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12話「町」

 一通り説明し終えたスケルは村人たちに謝られた。なんでも四つ又の狐人は災いを呼ぶと言われているそうだ。そして多分町でも迫害を受けるだろうとも教えてもらった。

 どうしたものか、とスケルが考えていると、村人たちがお礼にと服などを手渡した。

 スケルには大きなリュックサックのような背負いカバン。アインには羽織るタイプのローブを。

 スケルはこれを受け取ると倒した猪の肉を切り分けていた村人に言って数日分の肉をもらった。

 しかし、あのでかさの猪だ。その程度じゃまだまだ余っている。

 それをスケルは村にやる、と言って村を後にした。

 村から感謝の言葉を投げかけられながらスケルたちは街道を進んでいく。








 街道を歩くこと数日。

 昼はアインの体力に合わせて歩き、夜は背中にアインを背負い、前に背負いカバンをかけて歩いていたら想定より早く着いた。

 道中はもらった猪の肉を食い、何故か一緒に食べないスケルをアインは問い詰めたりしたが、これといった問題は皆無だった。

 そして二人はとうとうサーラの町へと着いたのだった。


「ふぁー! おっきーね!」


 アインは近くで見る大きな城壁にテンションマックスだ。

 スケルはそんなものよりも城の入り口や、警備兵を警戒している。

 手を繋いでないと走り出しそうなアインの手をしっかりと握りスケルは入り口と思わしきところへ歩を進める。


 縦八m、横十mはあろうかという大きさの城門、の横にある小さな門へ行ったスケルたちは検問を受けていた。

 門兵の顔は険しい。

 まあ全身をローブやらなんやらで隠して肌を一ミリも見せないやつを怪しむなというほうがおかしいが。

 身分証の提示を求められたが、当然そんなものないスケルたちは、門兵にある部屋へ通され詰問されていた。


「ではまず、お前たちはどこからきてここに何しに来たんだ?」


(答えよう。私は旅人だ。生まれは分からない。途中で記憶をなくしたためだ。そしてこちらは途中で拾った子供だ。襲われていたから助けた)


 門兵の問いにスケルは虚実混じえて答えた。

 しかし、それは聞かれているのか怪しい。門兵が口をあんぐりと開けて固まっているからだ。

 しばしの沈黙の後、門兵が慌てたように声を発した。


「い、今のは二位魔法の精神感応(テレパシー)でしょうか? !」


 やや興奮気味の門兵にスケルは全く動じずに答える。


(そうだ)


 完全に知ったかである。

 だが、前も同じようなことを言われたので自信を持って言えたのだ。

 門兵はより興奮して詰め寄ろうとするが、


「おい、ちゃんと仕事しろ」


 後ろから現れた上官らしき門兵の声によって冷水を浴びさせられたかのように動きが止まった。

 興奮していた門兵はいつの間にか乗り出していた体を元に戻すと真面目な、しかしどことなくうずうずしたような顔でスケルと対峙する。

 真面目になった門兵は後ろに上官らしき門兵がいるまま詰問を再開した。


「ごほん、では次の質問をする。お前たちは今まで犯罪を犯したことがないか?」


(…………ないな)


「そちらの子供は?」

「なーい!」


 質問に対し、スケルはしばし考えた後ないと答えた。次に聞かれたアインは当然のごとくないと答える。

 それを聞くと門兵は一つ頷いて懐からあるものを取り出した。


「これはそいつが本当のことを言っているかを見定める魔法具だ。今から先ほどのことが本当かどうか確かめるために一人ずつこれを握ってもらう」


 それは棒だった。

 長さ三十cm、太さ直径五cm。ちょっと加工すればすぐにでも出来そうな棒だ。

 しかしスケルには分かった。その棒には何かしらの力が込められていることを。

 門兵がそれをこちらの目の前に置く。

 机の上に置かれたそれをスケルはジッと見つめ、確認のため門兵を見る。

 門兵はコクリと頷き、


「ああ、それを握ればいい」


 そう言って口を閉ざした。

 スケルは言われた通り棒の真ん中あたりを握る。

 しばし待つと、ぽわーん、と発光しだした。

 それは淡い水色をしており、暗闇で見ればとめも美しかっただろう色だ。

 これをどうすればいいのか、とスケルは門兵を見ると、


「よし、いいぞ。そっちの子に渡せ」


 そう言われたのでアインへと手渡す。

 アインはその小さな両手で包み込むようにギュッと握る。


「むむむ〜」


 別に唸らなくてもいいのだが、何故か唸るアイン。門兵は微笑ましいものを見るように目を細めたが、後ろに上官がいることを思い出したのかすぐにキリッとした顔になった。

 そしてだんだんと灯る光。

 その色は…………水色。

 光が灯ったことに、すおい! すおいねー! とはしゃぐアインを宥めながら、スケルは門兵の答えを待つ。

 門兵はスケルたちに渡した魔法具の色を確認し終えると、ふっ、と表情を緩めて言った。


「よし、本当のことのようだな。では、まあ怪しいけど仮の身分証を発行する。銀貨一枚が必要だ」


 スケルは言われた通りに今まで殺したやつらから奪った金の中で銀色の硬貨を取り出す。

 が、門兵は首を横に振る。


「あー、大銀貨じゃなくていいぞ。小遣いとしてならありがたくもらうがイテッ!」


 ちょっと調子に乗った門兵はへへへ、と嫌らしい顔でそう言ったら上官に殴られて涙目になった。

 上官は大丈夫そうだと思ったのか軽く息を吐き部屋を出て行った。

 そしてスケルは改めて小さい方の銀貨を取り出し渡すと、しばらく待ってくれ、と言われて門兵も出て行った。

 言われた通りしばらくすると、門兵が戻ってきて縦十cm、横五cmほどのカードを二枚スケルに手渡した。


「それが二人分の身分証だ。だが、それはあくまで仮だからな。期限は十日だ。延長してこの町にいるならばまたここに来い。その時は今回の半分の大銅貨五枚でまた十日延ばしてやる。期限が切れたところを憲兵に見つかると大銀貨一枚も罰金だからな。気を付けろよ。まあお勧めはここで身分証を作っちまうことだな。…………お前みたいなやつは大抵冒険者組合に登録するな。金が多少いるが、まあ借金みたいのも出来るらしいしいいだろう。あーっと、もう伝えることはないな。よし! ようこそ、サーラの町へ!」


 長々と説明した門兵は、伝えることを全て伝え終えると定型文らしきものを言って退出して行った。多分出て行ってもいいよってことだろう。

 スケルはそうして町へと入ることが出来た。

 ふとスケルは、


 ……ん? 別にアインがいなくても入れたんじゃないか? 


 と思ったが、すぐにその考えは消した。いない方が良かったと考えたくなかったからだ。


 ちなみに何故人殺しが犯罪と認識されなかったかについてだが、あの魔法具は嘘発見器のようなものだ。

 よって知らないものを知らないと言っても嘘にはならない。つまりはそういうことだ。








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