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我々は簡単に、その言葉を使う。
少年は、耳を傾けた。次々と聞こえてくる、その単語。
「お前馬鹿じゃねえの? 死ねよ」
「あいつ腹立つ。死ねばいいのに」
「はあ? 殺すぞお前」
「馬鹿なの? 死ぬの?」
「死にたい。死んじゃいたい」
「死にたいんなら死ねば?」
「死ね」
「――……ははっ」
少年は、笑う。
誰も、知らない。何も、知らない。
だからそうやって、何の躊躇いもなくその言葉を口にする。
「だったら、君たちの望み通りにしてあげるよ」
――さあ、楽しい世界のはじまりだ。