無色のリコ
またまた番外編です、今回はサッカー部マネージャーの日奈久理娘、前回の番外編とは違い明るく進んでいきます、どうぞ読んでやって下さい。
五百蔵先輩と文化祭を楽しもうと思ったのに気付いたら引き返してた、全然やましい感情とか無いからね!ただ五百蔵先輩といると胸がポカポカしてきて落ち着くだけだよ。
五百蔵先輩って無愛想なところとか、優しいところとか死んだお姉ちゃんに似てるんだよね、だからなのかな?
一人になった私は一人でブラブラ歩いてた私は二つの同じ後ろ姿を見付けた、私が見間違うわけがない、毎日クラスで見てる後ろ姿に、私の大好きな小さいけど大きな後ろ姿。
「チビちゃん!ハルキ!」
私が大きな声で呼ぶと似てるけど何かが違う双子が振り向いた、私の親友のハルキ、私の大好きなチビちゃん、双子の男女だけど性格は正反対。
「どうしたリコ?五百蔵さん所行くんじゃないのかよ?」
「寝られちゃった」
「えぇ!?クリコって五百蔵先輩とそういう関係なの!?」
「馬鹿ユウが!」
ハルキはチビちゃんの頭を後ろから叩いた、ハルキは女の子なのに、それにチビちゃんは男の子なんだから。
「リコが彼女持ちの野郎に手を出すわけないだろ!なぁ!?リコ」
「そうだよ」
私にはチビちゃんだけって言いたかったけど、ハルキの前じゃあ恥ずかしくて言えないよ。
前々からだけどチビちゃんと2人だけになる時間が欲しい、最近帰りはハルキも混ざって3人で帰ってる。
だから私は決めた、滅多に2人きりになれないチビちゃんと2人きりになった時、絶対に告白してやる!………そう思って一ヶ月、見事に2人にはなれない、運まで私に味方してくれないの?
「それでリコには好きな人の一人や二人いないのかよ?」
「わ、私!?」
「そうだよ、私もユウも部活一筋だけど、リコは恋する余裕くらいあるだろ?」
「そ、それは………」
言えない、チビちゃんが好きだなんてハルキの前では言えない、でも言いたい!少しでもチビちゃんの気を四色先輩から反らしたい、女として男のチビちゃんを男の四色先輩に取られたくないよ。
「ならユウで良いじゃん」
「ち、チビちゃん!?」
「何言ってるんだよ?冗談はやめてよハル」
やっぱりチビちゃんはそう思ってるのか、私はチビちゃんにとってただのマネージャー、でもココで引き下がったら女が廃る、せめて女の人にチビちゃんを取られてこの恋を終らせたい。
私達は自然に文化祭を回った、知らない人には女の子3人に見えるんだろうな、チビちゃんは本当に可愛いもん、全国大会の時にメイクしたらもう女の子、女の子だったらモテモテなのに。
でもチビちゃんはお姉さま方からモテるんだよね、敵は多いなぁ。
それに比べてハルキは女の子とは思えないくらい食べてる、確かに双子だからハルキも可愛いよ、でもそんなのが隠れるくらい男っぽい、そこら辺の男よりも男っぽいってどうよ?
「やっぱこういう出店は美味いなぁ!」
「ハル、おじさんみたいだよ」
「ホント、ハルキって本当に女の子なの?チビちゃんのほうが女の子みたいじゃん」
「そいつは女だ、そんなナヨナヨした男いるわけないだろ」
「僕は立派な男の子だよ!」
それじゃあハルキは男じゃん、チビちゃんもそこまで否定しなくてもいいのに、確かに外見は女の子でも心は誰よりもカッコイイんだから、それは私が一番分かってるよ。
「そうだな、ユウは男かもな」
「かもじゃないよ!もう!」
チビちゃんは顔を膨らまして怒ってる、悔しい、それ私よりも可愛いよ、こんなに可愛い男の子がいて良いの?世の中の女の子が惨めになる一方、その中の一人が私なんだけどね。
「リコも言ってやれよ、もっと男らしくなれって」
「チビちゃんは立派な男の子だよ、それにハルキが男の子っぽすぎるんだと思うよ」
「そうだそうだ、もっと言ってやれよクリコ」
「チビちゃんもハルキに言い返せるようになりなさい!」
「はぃ」
性格が正反対なら丁度良いのに、多分お腹にいる間にぐちゃぐちゃになっちゃったんだな、本当はチビちゃんが男っぽくてハルキがナヨナヨしてたんだよ、じゃなきゃなんだかチビちゃんが可哀想。
私達は人の少ない校舎の隅で話してた、って言っても話てるのは私とチビちゃんでハルキは食べてるだけ、本当に彼女は彼女なんでしょうか?
ハルキは大量にあった食べ物を全部食べ終えた、その小さくてスリムな体の何処にあの量の食べ物が?そんな私の疑問を気にせずにゴミをまとめて立ち上がった。
「どこに行くの?」
「食料調達」
「ハルキ食べ過ぎじゃない?」
「うるせぇ!屋台の食い物は別腹だ!」
それじゃあ別腹がいっぱいになっちゃうよ、でもハルキは再び食料を探して屋台の波に繰り出した。
そして気づく私、今は私とチビちゃん二人だけ、今しかチャンスは無い、急がば回れ?そんなもの知らない、前進あるのみ!
さぁ私、お腹の底から勇気を振り絞り、今ココにいる私の大好きな人に私の想いを伝えるんだ、頑張れ私!
「ちちち、チビちゃん」
テンパるな私!そして早くして、早くしないとハルキが帰ってきちゃう、ハルキが帰って来た時には私とチビちゃんは恋人同士になってる…………はずなんだけどなぁ。
「あ、ぁのぉ、あの、そのぉ、この、やの、ちのぉ、みのぉ…………」
って私何言ってるの!?チビちゃんが困ってるよ、でも困ったチビちゃんも可愛い、…………って話が反れてる!
「ど、どうしたのクリコ?」
「だからアトムは力の限り行っちゃったら帰りの分の燃料が無いというか………」
私また変な事言ってる!確かにアトムはジェットの限り行ったら戻って来れないし、そんな後先考えない馬鹿に地球を守れるのかは不安だけど、今の私とチビちゃんには原子レベルも関係ない事なんだよ。
「あぁ!もう!唸れ私の気持ち!」
「く、クリコどうしちゃったの?何かおかしいよ?」
「誰の、せいで、こんなに、なったと、思ってる、の!?」
ついに崩壊私の全て、告白するのがこんなに緊張するとは思わなかった、こんな頭を抱えてハードロックばりの縦運動しなきゃいけないなんて、チビちゃんドン引きだよ、自分で自分に引いてるんだから当たり前だけど。
…………それに唸れって何!?唸れって!もう嫌だぁ!
「く、クリコ、落ち着いて、何が言いたいのか分からないよ」
「だからチビちゃんが好きって言いたいの!」
「…………………」
「…………………」
言えたぁ!やったやった!言えたぁ!なんか伝わったかどうかは分からないけど言えた。
「クリコが、僕を好き?」
「そ、そう、ち、チビちゃんの事が、好き、だよ」
「男の子として?」
私は頭が外れるかと思う程縦に振った、でもチビちゃんは何故か悲しそうな顔をしてる。
そうだ、大変な事を忘れてた、チビちゃんは四色先輩の事が好きなんだよね、ココまで惨めなフラレ方は無いよね?
「私チビちゃんの事が大好きだよ、本当に、本当に」
「でも、でも僕は―――」
「四色先輩が好きなの?」
チビちゃんは物凄く悲しそうな顔をした、やっぱり秘密にしたかったんだよね、自分でもおかしいって分かってるんだ。
「今は勘違いしてるだけでも、きっと私を好きにしてみせるから、だからお試し期間だと思ってさぁ、付き合ってよ?」
「………無理だよ」
「何で!?何で男の四色先輩は良くて女の私はいけないの?」
「四色先輩は男でクリコが女の子だからだよ」
おかしいよチビちゃん、何でそんな悲しそうな顔するの?私は何も間違った事を言ってない、むしろチビちゃんの方が間違ってるのに、何でそんなに悲しそうなの?
「ぼ、僕は、………僕は………、お、お―――」
「女なんだよ」
私とチビちゃんが振り向くと焼き鳥を頬張ってるハルキがいた、ハルキは勝手来た物を下に置くとチビちゃんの後ろに行く、ハルキも悲しそうな顔をしてる。
ハルキはそっとチビちゃんのシャツの裾を持つと私を軽く睨む、チビちゃんはしどろもどろしながら状況把握をしようとしてるけど、私でも分からないんだからチビちゃんには分からないよ。
「リコ、目ん玉かっぽじって良く見とけよ」
目をかっぽじったら大変な事になっちゃうよ、そんな事も気にせずにチビちゃんシャツをめくり上げた。
嘘だ、私は泣くとか驚くとかそんな感情が出て来なかった、現実逃避、目の前にはブラを着けたチビちゃんがいる。
「分かっただろ、黍野祐希は立派な女だ」
そう言ってチビちゃんのシャツを元に戻した、チビちゃんは顔を真っ赤にしながら胸の辺りを抑えてる。
「く、クリコ、これには―――」
「いちいち言い訳すんな!ユウにはいちもつは無い、それに男にはいらない胸まである、コイツは正真正銘の女なんだよ。
納得出来たか?ユウが四色の野郎を好きでリコを好きになれない理由が………」
その後ハルキはチビちゃんが男を装ってる理由を教えてくれた、そして途中から四色先輩がこの事を知ってた事も。
そっかぁ、チビちゃんは女の子だから四色先輩が好きになったんだ、お兄さんなんかじゃなかったんだ、でも、でも…………。
「やっぱりチビちゃんが好き!」
私は女の子のチビちゃんに抱きついた、だって私はチビちゃんのひた向きさに惹かれたんだもん、今は恋愛感情に似てそうじゃないけど、まだ好きだな。
「り、リコ!」
「だってだって、チビちゃんが女の子ならこうやって抱きついても良いんだし、一緒にお風呂だって、寝るのだって………」
「リコ、変態親父みたいな顔してるぞ」
危ない危ない、危うく変態女になるところだった、でもこんなにカッコイイ女の子がいたなんて、やっぱりチビちゃんの事好きかも。
「でもクリコ、今度はクリコがおかしな人になっちゃうよ?私は女の子なんだから大丈夫だけど、クリコも女の子でしょ?」
「恋に性別なんて関係ない、好きな気持ち一つあれば女は燃え尽きる事出来るんだから」
「一応、結果オーライだな」
好きな人は女の子、私も女の子、それがどうかしたの?だって女が男を好きにならなきゃいけない法律なんてないでしょ?だから私はチビちゃんの事が大好きです。
私の恋はまだ散らないよ、でも四色先輩には負けて良いかな?チビちゃんが幸せなら私は幸せ、私って健気な女の子だよね?