからはもう既に、消防車やパトカーの幾つもの音が入り混じったサイレンの音が響き始めていた。



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