表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/20

3話「最弱」

 知性ある骸骨スケルトン・ウィズダムは今の自分の格好を見た。

 武器も何にも持っていない、己の体のみ。

 しかもその体は他の骸骨(スケルトン)よりも幾分か細い。

 知性ある骸骨スケルトン・ウィズダムは考える。

 もしかすると、単純な身体能力では自分は最底辺なのでは? と。

 しかし、それは知性のない骸骨(スケルトン)通しが殴り合った場合負けるというだけであり、今の知性ある骸骨スケルトン・ウィズダムには知性がある。


(…………)


 知性ある骸骨スケルトン・ウィズダムは少し考え、行動を起こすことにした。

 骸骨(スケルトン)は敵が攻撃してくるまで、もしくは明らかな敵対行動を取るまでは何もしてこない。

 そして知性がないので敵が見つかっても、近づく、殴る、程度しか頭は働かない。

 知性ある骸骨スケルトン・ウィズダムはその習性を利用することにした。

 元は同じであった骸骨(スケルトン)であるがために分かる習性を利用したもの。

 

 罠。


 だが、今の知性ある骸骨スケルトン・ウィズダムでは力もなく、大掛かりなのは作れない。

 しかし、それでいいのだ。片足が足首まで突っ込むくらいの深さでいい。それで骸骨(スケルトン)は盛大にこけてくれるだろう。

 こけたあとは簡単な作業だ。立ち上がってくる前に石か何かで頭を叩き割ればいい。

 もし止めをさせなかった場合は一旦離れて骸骨(スケルトン)の進行上に落とし穴が来るように誘導すればいい。簡単な作業だ。

 

 不思議と知性ある骸骨スケルトン・ウィズダムには同族だったものを殺す(死んでいるから意味が違うと思うが)ことに忌避感を感じなかった。

 それは感情のない骸骨(スケルトン)だった頃の名残か、それとももう骸骨(スケルトン)を同族として見ていないのか。

 なんにせよ無慈悲になれるということはいいことだ。

 知性ある骸骨スケルトン・ウィズダムはそのようなことを考えながら穴を掘る。


 不気味な雰囲気の墓地に地面にしゃがみこみ素手で何かをしている骸骨の姿がそこにはあった。











 念のため、と三つほど穴を掘ったところで知性ある骸骨スケルトン・ウィズダムは立ち上がった。

 周りを見渡せば相変わらず深い霧に包まれ遠くを見渡せない墓地が広がる。

 そこには霧にまぎれてヨタヨタと動く異形の影が複数体。

 よし、と知性ある骸骨スケルトン・ウィズダムは覚悟を決めてそこらへんをうろついている一体に近寄っていった。

 武器を持たず、姿も似ているためか、骸骨(スケルトン)は近づいてくる知性ある骸骨スケルトン・ウィズダムに注意を向けない。

 知性ある骸骨スケルトン・ウィズダムは十mくらいの距離まで近づくと足元にある石ころを手に取り、投げつける。

 カツンと軽い音がして石ころは骸骨(スケルトン)に命中した。

 クルッとまるで痛みを感じていないように……いや実際に痛みなど感じておらず骸骨(スケルトン)知性ある骸骨スケルトン・ウィズダムのほうを向いた。

 知性ある骸骨スケルトン・ウィズダムは手を叩くなどしてこちらへくるように仕向ける。残念ながら手も骨なのでカンカンとあまり良い音はしていないが。

 骸骨(スケルトン)は今のを攻撃とみなしたのか知性ある骸骨スケルトン・ウィズダムのほうへ走ってくる。


(…………!)


 よっしゃ! と知性ある骸骨スケルトン・ウィズダムは心の中でガッツポーズをしながら骸骨(スケルトン)に背を向けて走り出す。

 向かうは己の用意した処刑場(罠のある場所)だ。

 

 知性ある骸骨スケルトン・ウィズダム骸骨(スケルトン)の距離は徐々に狭まっていく。

 

(…………っ!)


 知性ある骸骨スケルトン・ウィズダムは後ろを見ずとも分かる自分の視界によって徐々に迫りくる骸骨(スケルトン)の姿を捉えていた。骸骨(スケルトン)系の魔物は周りの魔素を感知して情報を得ている。よって視界は全方位、三百六十度あるのだ。


 我彼の距離、五m。


 知性ある骸骨スケルトン・ウィズダムは少しばかり焦りだした。

 あ、これが焦る感覚か、などと思うが知性ある骸骨スケルトン・ウィズダムはすぐにそんな考えを飛ばす。

 とにかく今は全力で走らなければ。


 彼我の距離、三m。


 アンデット故に疲れはない。

 しかし、今回はそれが仇となった。

 疲れをしらないということは、相手の足が速ければいずれ追いつかれるということだ。

 知性ある骸骨スケルトン・ウィズダムは若干、やばい……と思いながらも走り続ける。

 そして…………


(…………っ!)


 知性ある骸骨スケルトン・ウィズダムはハードル走のハードルを越えるように飛んだ。

 そして一瞬遅れて後ろから何かが転ぶ音が聞こえる。

 知性ある骸骨スケルトン・ウィズダムは全方位確認できる感覚によりそれが何かをしっかりと認識していた。

 故に、すぐさま急ブレーキをかけて止まり、骸骨(スケルトン)へと走り寄る。

 そして落とし穴の近くにあらかじめ用意しておいた大き目の石を持ち上げる。

 骸骨(スケルトン)は未だ自分に何が起こったのか理解できておらず、モタモタと下を向いている。

 そんな骸骨(スケルトン)知性ある骸骨スケルトン・ウィズダムは無慈悲に手にした石を振り下ろした。

 ガツンッ! と先ほどの投石とは比較にならない音が墓地の空気を揺らした。

 知性ある骸骨スケルトン・ウィズダムはゆっくりと石を持ち上げる。

 下を覗き込み、そこにあった骸骨(スケルトン)は…………頭蓋骨に大きな穴を作って絶命していた。

 

(…………)


 知性ある骸骨スケルトン・ウィズダムに同情などといった感情は浮かんでこない。まだそんな複雑な感情は持っていないだけか、はたまた冷酷なだけか。

 知性ある骸骨スケルトン・ウィズダムは確かに動かないことを確認すると骸骨(スケルトン)の持っていた錆だらけになっているブロードソードを手に取った。

 しかし……


(っ?!)


 ……知性ある骸骨スケルトン・ウィズダムにとってそれはあまりにも重く、持つのが精一杯で振り回すなどもってのほかだった。

 知性ある骸骨スケルトン・ウィズダムは顔をしかめ(筋肉も皮もないので雰囲気だけだが)どうすればこの弱い力を強くできるか考える。

 と、そのとき。


(…………?)


 頭を割った骸骨(スケルトン)のその穴から何かよく分からないものが出ていることに気がついた。

 それは一定の形を持っておらず、まるで水のように同じ型を作らない。

 ふよふよと煙のように昇るそれを知性ある骸骨スケルトン・ウィズダムはなんとなく掴んでみる。

 すると、そのふよふよしたものは知性ある骸骨スケルトン・ウィズダムの掴んだ手から知性ある骸骨スケルトン・ウィズダムの内部へと入っていくではないか。


(…………!!)


 知性ある骸骨スケルトン・ウィズダムは慌ててその気味の悪いものを払うように腕を振るう。

 が、それは既に知性ある骸骨スケルトン・ウィズダムの内部に入ったのか出て行く気配は見せない。

 知性ある骸骨スケルトン・ウィズダムは諦めてそれがなんなのかに思考を変える。

 感覚を遮断し、自分の中へと意識を向ける。


(…………!)


 そのとき知性ある骸骨スケルトン・ウィズダムは理解した。

 自分の中へ入ってきたものがなんなのか。それはどんな役割を果たすのか。

 知性ある骸骨スケルトン・ウィズダムはわずかな興奮を心にともし、それを使う。

 体に力がみなぎってくる。

 知性ある骸骨スケルトン・ウィズダムは遮断していた感覚を再び接続し、戻ってくる。

 そして半ば地面に突き立つようにして握っていたブロードソードを持ち上げる。

 さすがに片手で持てるほどまでは強化されていないが、両手でならかなり楽に持てるようになった。まだ振り回すには足りないようだが……

 

 知性ある骸骨スケルトン・ウィズダムは先ほどのものが何なのかもう一度頭で理解する。


 先ほどのものは『魔力』だ、と。


 骸骨(スケルトン)系の魔物とは人などの骨に魔力が宿って動いているもの。

 故に魔力が多ければ力も強くなるし、頑丈になる。

 つまるところ、骸骨(スケルトン)系の魔力というのは、人間で言う筋肉に等しい。いや、体を作るものと言ったほうだ正しいだろう。

 違いといえば、筋肉は鍛えることができることに対し、魔力は外的要因によってしか得る事ができず、故に鍛えるということが出来ない。

 しかも魔力はまるでゲームのステータスのように大まかに三つに振り分けれる。

 力、頑丈さ、魔力。

 力はそのまんま引き出せる力だ。これが強ければ重い荷物でも持てるようになるだろう。しかし、その重い荷物に耐えれるだけの頑丈さがないと腕が折れてしまうだろう。

 頑丈さはそのまんま頑丈さだ。これに多く魔力を注げばちょっとやそっとじゃ折れない強靭な骨が手に入る。

 最後に魔力は骸骨(スケルトン)の貯めておける魔力の量を増やすことが出来る。

 骸骨(スケルトン)系にとって魔力とは二種類ある。

 魔法や特殊能力を使う際に使う『魔力』。自身を強化するために使う『魔力』

 今回言っている魔力は前者の方だ。

 骸骨(スケルトン)系の魔物に限らず全ての生物は空気中にある魔素を吸収している。まるで呼吸と同じように。

 まあ、ようするに最大MPのようなものだ。


 このような感じになっており、普通の知性のない骸骨(スケルトン)ならば本能のままに均等に割り振っている。

 しかし、知性ある骸骨スケルトン・ウィズダムは違う。

 知性ある骸骨スケルトン・ウィズダムは知性がある。

 故に魔法が使えない今は必要のない魔力に入る分だったものを力と頑丈さに割り振ることが出来る。

 

(…………)


 知性ある骸骨スケルトン・ウィズダムはブロードソードを傍らに置いて新たな獲物を探しに走り出した。






















評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ