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創造神はじめました  作者: とくたまひなむや
第一章 【石器編】
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町造り

 最初に案内されたのは、集落のはずれにある簡素な柵だった。集落をぐるっと取り囲むように建てられた、木を大きく格子状に組んだ柵だ。高さは2メートル程、格子といっても僕が簡単に通り抜けられる程の間があいている。そして外側には、先を尖らせた木が斜めに飛び出ていた。これは地面に対して垂直に立つ格子状の柵を支えると共に、恐竜の侵入を防ぐ為のものだろう。


 多分、恐竜の突進には耐えられそうも無いが、奴らも命ある生き物だ。わざわざ怪我すると分かっていて、尖った木に突っ込んで来るはずは無い。この程度の柵でも槍や弓といった武器を駆使すれば、十分恐竜を出来たのだろう。


 「神様。大変です。何か悪い予感がします。もっと強固な守りを創るべきではないでしょうか?」


 突然頭を押さえ、真剣な表情で訴えるラビ。何事かと思い、傍にいた獣人に尋ねると。神官であるラビ種は時折このような予言を行うというのだった。今まであった予言はどれも的中させており、とても大切な事だそうだ。


 「分かった。それなら、新しい柵を創ろう」


 僕がそういうと、後ろで歓声が上がるのだった。神の国の誕生とか神の加護とか、思い思いの言葉を発する獣人達。なんだか僕は、担がれているような気がしてならないが、多分大丈夫だろう。集落を守る為の柵であれば悪用される事も無いはずた。そう考えたのだった。


 今ある簡素な柵は、今現在のすべての住居を取り囲む最低限の広さのものだ。これから人口が増えてくると、柵の外にまで住居を立てなければならなくなる。それでは守る為の柵ではなくなってしまう。柵の外に溢れ出た住人は危険にさらされてしまう。


 もっと外側に、広範囲の空間をきっちり取り囲む柵が必要だ。それももっと強固な。流石に石の壁はオーバースペックかもしれない。地震とかが起きたら崩れて危ないかもしれないし。


 やっぱり木の柵が妥当か。いざとなったら建築資材にもなるかもしれないし。


 現在あるような高さ2メートルの腕程の太さの木を格子状に組み合わせて、地面に挿した柵を思い浮かべる。これだと、横1メートル辺り信仰ポイントを1ポイント消費して創る事が出来るようだ。


 広範囲を囲むように創らなければならない為、結構消費ポイントは馬鹿にならない。しかも、もっと強固なものが必要なのだ。


 試しに中世ヨーロッパの城のような、長方形の石を積み上げて作られた頑丈そうな壁を思い浮かべてみた。レンガの壁だ。耐久性は木より遥かに高い。だがこれだと高さ2メートルで横1メートル辺り、50ポイント。


 駄目だ。これだと集落を広く取り囲むことは出来ても、他に何も出来なくなりそうだ。人口を増やす為のポイントが残らない。


 消費ポイントが木と石で随分と格差がある。これは、文明や僕の能力に関係しているのだ。文明が発展するとそれは貢献ポイントとして、僕の能力に反映される。貢献ポイントが一定量貯まると、僕に出来る事が増える。


 石器が主流の僕らが石を切り出して壁を築くのは至難の業だ。これらの事象は、文明や発明、貢献ポイントによる僕の能力との関連性を示唆しているのだ。貢献ポイントをもっと稼いで僕の能力が凄くなると、石の壁ももっと安いポイントで創れるはずだ。


 やはり現段階では、木の壁にしておこうか。隙間なく並べられた丸木の壁ならば、耐久性も期待出来る。そして二階建てにして、二階部分に窓をつける。有事にはここから攻撃をするためだ。勿論、一階部分は強固な門が一カ所ある以外は完全な壁だ。


 ゲームとかに出てくる要塞をイメージすると考えが捗る。他にも色々な考えを思いつくのだった。


 やがて僕は、太ももぐらいある丸木を地面に垂直に立て、それを縦向きに隙間無く並べた木の壁を考えたのだった。高さは二階建てのアパートぐらいある。勿論木の壁の内側には二階も存在し、二階各所には小さなのぞき窓とやぐらを備えてある。そして一ヵ所しかない一階の出入り口の上にはひときわ大きな櫓を置くことにした。そこには大きな窓を取り付けてあり、門の外にアルテカの民が訪れた時に、やりとりが出来るように。


 出入り口はスライド式の丸木の門にした。普段は一人が通り抜けるのが精一杯の隙間だけ開けて置くことにしよう。いざというときにすぐに閉められる。


 これなら1メートル辺り、10ポイントで創れるようだ。所々建てられている櫓は別途5ポイント。ちなみに櫓は、壁から飛び出ていて、下方向にも窓が空いてある。ここから物を落として、下方へも攻撃可能だ。


 10メートル間隔で櫓を設けると、105ポイント使う。今の集落をだいぶゆとりを持って取り囲んでみると、1785ポイントで出来るようだ。ええっと、逆に考えてみると壁の長さは170メートルか。小さな集落だけど、意外とポイントを消費するんだな。


 2270-1785で残りの信仰ポイントは485ポイント。これは流石にポイントの使いすぎな気がしてきた。


 隣では、不安そうにこちらを見る獣人達。きっと彼らは今まで多くの危険に晒されてきたに違いない。この守りはポイント的に安いものではないが、これで安全を買えるのであればけっして高い買い物では無いのかもしれない。


 木の壁と言っても、補修を繰り返せば数十年は持つはずだし。それに信仰ポイントは勝手に増えていくだろう、安全な暮らしを提供してやれば人口も自然と増えていくはずだ。僕は、木の壁を創る事を決意した。


 僕の頭の中で信仰ポイントが消費されると同時に、地面からにょきにょきと木で出来た壁が生えてきた。壁上の部分には斜め向きの屋根も付いていてちょっとした要塞のようだ。外からは簡単に攻撃できず、こちらからは自由に弓や石による攻撃が出来るだろう。これなら野生動物はおろか、アルテカ王国でも太刀打ちできない。勿論、彼らと争うつもりは無い、これは備えというやつだ。


 壁が現れると、獣人達から驚きの声が上がるのだった。無理もない、僕ですらちょっと驚いたのだし。でも少し気がかりな事があった。こんなにポイントを使って良かったのかどうか。まあ、今となってはもう遅いのだけど。


 「流石は神様です。素晴らしいお力です。これで皆も安心して暮らせるでしょう」


 ラビが大喜びしている。彼女は骸骨の飾りのついた杖を振りかざし踊っているのだった。それに合わせて獣人達が、僕のほうを向いて拝んでいる。なんか、こんなにされると照れくさい気がする。


 「ささ、神様。おなかが空いたのではありませんか?お食事のご用意を」


 後ろを付いてきていたジャガーの獣人が、僕の手を引き集落の中心部へと引っ張っていく。広めに壁を創った為、中心部に建てられた住居は少し遠い。これは、人口が増えてきた時に空いた場所に住居を新しく建てられるようにと配慮した為だ。


 中心部に神殿と言われる、丸木を使って建てられたログハウスが一軒ある。これはラビといった地位の高い神官の住む家だ。二部屋しかなく、狭いが彼らにしてみれば高級住宅らしい。


 それ以外の獣人は、木を骨組みにして建てられたドーム状の小さな家に住んでいる。ドーム状の家は、骨組みに毛皮を張って形成してあった。この家はとても簡素な造りで、我々の世界でいうキャンプに使われるテントのようなものだ。一軒当たり、4~5人が横になったら一杯の狭い作りとなっている。


 この手の家はどのくらいの信仰ポイントで創れるか考えてみると、ドーム一軒で5ポイント。ログハウスは15ポイントで創れるようだ。まあ、住居は今のところ必要無いし、必要になったら彼ら自身の手で作ればいいだろう。


 「神様、神様、見てください。祈りをささげる為の場所です」


 ラビは僕の服を引っ張り、神殿の方向を指さすのだった。そこには、木を交差させて組み上げられた、長方形の建造物がある。前後の幅1メートル、高さ2メートル、よくあるキャンプファイヤーだ。


 僕が彼らに火を使う事を教えた為に、火は神の力の象徴らしい。また、獣人達は埋葬といった概念も持っていた。これは僕が作物を植える事を教えた事を起源としているようだ。作物が実るように、死んだ者も再び生まれ出るという考えだそうだ。


 キャンプファイヤーを指さして、誇らしげな表情を見せるラビ。


 「あれに火を点けて、皆で拝みます。生贄を投げ入れると、神様がなお喜ばれます」


 奇妙な事を言うラビだった。神様とは勿論僕をおいて他ならない。僕はそんな、生贄なんて望んでいないのだけど……。

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