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白黒の行く先


「はぁ」


今日は何回くらいため息を吐いたんだろぉ?本当にため息くらいしか出ないよぉ、別れるわけじゃないんだよぉ、それなのに何でこんなに辛いのかなぁ?やっぱり会えなくなるのが辛いのかなぁ?

マミぃ、マミは許してくれるかなぁ?こんな自分勝手でマミと一緒にいる時間作れない俺を、マミは許してくれるかなぁ?


呼び出したマミがいつものカフェに来たのは本当にいつも通りに時間ぴったりだったぁ、変わらないマミの笑顔、それが崩れると思うと凄く辛くなるぅ、本当に俺の選択が間違ってなかったのか不安になるぅ、でもやっぱりこれだけは俺が諦めたくない。


「何か雪が降りそうなくらい寒いね」

「俺が降るのぉ?」

「ユキ君みたいに真っ黒だったら綺麗じゃないでしょ?」


相変わらず毒舌だなぁ、でも確かに雪が降りそうだぁ、ネズミ色の空にコートを必死に抱き込んでる人達、俺は雪なんかとは正反対な人間なんだけどなぁ、髪の毛が真っ白なだけで肌は真っ黒だしぃ。


「で、話って何?」

「マミ、もうそろそろカットを任せてもらえるんだろぉ?」

「そうだよ!そうなんだ、長い間いたし技術だけはあったからカットをやらせてもらえるんだって、まぁ半分はお兄ちゃんがいたお陰なんだけど、やっぱり認められるためには七光りも必要だからね、そんな事を負い目に思ってたら進めないから今回もお兄ちゃんのお世話になるよ、でも次は一人の蘭真珠子として受け入れてもらう」


はぁ、話をそらしちゃったよぉ、これじゃあ言いづらくする一方じゃん、マミは自分の居場所を見付けつつあるんだよなぁ、そうなるとマミと離れなきゃ、…………別れなきゃいけないって事もあり得るんだろぉ?俺は本当にそれに堪えられるのかなぁ?

でもこれは伝えなきゃいけない事なんだよなぁ、俺の夢でもあるし、俺にはコレしかないからこそ悩んでるんだよぉ。


「マミぃ、落ち着いて聞いてほしいんだぁ」

「どうしたの?」


大丈夫だ、マミなら分かってくれるはずだよぉ、それにちゃんと帰って来れるんだしぃ。


「あのさ、俺、今年から海外に行こうと思うんだ」


マミは至って冷静な眼差しで俺の事を見てるよぉ、むしろだからどうしたと言わんばかりの眼差し、やっぱりマミって怖いなぁ。


「やっと落ち着いてきたしサーフィンで本気になりたいんだ、これは前々からの夢だったし今になって、って感じかもしれないけど、やっぱり俺が生きるにはマミとサーフィンが必要なんだ」

「それで、どれくらいいるの?」


あれぇ?普通に返されちゃったぁ、不謹慎だけどもう少しマミが崩れるのを期待してたのにぃ、マミはどこまでも冷静なんだなぁ。


「分かんない、すぐに帰って来れるかもしれないしぃ、何年もかかる事もあるかもしれない、やっぱり納得出来る結果を出してからじゃないと帰りたくないからさぁ」

「それならすぐに帰って来れるわね」

「はぃ?」

「ユキ君ならすぐに一番になれるからすぐに帰って来れるって事」


マミのその過大評価は嬉しいんだけどなぁ、やっぱり大きなプレッシャーになってるのは変わりないんだよぉ、でもこれは待っててくれるって事なのかなぁ?


「待っててくれのぉ?」

「私、もう一人ぼっちは嫌だよ」

「え?」


何この急展開?さっきまで冷静だったマミがうつ向いてるよぉ。


「私一人はもう嫌」

「でも俺は―――」

「だからユキ君と一緒に海外に行く!」



















「はいぃ!?」

「あれ?聞こえなかった?もうユキ君がいないのなんて嫌だから私もユキ君についていく」


何かあまりの急展開に俺のキャパを越えちゃったよぉ!


「ど、どういうことぉ?」

「だから、ユキ君と一緒に海外に行くの、お兄ちゃんもアオミちゃんもカナコちゃんも美容師の夢も捨てて、これからは樹々下雪に着いて行きます」

「そんなのダメだよぉ!これは俺が決めた事であってマミを巻き込むわけに―――」

「もう遅いでしょ!」


俺の言葉を遮るようにマミの声が俺を制止した、一人慌てる俺をよそにいたって冷静なマミ。


「ユキ君がいなくなる事は私の人生を大きく狂わせる事になるんだよ?私には全てを捨ててでもユキ君を取る覚悟があるんだから」

「マミぃ…………」



















目の前でポロポロと嬉し涙を流すユキ君、彼とならどんな道でも歩いていける、だって、彼のいない苦しみは本当に辛いものだったから。

ユキ君は袖で涙を拭うと伝票を持って立ち上がった、ユキ君は強引に私の手を引っ張るとレジに向かう。


「お釣りはいりません」


そう言ってお金と伝票を叩き付けてお店を出た。


「ゆ、ユキ君!どうしたの?」

「ハヤさんとかにマミを貰いますって言いに行く」

「とか!?とかって他には誰がいるの?」

「マミのお姉さんとか、俺の弟とか」


私のお姉さん?そんなの………………ってアオミちゃんの事!?弟はカイ君だよね?

本当にこういう無鉄砲というか猪突猛進な所は嫌になるくらいお兄ちゃんに似てるんだよね。

でも、この大きな背中は唯一無二、ユキ君にしかない大きな背中。







ユキ君に連れて行かれたのはアオミちゃんのマンション、今日は美容院が休みだからアオミちゃんの家にいる、なんて安易な考えなんだろう、そこまでお兄ちゃんの思考回路が単純だったら苦労しないのに。

私達はインターホンを押した。


「はいは〜い」


中から聞こえる聞き慣れた声、そしてその後に叫び声とも怒鳴り声ともつかない声。


「ハヤさんは出ちゃダメ!」


ユキ君は私の顔を見て笑った、本当に単純な兄を持った私は幸せ者だよ、これならお兄ちゃんもアオミちゃんもカイ君もいる、一石三鳥だね。


「あれ?珍しい二人の訪問だね」

「ハヤさんは出ちゃ…………ってどうしたの?」


付き合い始めても何も変わらない二人、でもアオミちゃんの顔は本当に幸せそうなものになってる、それはお兄ちゃんにしか出来ない素晴らしい事だと思う。


「カイはいるぅ?」

「いるよ、チカ嬢がデートに行ってくれないからすねてる」

「ハヤさん!」


奥から聞こえるカイ君の怒鳴り声、お兄ちゃんの言う事は確からしい、チカちゃんも受験勉強で忙しいんだからしょうがないんだけどね。




私達はソファーに座るとアオミちゃんがお茶を作り、お兄ちゃんが運ぶ、既に新婚生活みたいな状態の中で一人ふてくされるカイ君。

お兄ちゃんとアオミちゃんが私達の真向かいに座ると、カイ君は立ち上がり自分の部屋に戻ろうとした。


「カイぃ、カイもいてよぉ、大事な話なんだからさぁ」

「何だよ、マミ姉に子供でも出来たの?」


カイ君の笑えない冗談に私はカイ君を見ると、カイ君は青ざめて一歩退いた。


「ご、ゴメン、マミ姉、冗談だよ、冗談、話聞くからさぁ」

「カイ、あんたも馬鹿になったわね、マミコに喧嘩を売るなんて」


私はまた無意識の内に負のオーラを出していたらしい、まぁカイ君が笑えない冗談を言うからいけないのよ。

全員揃うと視線がユキ君に集まる、ユキ君は全く気にせずにお茶をすするけど、周りの視線に気付いてあたふたし始めた。


「ま、マミぃ、なんか皆で俺の事を見てるよぉ」

「「「「はぁ」」」」


全員から漏れるため息、酷い、ニワトリよりも物忘れが酷い。


「話があるんでしょ?」

「あぁ、そうだぁ!そうだったねぇ。

えぇとぉ、俺とマミは海外に行きます」


また短刀直入というか、話の切り出し方が下手というか、皆の呆れ顔を見ればユキ君の意図が伝わってないのが分かる。


「マミ姉、通訳」

「何だよカイぃ、俺は日本語でちゃんと喋ったよぉ」

「日本語で喋っても意思疎通が出来なきゃ意味がねぇだろ」


相変わらずこの二人は義兄弟というよりは友達みたいね、まぁそもそも血が繋ってないんだからしょうがないんだけど。


「じゃあまず、ユキ君はサーフィンをやってて前々から海外の大会で優勝するのを目標にやってきたの」

「へぇ、ユキってそんなに凄かったんだ」

「ハヤさん、話の腰を折らないで」

「はぁい」


お兄ちゃんとユキ君は話すだけで疲れるところも似てる。


「それで今年から海外の大会を中心に出る事にしたの、そのためには海外に住む必要がある。

つまり私とも離れ離れになってしまう、ここまでがユキ君のお話。

私はユキ君が大事だしもう離れたくない、だから美容師の夢を諦めてユキ君についていく」

「だから、俺とマミは海外で暮らす、やっぱりココにいる人には知ってほしかったから」


驚きを隠しきれないアオミちゃん、そして至って冷静なカイ君とお兄ちゃん、何でお兄ちゃんがココまで冷静なのかは知らないけど、何だか有難い。


「ちょ、ちょっと!何で兄弟のあんたら二人がそんなに落ち着いてるの!?」

「だってねぇ、ハヤさん」

「ねぇ、カイ君」

「「やっぱり」」


その一言で片付けられちゃうなんて、心配した私が馬鹿みたい。


「おとぉはOK出してるんだろ?」

「当たり前でしょ、金出してもらってるんだからぁ」

「じゃあ親父とお袋には俺が話つけとくから、マミコは気にせずに行ってこい」

「ユキ、あとはあの人達だけだな」

「そうだねぇ」


あの人?もう私達が言わなきゃいけない事なんて無いと思うんだけどな?

兄弟間の秘密ってなんだかずるい、他人である私が入れないような気がする、でもカイ君は血が繋ってないんだよね?
















私達は電車に1時間以上も揺られて着いたのは神奈川の田舎、湘南の影響を受けて昔の人達は別荘を軒並み建ててた所。

ユキ君はタクシーに乗ると行き先だけ伝えた、私の手を握って嬉しそうに外を見るユキ君、まるで島に帰って来たみたいに生き生きしてる。






着いたのは私は見慣れた漁師の家、島育ちだからこんな家は何件も見てきた。

ユキ君は迷わずインターホンを鳴らす、そして人が来ない内に家に入っちゃった。


「えっ!?入ったら怒られるわよ」

「大丈夫大丈夫、ココも俺の家だから」


ユキ君の家?もしかしてこの家って……………。

家に入ると優しそうなおばさんとジョニーとは正反対なおじさん、ユキ君の両親の反対側にいそうな人達が驚いてる。


「シロ、おかえり」


おばさんは涙を流しながらユキ君に近寄って来た、おじさんは何も言わずに再び視線をテレビに移す。


「そちら様は?」

「この人は俺の大切な人だよぉ」


私は軽く挨拶をした、おばさんは笑顔で会釈すると台所の方に歩いて行く、私はユキ君に促されておじさんの目の前に座った。


「髪の毛が拾った時に戻ってるな」

「まぁねぇ、おじさんには長い方が見慣れてると思うけどぉ、俺は元々これだからぁ」

「そっちの方が良い」

「ありがとぉ」


私はユキ君の袖を引っ張って目で困窮する、何となくユキ君との関係は分かったけどやっぱり確信には至らない。


「あぁ、そうだったねぇ、ココは俺が記憶を無くした時に住んでた家だよぉ、だから第2の我が家になるのかなぁ?」


やっぱりそうなんだ、ココがユキ君が私と別れてる間に住んでた家か。


おばさんがお茶を机に並べるとおじさんの隣に座った、多分何かを察したんだ。


「おじさん、おばさん、俺海外で住むよ」


おばさんはビックリしてるけどおじさんの威厳たっぷりな顔は変わらない。


「この人と一緒に向こうに行って、サーフィンで世界を取ろうと思うんだ」


ユキ君が普通のしゃべり方になってる、多分ジョニーとは違った恩があるからそれなりの緊張はあるのかな?

おばさんはおじさんに合図を送るとおじさんは横目で軽くおばさんを見てユキ君を見る。


「勝手にしろ」

「そう言うと思ったよぉ、その後はぁ―――」

「「今から船を出すか?」」

「でしょ?」


おじさんはくすりと笑った、こうやって見ると二人は血の繋った親子みたい、言わずとも分かる信頼しきった親子なんだな。






ユキ君、私達って色んな人に支えられながらココまで来たんだね、これからは二人で支え合いながら生きていこう、私はユキ君以外は望まないから。

ユキとマミコのエンディングです。

二人には苦労かけた分目一杯幸せになって欲しいと思い、こんな大胆な結末にしてみました。


ちなみに次回予告をさせてもらいますと、次はコウとミドリのエンディングです。

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