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黒が喋った

私はお仕事があるからひとまず東京に帰って来た、ユキ君は少ししたら東京で一人暮らしをするらしけど、その時のユキ君の顔は微妙に曇ってた、今の私ならユキ君と離れてても大丈夫だよ、ユキ君がちゃんと生きてるんだから。


今日は私のお祝い?にアオミちゃんとカナコちゃんと久しぶりに遊ぶんだ、アオミちゃんは会ってたけど、カナコちゃんは専門学校行ってるから、本当に久しぶりに会う。


待ち合わせはいつも使ってた駅、私は早めに行ったはずなのに既にアオミちゃんがいた、でもこれはいつも通り、高校生の頃と同じ。


「マミコ遅い!」

「アオミちゃんが早いの」

「………マミコの生声だ」

「久しぶり」

「久しぶり」


アオミちゃんの笑顔、やっぱり綺麗だな、変な意味じゃないからね、ただ羨ましいだけ。


約束の時間から10分くらい過ぎたくらいに、髪の毛をボサボサにしながら走って来たのはカナコちゃん、これも高校生の時のまんま。

カナコちゃんは肩で息をしながら舌を少しだけ出した、カナコちゃんは本当に可愛いな、でも、明るいカナコちゃんの過去は私よりも凄いんだよ。


「ゴメンゴメン―――」

「今日は携帯を家に忘れたの?」

「流石アオミ!何で分かったの?」

「遅刻する時に手に持ってる物、それを忘れたから遅刻した、いつもの事でしょ?」


流石アオミちゃん、鋭すぎる、私も今初めて知った、確かに手に携帯持ってる。

懐かしいなぁこの3人で集まるの、高校の時は毎日3人で遊んでた、飽きずに本当に毎日毎日。

そんな回想に浸ってる私をカナコちゃんが覗き込んで来た、少し童顔で可愛い系のカナコちゃん、私やアオミちゃんよりも一回り小さい、それが更に可愛く見える。


「マミコ?」

「どうしたの?」

「マミコが喋った!アオミ、マミコが喋ったよ!」

「うるさいわね、クララが立ったわけじゃないんだから黙ってなさい」

「アオミは嬉しくないの?」

「カナコが黙ってくれた方が嬉しいわよ」

「むぅぅぅぅぅぅぅぅ」


アオミちゃんがカナコちゃんをあしらってカナコちゃんが膨れる、それがこんなに楽しい事だったなんて。

ユキ君がいなくなった世界は無色だった、でもユキ君が現れてから、前にも増して色が増えた世界。


「よしっ、ケーキを食べに行こう!」

「カナコ、あんた毎日食べ飽きたとか言ってなかった?」


カナコちゃんはパティシエになるべく専門学校に通ってる、それで毎日食べ過ぎて、確かに飽きたとか言ってた、あのケーキ好きのカナコちゃんが飽きるくらいだから、本当に馬鹿みたいに食べたんだろうな。


「紗早屋のケーキなら何百個食べても飽きないよ、だってあそこのケーキはお水を使わずに北海道直送の牛乳と卵を使って、ふっくらふんわり仕上げたシフォンに、機械を使わずに作った生クリーム、何よりもクリームチーズケーキのチーズは――――」

「マミコ、終わりそうに無いから行くわよ」


確かに長そうだな、でも、カナコちゃん成長したね、前は‘美味しい’しか言わなかったのに、今はあんなに詳しく話てる、好きこそ物の上手なれ、まさにカナコちゃんはその通りだね。


私達は駅から歩いて10分くらいの所にある紗早屋に向かった、ここは高校時代に毎日通い過ぎた所、本当に思い出の詰まったケーキ屋さん。


「まずはクリームチーズケーキだね」

「私はカボチャとマロンのモンブラン」

「二人共そればっかり」

「そういうマミコは何なのよ?」

「…………生チョコケーキ」

「みんな変わって無いね」


そう、みんな変わって無い、違う道を歩いていても私達は変わらない、それが何よりも嬉しかった、何も気にして無かったあの時に戻ったみたいで。


「マミコ、樹々下君とは仲良くやってるの?」

「カナコ、この二人の仲を裂ける人がいると思う?」

「いないね」


カナコちゃん早すぎだよ、確かにユキ君がいない世界は悲しかった、だから今は前以上にユキ君が好き。


「そういうカナコちゃんはどうなの?」

「実は同じ学校の先輩に恋してま〜す」


カナコちゃんは満面の笑みでVサインを作った、でも私もアオミちゃんも知ってる、カナコちゃんは惚れる事に関しては天才的、老若男女問わず惚れて来た。


「で、今回はどれくらいで終わるの?」

「終わらないよ、今物凄く良い感じなんだから」

「今度は慎重になりなさいよ」


惚れ易い分失恋の数も並じゃない、恋愛の達人じゃなくて失恋の達人。


「そういうアオミはどうなのよ?」

「私?私は…………」

「恋愛予備群?」

「何何?良い男でもいるの?」

「まだ分からないけど、頼れる人はいる」


カナコちゃんが騒いでると、いつの間にか目の前にケーキが並んでた、私達はケーキに手を付けながらアオミちゃんとお兄ちゃんの話をした。

その時のカナコちゃんの目は輝いてた、アオミちゃんが恋出来ないのは私もカナコちゃんも知ってる、だから私と同じくらい嬉しかったんだろうな。


「まさかあのマミコのお兄さんとは、しかも惚れられてるなんて、羨ましいなぁ」

「そういうカナコはどうなの?」

「いい人だよ、私の事を好きかどうかは分からないけど、私は彼の事を好きだよ、あんなに優しくされたの初めて、私はついに本当の恋が出来たのよ」


力説してるけど、私もアオミちゃんも何度も同じ言葉を聞いてきた、その度にカナコちゃんは泣いてアオミちゃんにすがりつく、それの繰り返しだった。


「カナコちゃん、本当に大丈夫なの?」

「大丈夫だよ、もうミスはしないから」

「カナコ、別にカナコが誰と恋しようが私達は応援する、でも、いつも騙されてるじゃない」

「今度こそは大丈夫だから!ココは私が払っておくから、次行こうよ」


カナコちゃんは伝票を持ってレジに向かった、アオミちゃんはカナコちゃんには厳しいけど、それはカナコちゃんの事を本気で気にしてるから、カナコちゃんが失敗する度に泣いてるのは私やカナコちゃんだけじゃない、アオミちゃんも泣いてたんだから。



私達はカナコちゃんが見たい映画があるから、見に行く事にした。

私達は広い道を3人で話しながらながら歩いた、夏休みだし人も多いせいか、アオミちゃんが視線を集めてる、アオミちゃんは私やカナコちゃんも集めてるって言うけど、やっぱりアオミちゃんだよ、私は胸かな。


カナコちゃんは話に熱が入りだして、後ろ向きに歩き始めた、体を使いながら力説してる。

私とアオミは笑いながら歩いてると、カナコちゃんはよろめいた、そしてそのまま後ろ向きに倒れた、………………けど通りすがりの人に受け止められ、何とか助かった。


「大丈夫ですか?」

「は、はい」


その人は真っ青な長い髪の毛のイケメン、肩に届くくらい長い髪の毛はその人の妖しさを増させる、カナコちゃんがこんな人に助けられたら……………。


「好きです」


やっぱり、カナコちゃんが惚れた、しかも助けてくれた人はカイ君、アオミちゃんの弟、そして隣にいるのは妹のツバサちゃん。


「カナコちゃん、その人は―――」

「カイィ!やっぱりカイは最高!私の大切な友達を助けてくれるなんて」


アオミちゃんはカナコちゃんを退けてカイ君に抱きついた、カナコちゃんは目を真ん丸にして二人を見てる。

私はカナコちゃんの隣に行くと、カナコちゃんはすがりつくように私の腕にしがみついた。


「マミコ、あの人誰?あのアオミが女の子になってるよ!」

「あれは噂の弟さん、隣にいるのは妹さん」

「あの人が弟さん………」


カナコちゃんは口を開けながらカイ君を見てる、ツバサちゃんはアオミちゃんが抱きついた事に騒いでる。


「…………カッコイイ」

「でも彼女いるよ」

「つまんない、なんか美男美女の姉弟に可愛い妹、絵になりすぎ」


でもカナコちゃんは恋してるんじゃないの?惚れっぽいのもココまで来ると浮気癖になっちゃうよ。


「アオミ、早く行こうよ、始まっちゃうよ」

「アオミ、行ってやれよ、マミ姉も待ってるし」


アオミちゃんはカイ君と離れると、今度はツバサちゃんがカイ君の腕を抱いた、カイ君も頑張ってるね、熱烈な姉妹を持つと。


カナコちゃんは終始カイ君に見とれながらカイ君から離れた、その後‘カッコイイ’を連呼してたのは言うまでもない。

でも何でカイ君とツバサちゃんが一緒にいるんだろ?ツバサちゃんはなんだかんだ言いながらも、コテツ君を優先するし、カイ君もそれをさせる、………まぁたまには兄妹デートも良いよね?


カイ君を羨ましく思ったカナコちゃんは自分の妹の自慢を始めた、空手をやっていて、小さい頃からそこの師範代に恋をしてるらしいんだけど、師範代は彼女を作っちゃったってお話。

カナコちゃんとは正反対の妹さん、一途で相手の事を想い続ける、例えその人が違う人を好きでも想い続ける、それって凄い事だよね?とても出来る事じゃないよ。


「それであんな感じの妹なんだけど、……………ってメグ!?」


カナコちゃんは仲の良さそうな二人組を指差して驚いた、驚いたのはカナコちゃんだけじゃない、私とアオミちゃんも。

そこに生じた矛盾、私でも分かるくらいだから、色々知ってるであろうアオミちゃんは険しい顔になる。


「メグ!何でこんなとこにいるの?」

「姉さん!?」

「何やメグはん、知り合いでっか?」

「うん、うちの姉さんだよ」

「後ろにいるんはアオミはんに蘭はん?」


コテツ君は顔を出すと満面の笑みで私達に手を振る、コテツ君の事だから浮気じゃないと思って、私は笑顔で手を振ったけど、アオミちゃんは険しい顔のまま。


「コテツ君はマミコとアオミの知り合いなの?」

「そうやで、カナコはんが二人の友達だったなんて意外やな」

「そうかな?それより二人は何やってるの?」

「今日はメグはんの誕生日やろ?せやからお祝いや」

「でもコテツ君って彼女いたよね?」

「でも幼馴染みの誕生日の方が大事やろ?」


その時アオミちゃんがコテツ君の前に立った、この背中は何度も見た事がある、それはカナコちゃんが失恋した相手への復讐の時、その時のアオミちゃんは本当に怖い。


「コテツ、あんたツバサの誘い断ってるでしょ?それで他の女とデートとは良い身分ね」

「でも誕生日やで、ツバサのは埋め合わせ出来るけど、メグはんの誕生日は今日だけや、当然こっちを選ぶやろ?」

「あんたがそんな最低な男だなんて思わなかった、ツバサがどれだけ楽しみにしてたか知らないくせに。

ツバサを大切にする気が無いなら別れてなさいよ、ツバサはあんたを癒すための道具じゃない、あんたみたいな男にツバサは任せておけない」


アオミちゃんはそのまま私とカナコちゃんの手を引っ張ってその場から去った、アオミちゃんは明らかに怒ってる、確かに分かるけど、あそこまで声色を低くしたアオミちゃんも久しぶりに見た。


ある程度歩くと、カナコちゃんはアオミちゃんの手を離し足を止めた、アオミちゃんと私が振り向くと、悲しい顔をしたカナコちゃんがいる。


「あそこまで言う事無いんじゃない?それにアオミに関係無いでしょ?」

「関係あるわよ、コテツの彼女は私の妹、さっきカイの隣にいた子よ」


カナコちゃんは大きな目を更に見開いてアオミちゃんの顔を見た、アオミちゃんとツバサちゃんは本当に仲が良い姉妹、だからアオミちゃんはツバサちゃんの笑顔が何よりも嬉しいって言ってた。


「ツバサはハヤさんに貰った映画のチケットで、今日デートに行こうと思ってたの、最初は行く予定だったんだけど、昨日キャンセルされて落ち込んでた、でもカイが一緒に行ってくれて、何とか元気が戻ったけど、本当に落ち込んでたんだから」


カナコちゃんは返す言葉が無いらしい、確かに妹の事を考えたら今の状況は喜ばしい、でもそれによって誰かが悲しむのは辛かった、多分カナコちゃんの妹は悪くないけど、罪悪感を感じてるはず。

私が客観的に見てもコテツ君は間違ってる、コテツ君が優しいのは分かってる、でもコテツ君の優しさは見境が無い、それ故に傷付く人も多い、それにコテツ君は気付いてない。






ユキ君は大丈夫だよね?私がいない間に他の女の人に傾いて無いよね?私は我が侭だから、ユキ君に私だけを見ててほしい、それって間違ってる?

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