気付き
真白はその後も同じように私を笑わせようと奮闘していたが、2度目の席替えをして席が離れてからは、少し縁遠くなっていた。
普通のクラスメイト。会えば挨拶をするし、たまに短い会話もする。
ただ、あんなに関わっていたのはやっぱり席のお陰なんだと、離れてから知った。
真白は面白い。みんなの人気者。
好きなわけではない、と思う。今までの好きの感情と、真白に対しての感情は程遠い。
今までの恋には、軽やかな音楽と、明るい暖色がよく似合っていた。
真白に対する感情は、音楽をつけるとするならバラードで、色を付けるとするなら、満点の星空のように、暗闇に輝くいくつもの白い光。
なんだか、とても大切なものだったから。触れるのが怖くて、そのまま放っておいた。
放っておくうちに、5年生になって。
真白とは、クラスが離れてしまった。
真白のいないクラスは、想像していたよりガランとしていて。
心にぽっかり穴が空いたように、スースーと涼しい風が吹く。
真白と同じクラスになった友達によく話を聞いては、モヤモヤとした黒い気持ちでいっぱいになって。
そのくせ口では、何の関心もないように相槌をうった。
もしかしたら、好きなのかもしれない。そう思ったこともある。
でもだからって、どうすることもできなかったのだ。
私は臆病で。いつでも受け身になってチャンスを待ち受けて、自分からは行動できない。
真白が好きだと、友達に言ったら?
バカにされるかもしれない。そこから何かが起こるかもしれない。今の平穏が崩れるかもしれない。
真白に好きだと言ったら?
どんな顔をするだろうか。
困るだろうか。喜ぶだろうか。
どうであろうと、私に気持ちを伝えるという選択肢はなかった。