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クラウド・ルインズ  作者: 時野 京里
十章 闇
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自問自答


 見えた事から予測すると、奴の全身が光の刃が通らないだけの強度を持っているという事になる。

 今のままでは、どうやっても攻撃は届かないということだ。刃を強化するか、若しくは奴の体の方を脆くするか…何か方法を考えなければ……。

 クラウドルインズの刃でしか対処出来ないのだから、奴の方を何とかするというのは却下だ。

 するのなら、こちらを強化するという選択だ。

 だが、どうやって?

 時雨と協力して? 駄目だ。時雨の力では黒いアルドを浄化出来ないから、僕が光の刃でここまで削ってきたんだ。

 今時雨が対応しているのだって、時間稼ぎに過ぎない。決め手となる攻撃は何も出来ないんだ。

 そんな事は分かっていたはずだ。にもかかわらずこんな事を考えているって事は……誰かに任せて逃げ出してしまいたいっていう気持ちがあるからか?

 はっ、当然だ。

 一日二日前までは、こんな戦いとは無縁の、ごく普通のただの高校生だったんだから。こんな状況に馴染んでいる方が異常なんだ。

 それが何だ? 御先祖様が何たらで、僕も星河も家族揃ってこんな異常事態に巻き込まれて…。

 目の前では、時雨が泥人形相手に炎の剣で打ち合いを続けている。

 一瞬でも対応を間違えれば、黒い刃が体を切り裂く。けれども、時雨の方から泥人形を切り刻むことは出来ない。やっちゃいけない。

 そんな状況でも、僕がクラウドルインズの力によって、泥人形を何とかすると信じて打ち合い続けている。

 一体如何して僕を信じられるというんだ? 同じ学校の生徒であったが、数日前まで全く知らなかった他人だというのに。

 後方では、星河が僕の事を信じて見守っている。

 何か攻撃を受ければ、すぐにその力で治療してくれるだろう。

 そして、星河よりもずっと後方には父さん達が居て、僕らの事を見守っているだろう。

 父さん、星河の父さん、来夢、時雨と来夢の両親…皆が僕らの勝利を信じて見守っているのだろう。

 父さん達も戦えるが、僕達程の力は持っていない。だから、まだ若い高校生の僕らに、至宝と呼ばれる三つの力を託し、同時に未来も託している。

 クラウドルインズ、イーストステアーズ、クレセントムーンという三つの力。

 無限とも言える程の大量のアルドを生み出し、持つ者に強力な力を与えるシュトゥルーから持ち込まれた五つの至宝の内の三つ。

 その中でも、唯一黒いアルドの対抗出来るクラウドルインズ、その力を受け継いだのがこの僕だ。

 だから、僕がやらなければならない。僕だけにしか出来ないのだから。

 ぐだぐだと余計な事を考えるな! 僕がやるべき事は――否、やる事は、ただ目の前の敵を片付ける事のみ。

 硬くて刃が通らない? だったら、より力を込めてぶん殴るだけだ!

 僕が握るこの武器は何だ? アルドで出来た刀じゃないか。そこに込めたアルドの量が、密度が、その強度を決めている。ならば、出来る限りアルドを詰め込んで、より強固な刃を作り出す。

 それが僕のする事。アルドは、奴が言っていた通り、クラウドルインズが無限に生み出すのだから。

 やれる、やってやる、やってやるさ。

 誰かに習った訳ではない。だがしかし、クラウドルインズが扱えるなら、クラウドルインズを受け継いだ僕なら出来るはずだ。出来なきゃおかしい。やってやれないはずは無い!


 僕は両手に光る刃の柄、円筒を握りしめる。そして、その中心に収められているはずのクラウドルインズへと意識を集中させる。

 身体の正面に光る刀を構える格好で、目を閉じ、意識を集中させる。

 次第に、その両手の平が熱くなってきている気がする。

 クラウドルインズからあふれるアルドが、手の平に伝わる感覚、それが実際には感じないはずの熱として感じられているのだろう。

 そして、その熱が円筒から伸びる光る刃へと移動している――閉じているまぶたの裏に、そんな映像が映し出されている気がする。

 未来予知の能力を発動させる。

 ――――まだ駄目だ、まだ足りない。

 再び、両手へと意識を集中させる。そして、熱さを感じる両手の平。

 十数秒程の後、再び予知の能力を発動させる。

 ――――まだ、届かないのか!

 全身の全ての意識をただ、両手へと向ける。先程までよりも、はっきりと、そしてより熱く感じる。

 正面に構える光る刃から、今にも弾け飛ぶのではないかという圧力を感じ――――否、違う。弾け飛ぶなんて事は無い。

 この光の刃には、無限のアルドが込められるはずだ。こんなもので満足している訳にはいかない。


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