もはや真実は闇の中
被疑者死亡につき、書類送検を行う。
報告書には短くそう書いた。
俺は細く長いため息を、空気中へと、ブルーな気分ごとはき出した。
容疑者の家に、突入した時には、すでに自らの手で首を包丁で切ったあとだった。
殺人の容疑で、この手で逮捕をしたかったが、今や検視台の上に寝転がっている。
同僚たちからは、残念だったなと声をかけてもらったが、俺が追っていたでかい山をものにできなくて悔しい。
「まだいたのか」
その時、上司がやってきた。
「部長、報告書を書いていたところです」
「泣きながらか」
上司は俺にいう。
知らない間に涙が溢れていたようだ。
「犯人をこの手で捕まえたかったんですが…」
「お前は成長するさ。その悔しさを忘れなければな」
それから上司が飲みにいかないかと誘ってきたので、俺はお供させてもらうことにした。
報告書は明日提出することにして、机の中にしまい、鍵をかけて、部屋を出た。