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7話「異常」

 知性ある骸骨スケルトン・ウィズダムが村で盛大な歓迎を受けていた頃、なんとか逃げれた冒険者は最寄りの村で馬を借りて町へと向かっていた。

 顔を緊張で強張らせながら馬を駆る姿はただことではないと無言に主張していた。

 今まで無言でいた冒険者が口を開いた。


「もう着くか?!」

「ああ!この森を抜けたらすぐララバイの町だ!」


 そう言って数秒。

 薄暗い森から日光がさんさんと青い草を照らす草原へと出た。

 馬の息は荒く、冒険者たちがどれだけ馬を酷使したのかが伺える。


 そして冒険者たちは低めの城壁にある門まで辿り着いた。

 門は開けっ放しにされており、門兵が数人立っている。勿論城壁の上には監視のため何人もの兵士が歩いている。


「止まれ!身分を証明するものを」


 冒険者は門兵の声に馬の手綱を引っ張って止まる。

 そして息の荒い馬から降りて、落ち着かせると門兵へと歩きながら冒険者の証である証明板を取り出した。


「冒険者だ!早く入れ……!」

「冒険者です。依頼から帰ってきました」


 喧嘩腰に怒鳴ろうとした仲間を遮って、冷静な方の冒険者が口を開いた。

 門兵は冒険者の差し出した証明板を拳大ほどの大きさの水晶のような道具で確認すると、よし、と言って道を開けた。

 冒険者たちは馬を引っ張って早足に門を抜けた。






「異常な個体を見つけた」


 冒険者は冒険者の集まる冒険者組合に入るやいなや、真っ直ぐカウンターへと行き、開口一番にそう言った。

 当然受付の女性は怪訝な顔をするが、すぐに冒険者たちの真面目な雰囲気に気付いて姿勢を正す。


「それで、どんな?」

骸骨(スケルトン)だ」

「…………は?」


 異常な個体、と聞いてどんなものが来るかと緊張していた受付女性の顔が驚きとも呆れとも取れる顔になった。

 冒険者はそれくらいは予想していたと言うように続ける。


「その骸骨(スケルトン)は魔法を使った」

「……あぁ、それは骸骨(スケルトン)じゃなくて骸骨魔法使いスケルトン・ウィザードですね。確かに五級向けの場所としては異常と言えるかもしれませんが……」

「知性を持っていてもか?」


 冒険者の言葉に受付女性はピクリとも動かなくなる。

 知性を持っている骸骨(スケルトン)。それは知性ある骸骨スケルトン・ウィズダムと呼ばれ、数十年前にも発見されている。

 数十年前、知性ある骸骨スケルトン・ウィズダムは国を相手に一人で戦い、国に多大な損害を与えたと言う。

 その知性ある骸骨スケルトン・ウィズダムの逸話は様々な形で語り継がれており、知らないものはいないほどまでにこの世界に広まっている。たかが数十年で世界に広がるということから、その知性ある骸骨スケルトン・ウィズダムがどれだけ多大な影響を与えたのかが分かる。

 それを知っているからこそ冒険者は仲間の仇を諦め、受付女性は固まったのだ。

 冒険者が続けて証拠となる骸骨(スケルトン)の特性を伝える。


「やつは墓石の後ろに隠れていた。多分こちらの様子を見ていたんだと思う。それで、そいつの魔力を感じた俺のチームの魔法使いのガーゼが確認しに行ったんだ。そしたら覗いた瞬間にガーゼの腹が剣で貫かれて……」

「……それは……」


 仲間が剣で貫かれたと言った冒険者の面立ちは暗い。受付の女性もその心境を思ってか表情を曇らせる。

 しかし、受付の女性はキリッと顔を引き締めると、固い声で問うた。


「それで、他には?」


 受付の女性も分かっている。この冒険者は四人組だった。今は二人しかいない。つまり話の続きでもう一人の仲間が死んだのだ。

 それを分かっていながら、冒険者が自分から話すのを待つのではなく聞いたのは、話の骸骨(スケルトン)の危険性を知っていたから、聞かなければ更に被害が広がるからと分かっているからである。

 冒険者もそれが分かっているので悲しみを一旦押さえ込んで言葉を紡ぐ。


「その骸骨(スケルトン)はすぐに墓石から出ると剣を構えてこちらを観察してきたんだ。俺らはただの強い骸骨剣士スケルトン・ソードマンだと思って二人は左右に、一人は正面からの三面で倒そうとした。でもそこで骸骨剣士スケルトン・ソードマンが盾を投げたんだ。普通ならありえない行動に正面のあいつは盾を斬り払った。そしたら魔法の火球ファイヤー・ボールを使って斬り払った瞬間に着弾するように放ったんだ」

「つまるところ……本当に知性ある骸骨スケルトン・ウィズダムなんですね」


 冒険者は重々しく頷いた。

 受付の女性は緊張で顔が強張り肩がわずかに震えているように見えた。

 受付の女性は乾いた唇を湿らせ、声を発する。


「分かりました。まずは組合長へ報告して指示を仰ぎます」

「お願いします……」


 この日、知性ある骸骨スケルトン・ウィズダムが生まれて間も無いにも関わらずその存在が知られた。







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