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無色のカナコ2

あの失恋から懲りずに恋をし続けた、成功も何度かあったけど、圧倒的に失恋の方が多い。

付き合ったとしてもすぐに別れちゃう、大体別れの理由は『そんな人だとは思わなかった』だって、確かにマミコとかアオミには言われたよ『見た目と全く違う』って、でも飾りもしてないのに何でだろう?

童顔だから?少し小さいから?何か悔しいな、アオミやマミコはスタイルが良いし、大人っぽい顔立ちだから私は目立たない、だから大人しく見えるのかもしれないけど、それが別れの理由っておかしいよね?



そんな私もかなり無茶な恋をしてます、今度の相手は教育実習生、先生という肩書きを持ちながら歳は近い、それは憧れの的には絶好の相手だった。

そして私は見事に教育実習生に恋をした、毎日帰りを待ってるけど、たまに他の先生と帰っちゃうから無駄に終わる事もしばしば。

でも諦めない、諦めなきゃ何か希望は見えてくるはず、そんな淡い希望を抱いて待ち続けた。


3日連続で帰れなく少し落ち込んでた時、いつもより早く教育実習生の先生が出てきた。

私は嬉しくて近寄ると、先生は少し困った顔をしてる、それは何で?私迷惑な事してないよね?


「先生帰ろう!」

「…………困るんだ」

「えっ?」

「僕は教育実習生、君は生徒だ、こういうのは困るんだよね」

「関係無いよ、一緒に帰るだけだよ?」

「とりあえず困るんだ」


そう言って先生は私に目もくれずに歩いて行った、私は懲りずに跡を追う、成せばなる成さねば成らぬ何事も!だよね?

私は先生の隣に行くと、自然と笑みが溢れた、でも先生のイケメン顔が困った顔になる。


「先生、誰も見てませんから大丈夫ですよ、それに見られたとしても一緒に帰ってるだけなんで何言われても大丈夫!」


先生は困って頭を掻いてる、そんな困った顔されても、恋する女の子の暴走は止められないもんね。


私は結局別れ道までやって来た、少し嘘ついて先生の家の近くまで来ちゃったんだけどね。


「先生!また明日ね!」

「ちょっと待って」


私が帰ろうとした時、先生に後ろ手を掴まれた、もしかして私の心が通じたとか!?成せば成ったよ!


「本当に困るんだ、もう辞めてくれ」

「でも―――」

「君に付き纏われると迷惑なんだよ!」


やっぱりしつこ過ぎたのかな?私は頑張ってただけなのに、やっぱり先生と生徒じゃダメなの?男と女なのに恋しちゃいけないの?


「僕は―――!」


私は最後と決めて、背伸びをして先生にキスをした、涙が流れて視界が歪んでも、最高の笑顔で別れようとして、先生に背中を向けた時、暖かいモノに包まれた。


「先生?」

「困るんだよ、先生と生徒なのに歯止めが効かなくなるのが」

「それって………」

「初めて見た時から気になってた、でも先生と生徒だからという事で我慢してたのに、もう無理だよ」

「せ、先生、わた、私、嬉しい、です」


メイクが落ちるの気にせずに私は泣いてた、先生のその温もりに包まれて、幸せをいっぱい感じながら。












翌日。


「「嘘!!?」」


満面の笑みで告白する私にアオミとマミコは目を真ん丸にして驚いてる、100回近く無理って言われたけど、成せば成ったね。


「あんた何で脅したの?」

「違うよ、好きにならないように頑張ってたんだって」

「カナコちゃんには悪いけど、また騙されてるとかは?」

「無いよ、これ見てよ」


それは着信履歴、殆どが先生からの電話、しかも学校にいるときも、暇を見付けて少しだけだけど掛けて来てくれる。

初めてかもしれない、他人が自分の事を好きでいてくれるって実感したのは。


「嘘でしょ?」

「カナコちゃん良かったね」

「うん!」

「まぁ、今回は本物っぽいわね、教育実習が終わるまで頑張るのね、教育実習が終わればただの大学生と高校生、普通にデートも出来るでしょ?」


そっかぁ!今は先生と生徒でも教育実習が終っちゃえば良いんだ、でもあと2週間くらいあるんだよね、なんでこんなに長いの?早く終わってくれないかな。

でも幸せだから良いよね?何か未来がある幸せがこんなに幸せなんて知らなかった、我慢すればラブラブになれるんだもん。









帰りはほぼ毎日二人だけ、3日に一回くらいはクソ親父(教師)共に拉致られる、それも先生のためだもんね、明るい未来のタメに我慢してきた。

今日は二人で帰れるから心踊らせながら校門の所で待ってる、最近寒くなってきたから堪えるな。


「ゴメンゴメン、お待たせ」


振り向くとそこには先生がいる、私は誰もいない事を確認して抱きついた、先生は私の背中に手を回す、小さい私は先生に完全に包まれた。


「今日は僕の家に来てくれない」

「何で?」

「それはお楽しみ」


お楽しみだって!?何かあるのかな?初めての時みたいな事は無いと思うけど、何だか不安だな。




私は不安を感じながらも先生のマンションまでやってきた、先生と繋いだ手は離さないように、その繋いだ手は何を考えてるのか分からないけど、愛されてる事を信じて。


先生の家は1Kだけど綺麗だった、男の人の家だから汚いと思ったんだけど、見事に期待を裏切ってくれたんだ。


「好きな所に座ってて」

「は、はい………」


私は言われるがまま小さいテーブルの脇に座った、先生は何かを冷蔵庫から取り出してる。

麦茶だと思って部屋を見回してると、テーブルの上に四角い箱が置かれた。


「開けてみて」


私は恐る恐る箱を開けると、そこには見事なケーキが、しかも………


《カナコお誕生日おめでとう》


って書いてある、自分でもすっかり忘れてた、私今日が誕生日だったんだ。


「お誕生日おめでとう」

「あ、ありがとうございます」

「泣かないでよ、なんか悪い事したみたいだろ?」


先生は私の頬から涙を親指で拭った、確かに私は泣いてた、でもこれは嬉し涙、先生のそんな優しさが私の過去を無かった事にしてくれる。


「ゴメンね、ケーキしか無いんだ、これからどこか食べに行く?」

「大丈夫です、私ケーキ大好きですから」

「良かった、喜んでもらえて嬉しいよ」




私は大きなケーキを殆ど一人で食べ尽した、先生は少し驚いてたけど、すぐに喜んで笑ってくれた。

これが本当の幸せだよね?先生は私の満たされなかった何かを満たしてくれる。


「今日は―――」

「泊まっていきます!」

「えっ?」

「明日は休みだから泊まっていきます、………迷惑ですか?」

「ううん、嬉しいよ」


先生は私の小さな体をすっぽりと包み込んでくれた。

マミコ、アオミ、私は初めて愛されます、汚れたこの体でも、愛してくれる人を見付けました、今度こそは笑顔で自慢出来る彼氏にするんだから!




私は先生に抱かれて幸せを感じた後、先生の腕枕でさらに幸せを感じる。


「初めてじゃないんだ?」

「す、すみません……」

「良いんだよ、ただ、少し怖がってたから不安だっただけ」

「それは………」

「言わなくて良いよ、そんな事僕が忘れさせてあげるから」


先生はキツく抱き締めてくれた、その優しさに私は先生の胸で流したけど、初めての時の記憶が蘇り、物凄い不安が襲って来た。


「先生は本当に私の事を好きですか?」

「当たり前だよ、じゃなきゃ生徒とこんな危ない橋を渡らないだろ?」


そうだよね、私は何を考えてるんだろ、先生の事まで疑っちゃうなんて、心まで汚れちゃったのかな?

でも先生が忘れさせてくれるんだよね?それなら私は先生に愛されるよ、私も頑張って愛するから。


「先生、大好き」

「僕もだよ―――」

ガチャ!


鍵を掛けて無かったドアが開く音、私はビックリして先生を抱き締めると、先生の顔がこわばった。

そして玄関の方から歩いて来たのは女の人、スーツを来て髪をまとめた綺麗な女性、その人はバッグを落とすと口を大きく開けてる。


「貴方、誰?」

「な、何でお前がココにいるんだよ?」

「婚約者の家に来ちゃいけないの?」

「こんやくしゃ?」


先生は更に険しい顔をした、馬鹿な私でもそこに立ってる女の人が誰だか分かる、そして先生にとっての私も。


「浮気はダメだよ、こんな綺麗な人がいるのに、私なんかに………」


私はそのままベッドから降りると、床に転がってる自分の服を着た、その間3人の間に会話は無かった。


「バイバイ、先生」


先生も女の人も何も言わないうちに私は家を出た、その瞬間に抑えてた涙が一気に流れ出し、声を出しながら一人で帰るはめになった。

周りの人には変な目で見られるし、メイクは何にも直して無いから酷い、それに大失恋、もう最悪。






「マミゴぉぉぉ!」


私は寮に帰るとマミコの部屋に直行した、私のグシャグシャになった顔でアオミがいるマミコの部屋に入った、……………アオミ?


「あんたどうしたの?」

「カナコちゃん大丈夫?」

「アオミぃ、マミコぉ、私また失恋したぁ」


私は泣きながら近くにいたアオミに抱きつくと、アオミはいつものように優しく私の頭を撫でてくれる、口は厳しいけど本当は優しいアオミ。


「あんた先生と良い感じだったじゃない?」

「せ、先生に、彼女がいたぁ、じかも婚約してるし」

「でも向こうからしたら、あんたは婚約者と浮気した女なのよ、悪いのはあんたじゃない」

「アオミちゃん、カナコちゃんは何も知らなかったんだから、可哀想なのはカナコちゃんの方だよ」

「でも世間ではどんな事情であれ悪いのはカナコよ、…………まぁ、もっと悪いのは先生の方なんだけどね」


やっぱりアオミは優しいよ、はぁ、アオミが男だったら私の事を何処までも大切にしてくれるんだろうな。


「でも、先生と別れたくない」

「あんたこの期に及んで何言ってんの?これ以上は私でもフォロー出来ないよ」

「悪者でも良いよ、先生と一緒にいたいんだも――――」

バチン!


私が言い終わる前にアオミに頬を叩かれた、確かに私は間違った事を言ったけど、確かに悪いのは全面的に私なのに、アオミまで泣いてる。

アオミは私の両頬をアオミの両手でそっと包むと、うなだれるようにボロボロ泣き出した。


「あんたがそこまで好きになったのに、応援できなくてゴメンね、可哀想なのはカナコだよ、だから、可哀想なまま終わろう、あんたが悪者になる必要は無いよ」


私は優しい友達を持ったね、馬鹿な私をココまで支えてくれる人はいない、一生モノの友達だね。


でも、本当の波乱万丈はこの後だった。







休み明けの月曜日、朝のホームルームが終わると担任に呼び出された、これでも教師の評判が良い私が呼び出される理由は一つしかない、元カレの先生の事だ。

それに気付いてアオミに視線を送ると、アオミはゆっくり頷いてくれた、何かあるから着いてきてくれるはず。



私が連れて行かれたのは職員室で応接室でもなくなんと校長室、本当に自分の身を心配した。

校長室の中には先生もいる、多分先生の婚約者が怒ってチクったんだ、自分の彼氏を陥れるなんて最低。


「君達、呼び出された理由は分かるね?」


腰の低い校長先生が険しい顔をしてる、私どうなっちゃうんだろう?説教?停学?もしかして退学!?それはヤバいよ、最悪で最高の薔薇色高校生活にこんなハゲ親父に潰されたくない。


「東雲、お前何したか分かってるよな?」


ナニ、なんて答えられるわけないよ、嘘じゃないけどこんなところでふざけてられない。


「ゴメンなさい」

「君達にはこの学校を辞めてもらいます」


はぁ、やっぱり、もう泣き過ぎて涙も疲れてるのに、まだ涙が出てくる、やっぱり私って可哀想な女の子。


ガラララ!


私の涙が床に落ちるのと同時に、マミコに止められながらも無理矢理アオミが入って来た。

アオミは迷わず校長先生の前に行くと、思いっきり机を叩いて身を乗り出す。


「カナコは辞めさせないわよ」

「し、しかし………」

「四色!お前何をしている!こんな事してお前も停学―――」

「ヅラは黙ってて!!」


そのまま一枚の写真を投げ付けた、それはうちの担任のツルツルな頭、今はふさふさなのに写真はツルツル、コレってカツラって事?それ以前に何でアオミちゃんはこんな写真を持ってるの?


「し、四色、コレをどこで?」

「うるさいわね、ばら蒔かれたく無かったら黙って私の言う通りにしなさい」

「四色さん、そんな担任の先生を脅しても二人の処分は無くなりませんよ」

「チビ校長、生徒と教師が恋愛関係になってたのよりも、妻子持ちの校長が若い女と浮気してた方がスリリングよね?」

「な、何を言ってるのかな?」


校長先生の顔が物凄いこわばる、そして何か言いたげな担任も写真を持ってうつ向いてる、アオミ怖すぎ。

アオミはそれだけに止まらす、ポケットから新たな写真の束を取り出した。


「コレ、あんたにも証拠があるのよ、こんなのが世間に出回ったら職を失うどころじゃ済まないわよね?ワイドショーデビューも夢じゃないわよ」

「た、頼む、それだけは秘密にしておいてくれ」

「でもなぁ、私の大事な大事な親友が泣いちゃってるしなぁ」

「東雲さんの事なら目を瞑る、だからそれだけは許してくれ」

「分かってるじゃない」


アオミは机に写真の束をたたき付けると、満面の笑みで振り向き、私の手を掴んで出口に向かった。


「それと…………、写真も秘密もそれだけじゃないから、私達を処分しようとするならワイドショーレベルのネタを持って来なさい、じゃないとすぐに私が潰しちゃうから」


アオミの勝ち誇ったその笑みは格好良かった、まるで私を守ってくれる白馬の王子さまのような笑み。






私は少なからずアオミに恋をしてたのかも、こんな格好いい人はそんなに多く無いんだもん。

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