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人装神器ゴーアルター  作者: 靖乃椎子
≪第八話 IDEALの日常≫
48/118

第48章 午後11時《ヤマダの日記、ネタバレ閲覧注意》 ◆

 満天の星空が窓から覗いている一室。

 全く整理されていない乱雑に書類が積み上がった机に、一冊のノートが置かれていた。

 表紙には赤ペンで大きく〈閲覧注意・秘密ノート〉と書かれている。

 それはIDEALのSV技術開発室責任者ヤマダ・アラシの日記。

 その内容とは……、




 《三月…日 》


 今日はゴーアルター久し振りの起動である。

 機体性能は理論通りだと言うのに乗り手が見つからなかったんだよね。

 前任は偶然ながらレベル6まで行ったのに肉体が持たなくて死んだ。

 あの辺が漁師達の空間で『逆さまの海域』なんて騒がれたり…。

 何あの色が反転した魚…マジキモい!食えないだろ…。

 あれは超常概念反転砲イマジナリーブレイクと名付けている。


 十年前のあれはプロトタイプだから暴走しょうがなかったよね?

 六年前のダイザンゴウも失敗しちゃったしね。

 要のダイナムドライブが完全に安定化したのが二年前の事だしさ。

 エジソンも言ってた。『失敗が人を成長させる』ってな。

 なので犠牲者の諸君は天才の経験値として胸の中に生き続けるのだ。

 シュウちゃん、タイガちゃん……その他もろもろに黙祷!



 《四月…日》


 結局パイロットの問題を解決しないとイカンのよ。

 ただキレるだけじゃ駄目なんだわね。感情が制御出来なきゃゴミ以下だ。

 天涯のオッサンに急かされて候補を絞ってる大丈夫なのか?

 ちゃんと燃えてくれる正義の心を持った人間でないと!

 でも、あの技は封印しとかないとな。裏切られたら怖い、あれを向けるのは神()だけですからね。笑える笑えない。


 て言うか今のところ平均以下だけどねー。

 操縦者としての腕だけで二人になったがビミョーよ。

 言うこと聞かないしイライラが募るばかりでございます。

 こう比べてみると昔のがロボットにかける情熱を秘めたパイロットが多かった気がするわ、マジで。

 最近の奴は馴れちゃって冷めてる。若者のロボット離れって怖いわー!

 あって当たり前じゃないんだよ。この世界の異常さに気付け!



 《五月…日》


 あのパイロット嫌い!キライキライ機雷ドカーン!

 アイツあぁ言えばこう言うで天才様に反論してくるし、頭カッチカチの職業軍人様がそんな偉いか?

 全然ゴーアルターの力を引き出せてねーのよ、マジでさぁ?!

 上は納得してるけど作った人間からすればダメダメなのよ。

 マニュアル操作なんかで上手くても、そんなんタダのSVと変わらないじゃん!スーパーロボットなんだぜ?


 IDEAL、インターナショナル・ディフェンス・アース・ロイヤリティの目的は地球の守る正義の味方な組織である。

 でも、真の目的はそこじゃあ無いんだっての、そこじゃさ!

 真の目的…神()を降臨させ殺す。フィニッシュヒム、フェイタリティ!

 ちなみに無神論者なのです、このアラシ君…なんじゃそりゃそりゃ。


 

 《六月…日》


 運命の出会いだ!曲がり角トーストだ!赤い有刺鉄線だ!

 まさか本当にロボットアニメの様な事する奴いたんだね?ウケる。

 シンドウアルクとか言う少年…キラキラネーム?

 しかし、ラボの経費が大幅カットはいただけないぜ。織田ちゃん助けて!

 …にしても金髪オペ女と出来てたんか故アイツ。どーでもいいわ!

 それよりも少年だよ少年アルク。意外に素質あるよぉ彼。

 天涯のオジキに思いきしぶん殴られてたわぁ。フードコートでアイスゼンザイ食ってたオッサンにさ。それでも戦うこと決めた少年、偉い!


 少年、話を聞いてみると懐古主義的なオタクボーイだったよ。

 昔のロボットアニメねぇ。80年代のドマイナーOVAとか良いよね。

 ガンダイオーとか銅の鬼とか天王計画とかBIC製のロボアニメ。

 近年の作品には無い熱さがあるよ、熱さがな!



 《七月…日》


 ララライブッ!の日ィ!ぶひぶひ。ぶひぶひ。

 セイルんのライバー=ライブに来ている皆は知らないだろうな。

 最前列ドセンターに居座るこのヤマダアラシ様が虹浦セイルプロデューサーさんであることに…讃えよオタクどもよっ!


 いやぁ、でも見れば見るほどにアイルにソックリなんだよね。

 親子どころか遺伝子レベルでおんなじだものよ?

 何体目だ、って言うかいくつ作ったっけ?

 ほぼほぼ実験で消えたけども…それを元のアイルと同じくアイドルにしようなんて天才的アイデアだと思うぜ。

 元々、ちょっと操縦技術がスゴい自衛官から始まったアイルが超有名なシンガー、女優、タレントの才能を花開かせたのも予想だにしなかった。 

 セイルンには言えないよね、母親がまさかク



 《八月…日》


 今日はゴーアルターの改善点を考える。

 イメージって大事なわけよ、あとやっぱりパワーアップ展開。

 飛行能力はあるけど早く飛ぶって考えると羽が必要なのかねぇ。

 先週のジャンボジェット模造獣や今日のヘリコプター模造獣の団体。

 戦人の二機はガンガン攻めるが…少年の腕の問題もあるっちゃあるしってか、ほぼほぼ少年のせいじゃんっ!


 作るは良いとして、ゴーアルターに付けるユニットならばやっぱりダイナムドライムを搭載型の方がいいな。俗に言うツインドライブって奴!

 心と心が繋がる、絆の力って素晴らしい。

 そんな感じの新装備を現在開発中──と言う名の使い回し──なのだ。

 深紅の翼が空を雄々しく飛ぶ姿…良いね。

 そして少年は驚くだろう、いろんな意味でな。その時は…。



 《九月…日》

 

 襲撃があり、この地下研究所も少し上の階が崩れて掃除中なのだ。

 少年、ゴーアルターが覚醒の片鱗を見せたのは驚き。

 もう少し時間がかかると思ったが、少女の邂逅が力を引き出したか。

 しかも生きている。二人ともだ。

 これが今後にどう影響するかが心配だ。

 早めに消しておくんだったと後悔もしている。


 少女の処遇、一歩間違えば少年が使えなくなるのが問題だ。

 告げるべきか、告げざるべきか。

 しかし、今更元の体に戻るのかな?後で相見に聞こう。

 魂なんて物、目に見えない、実態のない、手に取れない…あるのかね。

 まあ、自分達がやっている事を考えたらあるんでしょ。

 殲滅すべきは宇宙人じゃないのよ、我らIDEALの敵は。



 《十月…日》


 残飯処理みたいなチマチマした戦いしかなくツマラナクなった。

 イミテイター潜伏期間に入りまーす!ってアホか。

 このままでは計画が遅れてしまうよこれ。

 ボクっ娘に問いただしても口を割らねーでやんのっ!

 どうすっかなぁ。どうもすんのもメンドクサイ。


 そう言えば、せっかく二基もダイナムドライム積んでるんだからもっと強力な武装を搭載してもいいよな。

 実質、ビームとロケットパンチだけだしゴーアルターって。

 それでも強いのがウチのゴーアルターなんだけども。

 しかし、肝心の敵は何処なのだ?雑魚は要らないんだよ雑魚は!

 強大な敵あってこそゴーアルターは強くなる。果てしなく。

 そう…敵だ、敵が欲しい。



 《十一月…日》


 ついに嗅ぎ付けてきやがったよアイツら!

 この天才が抜けたから腹いせかよ?腹立たしいったらありゃしない。

 敵欲しいって言ったけども、よりにもよって…最悪。

 何だあの変態仮面野郎はふざけてるのか?ベタベタなんだよ!

 アイツあんなキャラじゃない癖によくやるよ。

 少年を奪うつもりなのか、そーはいかないぞ馬鹿野郎!


 大塹壕は切り札として隠しときたかったのにさ。

 あのデカブツはIDEALに置いとけないし、織田ちゃんに貸しを作ってしまったよ。警備員しっかりやれよな!

 いずれはゴーアルターと合体させたりなんかしちゃったりね。

 夢が広がリングだな。グレート合体ですよ!

 まあ、それっぽいのは作ってるんですけどねぇ。お楽しみに!



 《十二月…日》


 えごいである


 おりじねいたー


 くろがねかいなちゃんとは




挿絵(By みてみん)

「オイ、貴様一体何をしてるんだァ?」

 自室が開けられている事に気付いたヤマダは、自分の机に座る男に声をかけた。しかし、男はそれに意も介さず無視して日記を読み続けている。


「他人の日記を読むなんて感心しないよなァ……? 親にそう教育をされなかったのかい」

 背中に異様なプレッシャーを感じながら、男はすっくと立ち上がった。端整な顔立ち、切れ長の目──右に縦の切り傷──の男は振り返って微笑する。


「特に何も持ってきて無かったからな。月まで意外と長いね、暇潰しをもってくるんだったよ」

 勝手に部屋に入って人の日記を覗き見た事に悪びれる様子も見せず、男は飄々と言ってのけた。


「おい、これから何しに行くと思ってんだよお前はァ」

「もちろんわかっているさ。行き過ぎた正義を執行する悪の守護者達を狩りにいくのさ」

「……貴様も守護者だろがァ!」

「それを言ったら博士も同じ守護者だったでしょうに?」

 ああ言えばこう言う、カリカリして頭を掻き毟るヤマダを余所に男はとても冷静だった。


「いいかァ?! 少年は計画に必要なんだ。何か怪しい動きをしてみろよ……大気圏に落としてやるからなァ?」

「貴方が必要なのはゴーアルターの生け贄でしょう? 私は彼に興味があるんだ。貴方とは違う」

 そう言うと男は上着から白いプラスチック製のアイマスクを取り出す。位置を調整して傷が見えないように気を付けながら慎重に装着した。


「そんな事より作戦に集中しましょうよ。私はこれから歩駆君にチャーハンをご馳走して貰うのだ。それでは……」

 別れを言うその男、冴刃・トールは部屋を出ていった。


「チッ、何かコピーしてったな…………ゲーッ、消えてる!?」

 机のパソコンの電源が入ったままになっている。そして中のデータが完全に消去されていた。

 ちなみに中身はIDEAL内の隠しカメラ映像である。主に、女性職員のだった。


 月到着まで、あと五時間。




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