黄と文化祭
やっと始まったで、待ちに待った文化祭や、コレのタメにわいがどない頑張ってきたか。
開会式と同時に行われた男女のミスコン、無理矢理他の5人を出させたから男女の優勝は間違い無しやろ。
一芸はチカはんは壇上で英語を話し、ツバサは一人芝居、ヒノリはんは色気出してコガネはんを焦らしとった。
コガネはんはリフティングして、カイはんは…………カイはんは何したん!?分からん、思い出せん、わいはずっと見てたハズなんやけどな。
わいらのクラスの出し物はメイド喫茶や、あの3人も十分可愛いけど、他の人も可愛いさかいに人が集まるの必至やな。
最初はわいとヒノリはん、ヒノリはんは何で可愛い系のメイド服着ても色っぽいんやろ?既に兵器の域やで。
始まると同時になだれ込んで来る野郎共、殆どがヒノリはん目当てであとはわいかな?
ヒノリはんは呆れてか笑顔が無い、でもそれによって更にヒートアップしとるんやけどな。
「ヒノリはん、もっと笑顔で頼みまっせ」
「何で?」
「無愛想の方が人気集めるけどそれでもええんか?」
「パフェはいかがですか!」
声を高くして満面の笑みで接客するヒノリはん、せやけど…………。
「うおおおぉぉぉ!笑顔の春日さんも良い!」
「春日先輩!俺にも笑顔お願いします!」
「コテツ!あんた騙したわね?」
ヒノリはんの凍りそうな冷たい視線、せやけど更にそれで盛り上がる野郎共、ヒノリはんにとっては負の連鎖やな。
「烏丸君!コッチにも来て!」
「私が先よ!割り込みしないで」
「私の方もお願い」
「皆行くから待っててやぁ」
わいは笑顔とか愛想良くするのは慣れてまんねん、あんまタイプやない女の子でもサービスは出来るんやけど、ヒノリはんは微妙やな、まぁあのムスッとした態度も狙いの内なんやけどな。
忙しいって幸せやな、それだけ儲かってるっちゅう事やからな、写真の副収入があるさかい、こりゃ一番間違い無しや、授業返上でクラス旅行なんて夢のようや。
「………コテツ」
「今忙しいんで座って待っててや!」
「そうじゃなくてうちだよ、コテツ」
「はぃ?」
振り向くと入口にはメグはんが立っとる、わいは慌てて近寄ると周りの視線が痛い。
「来るなら言ってぇな」
「驚かせたかったからね」
「……………浮気相手?」
「うわっ!ヒノリはん!?」
耳元で囁くようにヒノリはんが問題発言、そないな物騒な事言わんでや、わいが何で浮気なんてせなアカンの?
「幼馴染みやで」
「そう、それなら良いんだけど、ツバサがいる事を忘れないでね」
「何でやねん?」
「さぁ?」
ヒノリはんは相変わらず無愛想に接客に戻った、何で皆はん幼馴染みと話てるだけでそない怖い顔をするんやろ?わいはツバサの事が一番好きやのに、好きな人がおったら他の女の子と話したらあかんの?わいはそんなん嫌やで。
「メグはん、もうすぐ終わるからちょっと待っててや」
「うちはいいよ、コテツに会いたかっただけだから、それにツバサさんにも悪いでしょ?」
「大丈夫やで、終ってから暫くはツバサも仕事や、それまで相手するで」
「……………じゃあ待ってるよ!」
メグはんは奥の方に座った、女の子達は物凄い形相でわいとメグはんを交互に見る、わいとメグはんは何か間違った事した?
わいは出来上がった飲み物を取りに行くとそこにはヒノリはんがいて呼び止められた。
「あんまりあの子に入れ込み過ぎない方が良いわよ」
「何でや?メグはんは良い人やで」
「コテツの優しさは誰にでも優し過ぎるって事、コテツじゃなくて向こうが歯止め効かなくなる前に手を退きなさい」
なんかヒノリはん怖いなぁ、別にわいは何も悪い事してないのに。
でも、カイはんもあないに怒ってた、何があかんの?わいのやってる事は間違ってへん、そやさかいわいは今やってる事を変えようとは思わん。
今のわいは誰よりもツバサが好きや、そんでメグはんは大事なんや。
終わってツバサとカイはんに引き継いだ後、わいはメグはんと学園祭を回った。
皆わいとツバサの関係を知っとるさかい、疑うような嫌な目でわいらの事を見る、ただ歩いてるだけなのに何でそないに見られなあかんの?
校庭に出ると出店だらけや、わいのお好み焼き屋でも一番取れたかもな?
メグはんは若干テンション上がり気味で周りを見とる、いつも根っからの真面目なメグはんがこないな事しとると嬉しい。
「たこ焼きだ………」
「ほな食うか!」
「うん!」
「………二つ頂戴」
「コテツ、うちお金出してないよ」
「そんくらい奢るで」
メグはんは慌てとるけど、わいかて普通の高校生より儲けとるんや、それなら女の子にお金払わせるわけにもいかんやろ?
「大丈夫やで、このつけはチューで払ってもらうさかい」
「ちゅ、チュー!?」
わいは受け取ったたこ焼きを一つメグはんに渡すと、メグはんは顔を真っ赤にしながら受け取り、真っ赤な顔を隠すように熱いたこ焼きを口に放り込んだ。
「どないしたん?そないにチューが効いたんか?」
「こ、コテツの意地悪」
熱さで少しうるませた目でわいを睨む、ちっとも怖くないどころかメチャメチャ可愛いやん、ツバサがいなかったらほんまにチューしたいくらいや。
せやけど何でやろ、メグはんといると落ち着く、ツバサといる時は抑えきれへん気持ちをぶつけてるような感じなんやけど、メグはんは落ち着く。
愛しい?そないな感情が芽生えとるん?せやけど好きやない、何なんこの気持ちは?
丁度ツバサの仕事が終わる頃にメグはんは帰って行った、気を使ってくれるんもメグはんの良いところや。
それにしてもツバサのメイド服姿も可愛いなぁ、ここまで着こなせるやつもおらへんで。
コスプレコンテストはこれで頂きやな、でもコガネはんがおるんやった。
全員の衣装を秘密で作ったさかい、コスプレコンテストの方も優勝は頂きやな。
「どうしたの?さっきからニヤニヤして」
「勝利の美酒に酔いしれてただけや」
ツバサの顔は疑問で埋め尽されとる、せやけでそれもまた可愛いで、やっぱりツバサ最高に可愛い!
わいとツバサが手を繋いで歩くと必然的に視線を集める、そりゃこないなコスプレまがいな格好で歩いとったら当たり前やな。
「コテツ、やっぱり僕たち目立ってるね」
「これでええんや、このまま行けばクラス旅行やで」
「そうだね!頑張ろうコテツ!」
何を頑張るん?ただ歩いてるだけでええんやけどな。
文化祭も終わりに差し掛かった頃、わいとツバサは屋上に行って校庭を眺めた。
美男美女が集まる光ヶ丘高校は他校からもかなりの人が来る、せやさかい校庭の出店の隙間を埋めるように人がおる、ほんまに祭やな。
「人がいっぱいいるね」
「可愛い子もいっぱいおるんとちゃう?」
「ダメダメ!コテツは僕のモノなんだから」
「そやな、ツバサ以外は皆可愛くないな?」
「うん!」
やっぱりツバサはええ、ここは屋上さかい、自然と体の距離が近付く、そして目があった時に自然と顔も近付く。
ゆっくりと近付き、ゆっくりと目を瞑り、ゆっくりとお互いの唇を重ねた。
顔が離れるとツバサは満面の笑みで笑っとる、わいはいてもたってもいられずに思いっきりツバサ抱き締めた。
ツバサもそれに応えるようにわいの背中に手を回す、最高に好きやでツバサ。
せやけど、これが最後のキスになるなんて誰も予想出来ひんかった、当然、わいも。