蒼青とパーティー
私達の家に送られて来た一通の手紙、それは私宛になってる、高級そうな紙には宛名だけで誰から来たのかは分からない。
カイやツバサも呼んで会議したけど、何かはやっぱり分からない、用心深い私はそれを開けるのを躊躇っていた。
私はが机の上に置いて手紙とにらめっこしてると、ツバサがひょいとそれを持ち上げる、透かしたり振ったりしてるけど何も分からない。
「開けちゃえ!」
ツバサは何も迷わず手紙を開けた、中には2枚の紙切れ、それをカイが受け取って、固まった。
「どうしたの?」
「一枚は小切手だ」
「お兄ちゃん見せて!」
カイはツバサに小切手を渡す。
「うわぁ!ひゃ、100万円もある!」
「「100万!?」」
「…………ほら」
確かにそこには100万円の小切手がある、私は何かした?そんな大金を貰うあてもないし、何だか段々怖くなってきた。
「フォーカラーグループ?」
ツバサが読み上げたのは小切手の主、それにより私とカイの顔が曇る、聞き覚えがあるなんて名前じゃない、私達が一番憎むべき存在。
「…………アオミ」
「なんでコイツが?」
「どうしたの?お兄ちゃん、お姉ちゃん」
「ツバサ、この送り主は私達を捨てたクソ親父よ」
「へぇ、じゃあもう1枚の紙は?」
カイは手に持ってる紙を見て鼻で笑った、投げ捨てるように机に出す。
「あの親父のグループの5周年パーティーだ」
「何で今更そんな物を私達に?」
「なんか楽しそう!」
「楽しかねぇだろ、何でアイツの事を祝わなきゃいけないんだよ」
何をたくらんでるの?あのクソ親父が純粋に私達を呼ぶわけがない、何がしたいのか全くわからない、手紙も何もなし。
「この小切手は服代だろうな」
「そうなの?」
「でもこんなにいらないよね?」
「じゃあチカとハヤさん辺りでも呼ぶか」
確かにこんなにお金はいらない、ハヤさんはともかくチカを呼んでも一人25万円である過ぎるくらい。
「それで本当に行くの?」
「あぁ、ツバサもいる事だしな」
そっか、こっちにはあのクソ親父の汚点、誰にも知られたくないツバサがいるんだ、あのクソ親父下手な事出来ないように、ツバサには悪いけどツバサの立場を利用させてもらうわよ。
パーティー当日、俺達は親父に貰った金で服を買って出向いた、ホテルをワンフロアを借りて馬鹿みたいに大きいパーティーをやってる。
テレビカメラもチラホラあり、テレビで見た事ある政治家や起業家、芸能人にいたるまで幅広いジャンルの人がいる、アオミの肩を抱いてるハヤさんも同じ人種なんだけどね。
やっぱりハヤさんの知り合いも多く、アオミを連れて何人かに挨拶してる、仕事とプライベートの入り混じったような顔をしてる。
俺はチカとツバサを引き連れながら歩き回った、どうせ俺があの親父の息子だってのは分からないだろうし、分かって困るような事もない。
相変わらずハヤさんは笑顔で挨拶してる、多分アオミの事を彼女候補として紹介してるんだろうな。
「おい、あの蘭葉夜が女連れてるらしいぞ」
「こりゃスクープだぞ、こんなパーティーより食い付くに決まってる」
あのクソ親父それが目的か、こんな所で目を付けられたアオミの素性なんて簡単に割れる、それで自分と蘭葉夜との接点を作る、そんな事まで調べてたのかよ。
俺は記者よりも速くアオミ達に近寄った、こんなの世間にバレたらヤバい、もしかしたらアオミはハヤさんと距離を置こうとするかもしれない。
「こんにちは、ハヤさん、マミコさん」
二人は目を丸くして俺を見てる、この状況で俺が言う‘マミコさん’はアオミしかいないからだ、ハヤさんは不思議そうな顔をしてるけど、アオミは俺の後ろにいる記者に気付いたらしい。
「カイ君、今回は兄共々お呼び頂いてありがとうございます」
俺とアオミはハヤさんを睨んで合わせるように訴えた、ハヤさんもそこまで馬鹿じゃないから、この普通じゃない雰囲気を察したらしい。
「蘭葉夜さん!そちらの女性は!?」
やっと記者が来た、ハヤさんは驚いている、この状況だとなんの言い訳も出来ないままハヤさんはアオミの事を言うかもしれない。
「蘭葉夜さんとその妹さんの蘭真珠子さんは僕がお呼びしたんです」
「君は誰だい?」
記者は邪魔者を見るような目で俺の事を見てる、この場で俺の素性がバレても困らない。
「すみません、申し遅れました、僕はフォーカラーグループの社長、四色真人の息子、四色海です」
明らかに信じてない、資料はや何やらを捲って調べてる、出てこないよ、こんな息子をあの親父が表に出すわけないだろ。
「一般の高校生として過ごしていたので分からないと思います」
「おい、この子確かうちの社のサッカー誌に出てたぞ」
「本当か?」
「あぁ、確かイケメンで上手い奴がいるって聞いた」
二人は本社に電話しはじめた、そうだ、そうやって俺が四色だって事を確認すれば、アオミから目は反れる。
「…………あぁ、分かった、……本当に四色海って奴はいるらしい」
「それが俺です、分かって頂けましたか?」
「コレはスクープだ、フォーカラーの四色に隠し子がいたなんて」
「違いますよ、公表してなかっただけです」
俺は出来るだけ笑顔で答える、どうせ後々矛先は親父に向かう訳だし、今だけこいつらの気を引いてれば良いんだ。
俺が記者の質問に受け答えしてると、会場は暗くなり、壇上が照らし出された時、久しぶりに見たあのクソ親父がいた。
記者は待ってましたかの如く走って壇上に向かう。
カイは私とハヤさんのタメに自分の素性を明かした、その優しさが痛いくらいに嬉しい、確かに今の私とハヤさんの関係はあまり知られたくないもの、それがあの四色の娘となれば週刊誌のカモになる事間違い無しよね。
あのクソ親父はスポットライトを浴びながら、悠々と壇上に上がってきた、本当にいつ見てもムカつくあの顔、私達を捨てておきながら何であれだけ笑えるの。
「四色社長!あちらにいるのは四色社長の息子さんと言うのは本当ですか!?」
あのクソ親父はカイを見て驚いてる、やっぱりカイが自分で素性を明かした事が計算外だったのね。
カイはしてやったり顔で壇上にいるクソ親父を見てる、その顔は余裕と自信で満ち溢れていて、とてもいつもの優しいカイには見えない。
「お父さん、お久しぶりです」
カイは笑いながら壇上に向かう、会場全員の視線がカイに集まってる、クソ親父の苦虫を噛み潰したような顔、本当に気持良い。
親父は計算外の事に動揺してる、いつもそうだ、自分の思い通りにならないと動揺して、全てを金で解決しようとする、アオミも俺もそうやって切り捨てて来た。
壇上に上がるとシャッター音と強い光が飛び交う、平静を装う親父は若干の脂汗が溜ってる。
俺は近付いてカメラに口元が写らないように、そして誰にも聞こえないように囁いた。
「鷲鷹弥生さんの事をバラされたく無かったらアオミの事を黙って、俺に合わせろ、会場には弥生さんの娘もいる」
更に親父の顔に脂汗が溜まる、あんたの利用しようとした子供達は立派に成長しましたよ、あんたの意に反してね。
今度は誰にでも聞こえるように話す、ココからコイツと親子を演じなければならない。
「お父さんお久しぶりです、今回はお呼び頂きありがとうございます、お父さんの会社を支えるべく勉強していた僕には嬉しい限りです」
俺は親父に手を差し出した、親父は恐る恐るその手を取る、そして再び俺は誰にも聞こえないように話した。
「今度俺らに手を出してみろ、あんたの名前を汚すのなんて簡単なんだよ」
そして俺はステージから降りて行った、どうせ明日は俺のサッカーの記事と引き合いに出すんだろ、親父の会社には利益になるんだろうな。
でも、コレでツバサという親父の汚点と、俺という起爆剤が出来た、コレだけで親父への足枷は十分だ。
せいぜい苦しめよ、俺ら次第であんたの名前が汚れるんだ、でもコレだけじゃ終らせない、平気で人を切り捨てるあんたに、人の怖さを思い知らせてやるよ。
俺は俺とアオミを捨てた親を許さない、でもそれは俺の心の中での事、相手を潰すような真似をしたらあいつらと同じだ、だから俺は一生恨み続ける。