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たつはる:丁さん、いる?(22:10)
丁:いますよ。こんばんは(22:11)
たつはる:こんばんは。この前の小説、よかったよー(22:11)
丁:本当ですか? ありがとうございます(22:11)
たつはる:いじめの部分の描写が、妙に生々しかったけど苦笑(22:11)
丁:実体験をもとに書いたら、つい……(22:12)
たつはる:そっかあ……(22:13)
丁:なんか重くなっちゃいましたね、すみません苦笑(22:13)
たつはる:丁さんがおれの家の近くに住んでたら、すぐ駆けつけるのにな(22:14)
丁:僕、女ですよ? 僕とか言ってますけど(22:15)
たつはる:女だってことは知ってるよ。ブログ読んでるし(22:15)
丁:それに、かわいくないです。すごくブスです。ごめんなさい(22:15)
たつはる:なんで謝るの? おれは、顔とか気にしないよ(22:16)
丁:すみません、謝るのが癖になってて(22:16)
たつはる:また謝ってるー。顔のこと言うならおれだってさ、――――
「うっ……」
身体の痛さと寒さで、尊は目を覚ました。何故か、外で眠っていたらしい。身体の痛みに顔をしかめつつも、尊は身体を起こし、あたりを見渡した。
「――……?」
自分が眠っていた場所に、違和感を覚える。尊の記憶だと、学校にいたはずだ。だが、今の自分の所在地は、どこからどう見ても駅だった。――男性と学生が喧嘩し、男性の首が折れたはずの、駅。
だがそこには血痕もなにもなく、いつも通りの騒がしい駅だった。赤い夕陽の目立つ空。時刻を確認すると、夕方の四時過ぎだった。――六時間近く、ここで眠っていたということになる。
「どうなってんだ……?」
自分の服装を確認してみたが、やはりいつも通りの制服姿で、そこにも血は付いていなかった。
尊の記憶では、この駅で電車を待っている時、『悲惨な現場』を目撃した。その後も次々と怪奇現象のようなものが起き、自分の制服は血まみれになり、着替えたと思ったら学校に移動させられた。そこで、妹弟と如月が、そして事の発端となった少女が、――死んだはずだ。
だが、周りの状況を見る限り、そういった事件は一切起きていないようだった。
「どういうことだ? ……俺、夢でも見てたのか?」
「夢じゃないですよ」
聞き覚えのある声に、尊はどきりとした。振り仰ぐとそこには、
「――おかえりなさい。尊さん」
フード付きの黒いコートに、紺色のジーパン姿の、如月が立っていた。
「如月――!?」
「……幽霊を見るような顔、するんですね」
如月は声を殺して笑うと、尊の隣に腰掛けた。尊は抱きしめたい気持ちをこらえ、如月に笑いかける。
「悪い。てっきり、死んじまったのかと思ってたんだ」
尊の言葉を聞いた如月は、微笑んだ。ちょうどその時、二人の後ろを歩いていた女子高生たちが、
「あのハゲ、まじでキモいよね。【死ねばいいのに】」
そう言っているのを聞いて、尊は反応した。あたりを見渡すが、誰かが死んだ気配はない。そんな尊の様子を見ていた如月は、今度こそ声を出して笑った。
「安心してください。あなたはもう、元の世界に戻ってきていますから。ああ、向こうの世界で亡くなった家族の方々も、こっちの世界では無事ですよ? 秀くんも麻衣さんも、今頃家でゆっくりしてるでしょうね」
くつくつと笑う如月に、尊は違和感を覚えた。
この子は、こんなに笑う子だっただろうか。
如月はひとしきり笑うと、目尻にたまった涙を拭いながら、言った。
「丁さんの正体、思い出しました?」
「あ、ああ」
尊は思い出す。屋上で見た、彼女の姿を。彼女の最期の、言葉を。
「……この世界を作ったのは僕じゃないって、言ってたんだ。あいつ」
「――そりゃあ、そうでしょうね」
「え?」
尊は如月の顔を見て、凝り固まった。
彼女の顔は、今までにないくらいに微笑み、そして歪んでいた。
「……丁さんは、他になんて言ってました?」
「…………」
「なんて言ってました?」
感情がこもりすぎて、逆に平坦になった声で、如月は尋ねる。尊は、如月から目を放せない。
「なんて言ってました?」
「――……『尊のせいで、丁は死ぬ』って」
「へえ」
如月の笑い声が、どんどん大きくなる。尊はその様子を、呆然と眺めていた。
「それで? 丁さんにそう言われて、何か思い出しました?」
「…………いや、何も」
「――ははっ。人を殺したくせに、本当に何も覚えてないんだね」
如月のセリフと顔に、尊の背筋が凍りついた。如月の顔は、人間の悪意を全て表したような笑顔で、歪んでいた。
「――如月。お前……?」
「まだ気付いてないんだね。東郷尊」
冷たい風が、如月の短い髪を揺らす。
如月の冷たい視線が、言葉が、尊の心を揺らした。
「あの血まみれの世界を作り出したのは『丁』ではなく、――『たつはる』なんだよ」
彼女は、――いや、
「そして、たつはるの本名は、如月由梨。――……つまり、『おれ』なんだよ」
如月『少年』は、どこまでも冷たく、笑った。




