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蒼の想い

何この人、確かにカッコイイよ、髪型も変だけど変じゃない(矛盾)、何も飾らないでサラッと私の喜ぶ事を言う、何コレ、不思議な感覚、ハヤさんの事もっと知りたい。

食事が終わると何故かカイがマミコとツバサを連れて自分の部屋に行っちゃった、私は一人取り残されて洗い物をしてる、正確には一人じゃないな。

キッチンからリビングが見れるようになってる、そこからハヤさんが除き込んでくる、直視出来ないよ。


「な、何ですか?」

「手が荒れるでしょ?」

「大丈夫です、ホラ、もう終わりました」


丁度終って布巾で手を拭いてエプロンをとった、キッチンから出ようとするとハヤさんが私の目の前に立って、そのまま私の手を掴む、何!何なのこの展開!


「ホラ、こんなに荒れてる、女の子なんだから手は気を付けないと」

「は、はい」


顔が熱い、ユキ君に頭を撫でられた時よりも心臓がうるさい、でも分かる、この人何も考えずにこういう事すしてる。


「ハヤさんは手が綺麗ですね」

「まぁね………」


ハヤさんは急に私の頭を触ってきた、髪を確かめるように撫でてる、何でだろう、凄く落ち着く、これだけで安心できる。


「汚い手でこういう風に触られたら嫌だろ?俺の仕事は他人を最高に可愛くする事なんだ、だからまずは自分の身の回りくらいは綺麗にしないとね。

アオミちゃんもそうだよ、相手の事を綺麗にするんだ、俺は頭を、アオミちゃんは口を、だから手には気を付けなきゃ」


もうやめて、これ以上ハヤさんに何かされたらカイの事を忘れちゃう、そう、私はカイが好きなの、カイ以外には好きになれない……………はず。


「どうしたのさっきから、うつ向いたまんまだよ?」

「ちょ、ちょっと…………」

「可愛いんだから胸を張らなきゃ、いくら可愛くても下を向いてたら宝の持ち腐れだよ、ホラ、俺に可愛い顔を見せてよ」


か、可愛い!?こんな普通に連呼してる、私に告白してくる男達の‘可愛い’とは違う、この人の‘可愛い’は胸に突き刺さる、私の心をグチャグチャに掻き乱す。


「どうしたの?もしかして泣かしちゃった?」

「ち、違います、ありがとうございます」


嬉しい、聞き慣れた‘可愛い’って言葉がこんなに嬉しいなんて、でも美容師は口も売り物だもんね、これもテクニックの一つだよ、きっとそう。


「ちょっとソファーに座ります」

「大丈夫?」

「大丈夫です」


私はハヤさんの隣を通ってリビングに向かおうとした時、足下が滑って床に落ち…………ない?何この浮遊感、もしかして?


「大丈夫じゃないじゃん」

「だ、大丈夫です、だから離して下さい」

「ヤダよ、もうこのまま連れて帰りたいくらいだけどカイ君とマミコに怒られちゃうよね、だからソファーまでで我慢してあげるよ」


ハヤさんは私を抱き上げたままソファーに向かった、コレが私の始めてのお姫様だっこです。

なんでこんなにドキドキするの?カイには何してもドキドキしないのに、なんでハヤさんなの?私はカイが好きなの、何でこのドキドキがカイじゃなくてハヤさんなのよ。


「ねぇ、緊張しないで話してよ、俺分かるんだよね、相手が緊張してるかどうかくらい」

「緊張してないですよ」

「嘘は良くないなぁ、俺が相手してるのは髪の毛じゃなくて人なんだよ、人の心が分からずに接客が出来ると思う?」

「確かに」

「だから、俺には本当のアオミちゃんを見せてよ、俺はアオミちゃんの全てを知りたいんだ」


いつの間にかソファーに座らせられてた、ハヤさんの真剣な顔、辞めてよそんな顔、私はチカちゃんに煙たがれながらカイをたぶらかす人生を望んでたのに。

私は何故かハヤさんを突き飛ばしてソファーから立ち上がろうとした、でもハヤさんに後ろ手を掴まれて動けない。


「何で逃げるの?俺の事がそんなに嫌い?」

「私はカイが好きなの、弟に恋して変な女だから構わないで」

「アオミちゃんのカイ君に対する気持は恋じゃないよ、必要としてるだけなんだ」


そうかも知れない、ユキ君にも本気で恋を出来なかった私は恋っていうものを知らないまま大人になった、だから怖くてカイに依存してたのかも。


「俺の事は嫌い?」

「嫌いじゃないけど、分からない」

「俺はアオミちゃんの事好きだよ、今すぐこの場でメチャクチャにしたいくらいに」


顔が怖かったけど少しドキッとした、しかもコレって告白なの?今日始めて会ったのに好きになる事なんて出来る訳ないよ。


「わ、私は――――」

「別に言わなくてもいいよ、アオミちゃんにどう思われようが俺の気持が揺らぐ事は無いんだから。

でも、アオミちゃんが俺の事を嫌ってるなら命がけで俺に惚れさせる、……………………アオミのタメなら俺は何でもする」


そう言ってハヤさんは立ち上がった、携帯を取り出してボタンを押すのと同時に私に背を向けて歩きだす。

行き違いになるように私の携帯が歌い始めた。


「それ、俺の番号とアドレス、さっき抱き上げた時に調べさせてもらったから、消しても良いけど俺からかけるから登録しといた方が焦らなくて済むよ」


凄い早業、1分ちょっとの間に全部を写したって事でしょ、怖い人だな。

ハヤさんはカイの部屋の扉を開けて首だけ中に入れた。


「マミコ、帰るよ」


そういうとマミコと一緒に帰って行った、ハヤさんがいなくなった途端に力が抜けてその場にへたれこんだ。


「大丈夫か?アオミ」


カイが心配そうに話しかけてきた、ツバサも慌てて私の前に座る。


「お姉ちゃん何かされたの!?」

「ねぇ、恋をした時ってどうだった?」


二人とも頭にクエスチョンマークが浮かんでる、そのクエスチョンはどういうクエスチョン?


「俺は世界が変わったな」

「僕は楽しかった」


人それぞれなんだ、私のこの気持は恋?それとも恐怖?


「私は怖い、何かが変わりそうで怖いの」

「それも恋なんじゃないの?」

「分からない」


この気持に決着がつく時は来るの?でも、良くも悪くも私の頭の中はハヤさんの事でいっぱい、あれだけの宣戦布告されたら当たり前だよね。



コレって恋?これが恋なら私は恋に身を滅ぼすと思う。

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