1話「昔話」
何かを得るということ。
すなわち、何かを失うということ。
何かを失うということ。
すなわち、何かを得るということ。
昔、人間になりたいと夢見る骸骨がいた。
突然変異か、はたまた神の悪戯か。
骸骨は知性を持っていた。
そいつはスケルトンだとばれないように全身を衣服で覆った。
やがて骸骨は知った。
――強くなれば人間になれる、と。
骸骨は強くなった。
人間の中でも最高峰の強さを手に入れた。
だが、
人間にはなれなかった。
強さを手に入れた。
進化をした。
外見も骸骨とは思えないくらい綺麗に、美しくなった。
そう、
骸骨はそれを手に入れてしまったのだ。
知性を得た代わりに力は最弱になっていた。
強くなるために他の生き物の命を奪った。
お金を払うことで装備を整えた。
そう、まだ骸骨は、
人間になるために何も失っていない。
いつしか骸骨は知った。
――人間になるためには百万の人間の魂が必要だ、と。
骸骨はどうしても人間になりたかった。
故にその強大な力で国に攻め入った。
骸骨魔法使いになった頃より鍛え上げてきた魔法を使い、
骸骨剣士の頃より鍛えてきた剣術を使い、
――負けた。
死を超越せし者になってもやはり数には勝てなかった。
こうして夢見た骸骨は夢半ばにこの世を去った。
そしてそんなことがあってから数十年のときが経った。
ある日、ある時間、歩いていた骸骨は、
知性を得た。