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5話 魔王は僧侶で遊ぶ

 どうするかな…非常に面倒の臭い事になってきた。

 自室に戻り溜め息を吐く。

 アンジェリカに聞いた話は、面倒くさいの一言に尽きる内容だったのだ。


 まず、俺達がこの街に足止めを喰らった理由だが。非常に下らない事だった…

 魔王討伐の報が知れ渡った王国内で、一部の貴族共によるクーデター未遂事件が起こったのだ。

 傍迷惑な話だが、ソイツ等はディアナを傀儡として新王に祭り上げようと企て。王位継承権第一位の王子まさを暗殺しようとしたらしい。馬鹿な奴らだ…

 その貴族共とディアナとの接触を恐れた現王は、俺達を他国…この場合は帝国に足止めをさせることにしたらしい。まぁ、俺達が入って行けばかなり面倒なことになったやも知れないな。だが、まぁ、俺は完璧に逬りである。

 で、俺達の護衛をしている騎士様達だが、万が一にもディアナと貴族グループとの接触を防ぐ任務に派遣されたのだとか。俺達にはそんなこと一言も言われてはいない、それについて隊長様は…


『表向きには護衛でしたので』と、言うだけだった。コイツ…


 まぁ、このことに関しては王国の内情とディアナの立場を再確認する事が出来た。非常に有益な情報といえるだろう。今後の身の振り方と言うか、立ち回り方を考えねばならん。

 因みに、アンジェリカが書く様に言われた報告書には、俺の話した魔王討伐の報告と、貴族共と俺達との接触の有無を調査するものだったらしい。どうでもいいけどな…


 次に、リュウジ率いる《最強のパーティー》が帝国にやって来た理由だ。なにも、貴族共と関わって居るかどうかの調査だけなら、勇者パーティーが来なくてもいいのだ。

 彼等が帝国に派遣された一番大きな理由は、魔王死亡により、今まで魔王に付き従っていた魔族共の動きが活発化したことに由来する…その対応を迫られた連合軍は人間側領土の四方に現在動ける勇者パーティーを守護として派遣したのだとか。

 そして、人間側領土北側の守護を任されたのがリュウジのパーティーだったらしい。難儀なことだな。


 とりあえず、俺は魔族の活発化についてアイツに聞かねばならん。


「おい、魔王…居るんだろ出てこいよ」


『…なんだ、半身。

 我は結構忙しいのだぞ?』


 ベッドの上に寝転がって現れた魔王の思念体を俺は睨まずにはいられなかった。


「おい、お前の配下である魔族共の動きが活発化してるらしい…どういうことだ?」


 俺の言葉を聞くと、仮面の魔王は深々と息を吐いた後、心底面倒くさそうに話しだした。


『ああ、してるな…一部の有力魔族共が調子に乗って来ているようだ。

 我も面倒な事だと思っている所だよ…どうにかならんかね?』


「ひと事だな。お前の配下だろ?」


 魔王は両手を上げ、首を左右に振ってみせる。

 そしてダラダラと話しだした。


『まぁ、そうなのだが…面倒だが説明をせねばならんようだな…』


 そういって立ち上がると魔王は掌に魔力を溜め、髑髏の模様の刻まれた悪趣味な『卓』を呼び出した。

 このような家具が魔王城には幾つもあった様に思える…魔王の趣味か?


『いや、コレは配下の趣味でな…我も悪趣味だと思うが、貰い物だし無下に出来んのだ…

 どこか買い取ってくれる所は無いかのぉ…』


 俺の顔を見て魔王はそう呟いた。

 そうか配下の趣味か…ソレを大事にしている辺り、魔王は面倒見が良いのかもしれない。まぁ、どうでもいいけどな…

 つーか、コイツ、何をする気なんだ?


 訝しむ様な視線を向けていると、魔王は俺を卓に近付く様に手招きし、卓上にまた何かを呼び出した。

 卓の上を覗き込むと、なにやら広げられた地図が一枚と、チェスの駒の様な物だ13個置かれていた。そして、地図には見覚えがあった。


「魔大陸の地図か、一部、北方大陸や南方大陸、人間側の領土も含まれているが…」


『まぁ、そうだな』


 それだけ答えると、魔王は駒をそれぞれバラバラに地図上へと並べだした。12の駒を並べ終えると、最後に大きな駒を魔王城のある辺りに立てた。そして、ソレを指差しながら喋り出す。


『コレは我じゃな。そして他の駒が魔大陸を治めるている最も力の強い魔族共を差す。そして、その中でも…』


 魔王は唐突に、地図上に置かれた駒を3つ電撃の魔法で破壊する。

 辺りに焦げ臭い臭いが立ち込めた…

 そして破壊された駒の置かれていた位地を見て、そこが何があった場所なのか理解できた。

 その場所は以前、人間と魔族とで大きな戦いのあった周辺だ。


『今、壊したのは貴様等が殺した有力魔族共だ。

 貴様も知っている通り、魔族とは闘争を好む生き物でな。

 3つも縄張りが空いて、さらに我が勇者と相打ちになったと知れ渡れば…

 魔大は現在、群雄割拠の戦国時代じゃよ。本当に面倒な話よな…』


 両手を上げて、首を左右に振る魔王の姿に俺は呆れと言うモノを感じていた。

 それにしても、まさか、魔族側も魔王と勇者が相打ちになったと思っているのか?

 それについて聞くと…


『魔族なんてものを信用する馬鹿な真似を、魔王である我がすると思うか?

 魔族の中には人間と裏で取引しとる者もおるしな…

 だから我は事の真相を腹心にしか教えとらんよ。まぁ、一部には漏れたやもしれんが…

 後、我は自分が相打ちになった事にしておけば、いろいろ都合が良いのだ解るだろ?』


 肩を振るわせて俺を見る魔王…

 殴りたくなる衝動を抑えつつ、俺は魔王に聞いた。


「つーことは、各地で活発化している魔族共は、その魔大陸での群雄割拠が原因か?」


『まぁ、要因の1つだと考えてくれ。

 その戦火によって住む場所を奪われた魔族が人間側に押し寄せてるのもあるし、力ある魔族が人間側の領地を奪いに来ているのもある。まぁ、いろいろだ…

 もう1つの要因は、勇者との戦いで我の力が弱まり、封印していた魔族共が復活したりもしているが…この近くで魔族共の動きが激しいのは、こっちが要因かの?』


 おい、待て…


「封印していた魔族って…なんの事だ?」


 顔が引き攣るのを俺は隠せていただろうか?

 俺は普段から、本当の感情が表に出ない様に勤めているのだが…

 魔王の話に頭が痛くなって来る…


『ああ、我が神の座を追放され魔王になった時に、地上に居た魔族の中で我に付き従わなかった者達のことだな…アイツ等は総じて強く、殺すに惜しかった者共は封印したのだが。今頃は、我の魔力が弱まり封印が解けている頃合いだろうな。

 この近くでは、白い悪魔…かの? あいつに会うのも久しいのう…

 ん? どうした半身? いつにも増してコワい顔をしておるぞ?』


 そんなコワい顔をしているのだろうか?

 しているのだろうな…

 ぶっちゃけた話、大昔に魔王が封印した魔族が幾ら復活しようが知った事では無い、魔大陸で群雄割拠なのもどうでもいい、俺の知らない所で人間側に被害が出てたとしても『知るか』の一言で済む。しかし、な…目の前でソイツ…封印が解かれた魔族に現れられると、今の俺の立場的に戦わなければならないという面倒なことになる。

 そして、先程から肩を振るわせて笑いを堪えている魔王も気に喰わない。

 コイツ…俺が困るのを知っていて黙っていたな…

 俺が睨むと、魔王は両手を上げて卓を闇に消した。

 そして…


『ああ、言い忘れておったが、そろそろ来るぞ?

 白い悪魔の軍勢は直ぐソコまで迫っておる…この街の近くじゃよ…

 せいぜい、我を楽しませる事の出来る様、頑張ってくれよ? 半身?』


 そう、言い残し魔王は姿を消した。

 まだ、いろいろと聞きたい事はあったのだが…次の機会だな…

 それにしても面倒くさいな。

 神話に出て来る化け物の軍勢だと?

 馬鹿げているだろう、普通。

 それも、ここは帝都だぞ?

 王国程では無いにしろ、帝国は人間側二番目の大国…そう、易々と帝都まで攻め込まれる訳が…


 ガン!!!…


 窓側から大きな音が聞こえた。なんだ?…屋根の上の雪でも落ちたのだろうか?

 ふと、吹雪が吹き付ける窓に視線を向けると…


『ギギギ…』


 顔から胸までが女、その他は鳥の化け物…《ハルピュイア》が窓に張り付いてこちらを見ていた。


 

 

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