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黒と白3

休み明けの学校、私の足取りはいつになく重かった、理由は簡単、あれだけ会いたくて仕方なかったユキ君に会いたくないから。

確かに‘好きな人’を‘幼馴染み’にするのは辛い、でもアオミちゃんの闇が無くなるなら、私は喜んで辛い方を選ぶ、アオミちゃんの悲しい顔を見てたら好きな人を諦めるくらい簡単な事。



学校に着くと既にアオミちゃんは席に座ってた、いつものような笑顔を作れるかは分からないけど、今出来る精一杯の笑顔でアオミちゃんに近付いた。


「おはよう、アオミちゃん」

「おはよう」


笑いはしないけど、初めて話した時よりは角の取れた顔、私はその柔らかい顔を見てから、やっと本当の笑顔を作れるようになった。

それからは他愛もない話をした、今までみたいに打ち解けようとか、アオミちゃんの事を探るような会話じゃなくて、ただの友達としての会話を。

でも、私の笑顔はいとも簡単に崩された。


「マミぃ、アオミちゃん」


ユキ君はいつもの笑顔で教室に入って来た、私は崩れた笑顔を引き戻し、再び作った笑顔でユキ君に手を振る、それと違いアオミちゃんは穏やかな顔でユキ君に手を振った。


「アオミちゃん、これ借りてたCDぃ、ありがとねぇ」

「………うん」

「マミぃ、アオミちゃんのマンション凄かったよぉ、何かもうセレブって感じぃ」


私はアオミちゃんのマンションがどれくらい凄いかよりも、ユキ君とアオミちゃんがどれだけ近付いたかが気になった。

ユキ君がアオミちゃんに近付く度に私の心はズキズキと痛む、でもアオミちゃんがユキ君に近付くと嬉しくなる、圧倒的に痛みが強いけど、アオミちゃんが穏やかな顔をすれば、麻薬のように一時的に痛みは和らぐ、だからアオミちゃんには笑ってもらわなきゃ困る。




昼休み、アオミちゃんと私とカナコちゃんでお弁当を食べる事にした、いつものようにアオミちゃんの所に行こうとした時、カナコちゃんが一緒に来た。

多分アオミちゃんの事を良く思ってくれてるんだ、アオミちゃんも少し穏やかな表情。


「そういえば四色さん樹々下君と帰ったんだよね?」

「うん」

「どうだったの?」

「良い人だったよ」


私はその言葉がとても嬉しかった、初めてアオミちゃんの口から、男の人のプラスの言葉を聞いた。


私達はその後他愛も無い話で盛り上がった、最初の頃は喋ってくれなかったのに、今は話してくれる、後はユキ君がしっかりやってくれれば、アオミちゃんは笑えると思う。




帰りの時、カナコちゃんはバイトがあるから、自転車で先に帰って行った。

私はアオミちゃんと一緒に帰る事にした、帰る方向が同じだから少しでも長くいれる、それだけで私は嬉しかった。

その他大勢と同じように帰る、そんな事すらアオミちゃんは無かったんだと思う、闇は晴れてきても、核心の所は閉ざされたまま、無理にとは言えないけど、本当のところを知りたい。

学校からかなり歩いた頃、後ろから聞き慣れた声が。


「マミぃ!アオミちゃん!」


後ろからはユキ君が、アオミちゃんの表情は微妙に変わりユキ君に手を振る、私も軽く手を振ってまた自分の心を殺した。


「あっ!ユキ君、私、用事思いだしたからアオミちゃんを送って行って」


私はその場から走って離れようとした時、大きな手で腕を掴まれた、その手は紛れも無くユキ君の手、でも私は振りほどいて出来るだけ笑顔を作ってユキ君を見た。


「用事って何?」

「な、何でも良いじゃない」

「別に今まで忘れてたって事は大事な用事じゃ無いんでしょぉ?」


何でこういう時に限って勘が鋭いの?いつもならちょっとした嘘も見破れないのに。


「一緒に帰ろうよぉ、良いでしょアオミちゃん?」

「私は良いけど」

「ねぇ?マミ」

「私は遠慮しておくよ」

「アオミちゃんも良いって言ってるのにぃ?」

「…………私が良く無いの」


無理だよ、これ以上ユキ君に嘘を付き続けられない、アオミちゃんも疑い始めてるし、ユキ君は一度言い出したら聞かないし。


「何でぇ?」

「私はいいから、アオミちゃんと二人で帰って」

「やだよぉ、俺はアオミちゃんと帰るタメに追って来たんじゃない、マミと帰りたいから追って来たんだよぉ」


こんな時に嬉しい事言わないでよ、私の決心が揺らいじゃうじゃない、折角ユキ君への気持ちに蓋をしたのに、それにアオミちゃんの前でこんな事、…………ユキ君の馬鹿。


「この前だってそうだよぉ、同じ方向なんだから一緒に帰れば良いだろぉ?俺はアオミちゃんよりマミと帰りたいのにぃ」


アオミちゃんの前でそんな事言わないで、折角ユキ君と近付いたのに、アオミちゃんが誤解しちゃうよ。


「幼馴染みと帰るよりも、可愛い女の子と帰った方が楽しいでしょ?」

「もう、何で分からないかなぁ?俺はマミが好きなのぉ、マミが好きだからマミと一緒に――――」

バチン!


私はユキ君の顔を思いっきり叩いてた、ユキ君もアオミちゃんも目を大きくしてる、それもそうだよね、初めて人を叩いたのが一番大好きなユキ君なんだもん。

でも、よりによってアオミちゃんの前でそんな事言われて、幼馴染みとしてだったらどれだけ救われる事か。

ユキ君をの肩を思いっきり突き飛ばした、ユキ君は尻餅をついて私を見上げる。


「幼馴染みとして好きなんだよね?私は帰るから、アオミちゃんを送って行って」


私はそのまま走り去った、何だか分からないけど涙がとめどなく流れる、アオミちゃんのタメだと思っても苦しすぎる。

私はやっぱりユキ君の事が好きなんだ、でも、今はそれよりもアオミちゃんの事を考えてる、お節介って言われればそれまでだけど、私は一日でも早くアオミちゃんの笑顔が見たい、強いて言うならアオミちゃんの深い闇、それが覗く時が一番悲しい顔をしてからだと思う。

この涙が渇れる頃、アオミちゃんには笑っててほしい、そうすれば私はユキ君を捨てた意味があるんだから。




寮に帰るとベッドに倒れ込んだ、幸い泣き腫らした顔を誰にも見られずに自室まで辿り着けた。

やっぱり苦しい、シーツは順調に濡れていくし、押し殺した声は止まらない、でも今頃、アオミちゃんが笑っててくれれば、それが私の唯一の救いになる。

私の涙を止めるようにスカートのポケットで携帯が震えた、私はゆっくりと取り出すと、携帯のディスプレイにはユキ君の名前が、私はユキ君を突き放す最後のチャンスだと思い、通話ボタンを押した。


「もしもし?」

『マミぃ、今寮の外にいるから出てきてよぉ』

「アオミちゃんは?」

『一人で帰って行ったぁ』


私の我慢は無駄になったんだ、ユキ君の馬鹿、何で私の方に来たの?本当だったの?さっきの言葉が。


「帰って」

『イヤだよぉ、俺はマミと会って話しがしたい』

「私は話す事なんて無い」

『アオミちゃんに頼まれたのにぃ?』


アオミちゃんに?何でアオミちゃんがそんな事をするの?


『マミを怒らしちゃったから行ってだってぇ、アオミちゃんマミの事心配してたよぉ』


アオミちゃんが心配してくれるのは嬉しい、もしかして勘が鋭いアオミちゃんだから気付いたのかな?でも、もう後戻りは出来ないよ。


「そうかなぁ、アオミちゃんは照れ隠ししてるんじゃない?」


ゴメンねアオミちゃん、私はこれから物凄いイヤな女になる、でもそれも全部アオミちゃんの事を想っての事だよ。


「アオミちゃんはユキ君の事が好きなんだよ、だからきっと恥ずかしいからじゃない」

『知ってるよぉ』


嘘?何で、ユキ君がそんな事察するわけないし、もしかして私やり過ぎたのかな?


『アオミちゃんがもしかしたら俺の事許せるかもって言ってたぁ、でもマミが何か無理してるっぽいからマミには無理しないでほしいんだってぇ』

「とりあえず、………今日は帰って」


私はそのまま電話を切って、電源を落とした、私ってやっぱり馬鹿だな、折角頑張ったのに全部バレてたなんて、それに、譲るハズの私が譲られるなんて、本当に救いようが無いくらい馬鹿な女。




私はいつの間にか寝てて、起きたのはドアを叩く音、ドアを開けるそこにはカナコちゃんが立ってた。

カナコちゃんは同じ寮だからたまにこうやって遊びに来る、でも何だか顔色が曇ってる。


「樹々下君が下にいるよ」

「ユキ君が?」

「うん、マミコを待ってるんだって」


ユキ君から電話があったのは5時、今は9時半をだから4時間半も待ってたって事?何で、何で私にそこまでしてくれるの?

私は‘帰って’と一言だけのメールを送って、再び電源を落とした、まだ夜は冷えるし多分帰るだろうけど、念のために。




昨日は色々あり過ぎて考えてたらあんまり眠れ無かった、朝起きたら雨も降ってるし、気分は最悪。

学校を休もうと思ったけど、今休んだらユキ君もアオミちゃんもカナコちゃんも心配するから休めない、それに嘘の上塗りもしなきゃいけないし、また辛い1日になるんだろうなぁ。


私はいつものように寮母さんの作ったご飯を食べて、カナコちゃんと一緒に寮を出た。

その時、雨の中で門の柱に背を預けて座るユキ君が、傘もささないでビショビショになりながら、私を見ると立ち上がって近寄って来た。


「やっと…………出てきたぁ」


そのまま私に向かって倒れ込んだ、私はバッグも傘も放り投げてユキ君を受け止めた、体はビショビショで冷えきってる。

私は慌てて自室まで連れていくと、体を拭いた、寮母さんに気付かれたかどうかは分からないけど、今はそれどころじゃない。


「ユキ君!大丈夫!?」

「大丈夫、…………では無いねぇ」

「ゴメンね、私のせいだよね?」

「気にしなくて、良いよぉ」


そんな弱々しい笑い方されたら気にするよ、でもどうしよう、こんなにビショビショだと悪化する一方だよ、だけどユキ君に合う服なんてこの寮には無いし………。


「マミコ、入るよ」


入ってきたのはカナコちゃん、その腕には服が積まれている、私はカナコちゃんに近寄るとカナコちゃんは服を私に押し付けた。


「近くの寮の男子に借りて来た」

「カナコちゃん………」

「先生には言い訳しとくからね」


カナコちゃんはそのまま走って行った、私はカナコちゃんに渡された服をユキ君の隣に置いた。


「温かいモノ持って来るから着替えといて」


私は自室を出て階段を下りながら寮母さんへの言い訳を考えてた、当然寮は男子禁制、だから当然誰も男の子を連れて来ない。

私はキッチンに行くと寮母さんが出てきた、その手にはお盆が、お盆の上には熱いココアが2杯置いてある。


「コレでしょ?」

「あ、あのぉ、え〜と」

「カナコさんから話は聞いたわよ、二人は1週間食事当番だけどね」

「ありがとうございます!」


私は深々と頭を下げてお盆を受け取った、その時私の頭の中にはアオミちゃんに対する罪悪感と共に、自分の気持ちに素直になる事を決めていた。

自室のドアを開けると、スエットを着たユキ君が座ってた、相変わらず辛そうだけど、決して笑顔を崩そうとはしない、私はそんなユキ君が好き。


「ココア飲んで」

「ありがとぉ」

「ずっとあそこにいたの?」

「そうだよぉ」

「じゃあお腹空いてるでしょ?」

「調子が悪過ぎてあんまり感じないよぉ」


少し心が痛んだ、ユキ君はそんな意味で言ったんじゃないと思うけど、私の心はユキ君とアオミちゃんに対する罪悪感でいっぱいになる。

でもそんな感傷もドアをノックする音で吹き飛ばされた、私がドアを開けると、土鍋が乗ったお盆を持った寮母さんが。


「コレもいるでしょ?」

「何から何までありがとうございます」

「良いのよ、1週間も雑用やってもらうんだから」


何か増えたような気がするけど気にしない、私は寮母さんがいなくなるのを確認して振り返ると、ユキ君が床に倒れてた。


「ユキ君!?」


私はお盆をテーブルの上に置いてユキ君の体を揺らした、ユキ君は目を擦りながら起き上がると、眠そうな目で私を見る。


「ゴメンゴメン、一睡もしてないからさぁ」

「お粥食べて私のベッドで寝れば?」

「そうするよぉ」




その後ユキ君はお粥を食べてグッスリ眠った、私は食器を片付けてベッドの脇からユキ君を見てたら、いつの間にか私も……………。




起きた頃にはもうお昼になってた、そして私の頭には大きな手が乗ってる、顔を上げるとユキ君の笑みが。


「おはよぉ」

「ゴメンね、寝ちゃって」

「別に良いよぉ、寝言だけどマミの気持ちも聞けたしぃ」

「えっ!?嘘?私何か言ってた!?」

「嘘だよぉ、俺も今起きたところだしぃ」


ユキ君に初めて一本取られた、でも見た感じもさっきよりは元気そうだし、少し安心だな。

ユキ君は私の手をそっと握って来た、ビックリしてユキ君を見るとやっぱり笑ってる、私の顔は多分赤かったと思う、凄く熱いから。


「マミ、俺はマミの事が好きだよ、幼馴染みとしてじゃなくて女の子として」


ユキ君が普通の喋り方になる時、それは怒った時か真剣な時だけ、本当に決心して本気になった時だけしか普通に喋らない。


「わ、わたしも………き」

「何何ぃ?聞こえないよぉ?」


ユキ君は笑いながら耳を近付け来た、私はユキ君の両頬を両手で挟んで、ユキ君の唇に私の唇を押し当てた、半ば強引なキス。

触れる程度のキスにしようとしたのにユキ君に、後頭部を押さえられて長いキスになった、私の両手は既に力を無くして垂れてる、全てが溶けそうなくらい熱い、体が浮いたような感覚。

やっとユキ君の唇が離れた時、私の指先に至るまでが力が入らなかった。


「でぇ、何て言ったのぉ?」

「……………、ユキ君が大好き!ユキ君の馬鹿!」


ユキ君はいつもより綺麗な笑顔で笑った、私の方から驚かせようとしたのに、何でいつも気付くとユキ君のペースなの?


「あっ、風邪がうつっちゃうかもぉ」

「そしたら責任とってよね?」

「父親になれって事?」

「……………馬鹿」


ユキ君は笑いながらベッドに横になった、部屋が静かになると徐々にアオミちゃんの顔が浮かんでくる、コレでアオミちゃんの笑顔は作れなくなった、でも今のユキ君を手放す勇気は私には無い。


「アオミちゃんは分かってくれるよぉ」

「えっ?」

「今アオミちゃんの事考えてたんでしょぉ?」


やっぱり今日のユキ君は鋭い、今の私は丸裸にされたみたいに何も隠せない。


「アオミちゃんはユキ君の事を、少なくとも普通の男の人よりも良く思ってる、だから私じゃなくてアオミちゃんを選んでほしかった」

「今でもぉ?」

「今は…………、嫌、アオミちゃんには悪いけど、ユキ君を誰にも渡したくない」

「アオミちゃんは分かってくれるよぉ、仮にもマミの事を心配してたんだからぁ」


アオミちゃんの笑顔はいつになったら取り戻せるのかな?ユキ君といれば笑えたかもしれないのに。

でもココまで来たらアオミちゃんが笑う日まで私は一緒に居続ける、それが私が唯一ユキ君と笑っていられる条件。



その日、ユキ君は夕方くらいまで一緒にいた、言うまでもなく帰る時はこっそり出ていった、カナコちゃんや寮母さんは知ってたけど、他の人は知らないからね。

一人になった私は自然と笑みが溢れた、この部屋で私はあんなに長いキスをしたんだ、ユキ君と幼馴染みじゃなくなった、世界一大切な人、それが一番近いかな?




翌日、お昼休みにユキ君と一緒にアオミちゃんの所に行った、心配してくれたし、物凄く重い報告しなきゃいけないんだよね?

それを考えるだけで足が言うことを聞かない、でもユキ君が引っ張ってくれたから何とか歩けた。

アオミちゃんはいつも通り校庭の隅でお弁当を食べてる、今日はカナコちゃんも一緒にいた。


「仲直りしたの?」


アオミちゃんは何も言わなくても分かってくれた、でももしかしたら全部分かっちゃったかも、カナコちゃんはユキ君がココにいる理由の見当が付かないっぽいけど。


「それで―――」

「樹々下君にまた告白されたの?」

「また!?告白!!?」


カナコちゃんは目を真ん丸にして、私達とアオミちゃんを交互に見る。


「樹々下君から聞いてから」

「アオミちゃんの相談してたんだぁ」


私の努力は全てが無駄だったの?本当にユキ君は人の気持ちを裏切るのが得意なんだね、私的にはかなり心が痛むけど。


「その様子だと上手く行ったんだ?」

「えっ!?マミコと樹々下君が付き合ってるの!?」


アオミちゃんはそっと立ち上がって、私に近寄って来た、私は申し訳ない気持ちでアオミちゃんの顔を直視出来ない。


「私も好きだった人を勝ち取ったんだから、ちゃんと幸せになりなさいよ、マミコ」

「あ、アオミ…………」

「ほぇ?全然分からないよ」


その時、確かにアオミちゃんは笑った、目を細めて、口角を上げて笑った、私は思わず抱きついて、アオミちゃんに何度も謝ってた。

それにこの時初めて名前で呼ばれたんだよね?本当の友達になれたんだよね?






あれから2ヶ月、私とアオミちゃんとカナコちゃんはいつも一緒にいた、毎日が輝いて、毎日が新鮮だった。


「マミコは夏休みどうするの?」

「私は暇だよ!」

「カナコには聞いてないわよ」

「むぅぅぅぅぅぅぅ」


アオミちゃんは最初の方は無かったけど、本当は毒舌だったんだよ、まだ私達の前だけだけど、他の人とも少しずつ話せるようにはなってきた。


「私はユキ君と島に戻るよ、島で一個下の幼馴染みも待ってるし」

「はぁ、良いなぁ、マミコには彼氏がいて、アオミは?」

「いないけどカナコとは一緒にいないわよ」


またカナコちゃんの顔が膨らんだ、アオミちゃんはその顔を見てクスクス笑う、私はそれだけで幸せになれた。


「アオミちゃんは実家に帰るの?」

「あんな所に帰らないわよ」

「でも弟君がいるんじゃないの?」


アオミちゃん自慢の弟さん、アオミちゃんはその言葉を聞いた瞬間顔色が変わった、まるで出来立ての彼氏を自慢するような顔に。


「そう!聞いてよ、私の弟は本当にカッコイイんだから、中3の時の事なんだけど、私が風邪を引いて保健室で寝てた時、授業中なのに真っ青な顔して、息を切らしながら保健室に入って来たんだよ、私その時嬉しくて抱きついちゃった、もう、本当にカッコイイんだから!」


多重人格と疑うくらいのテンションの差、本当に弟さんに恋してるかと思うくらい、自慢話をしてる時は輝いてる、私の見たかった顔。


私がカイ君とアオミちゃんが姉弟だって事を知るのは、まだまだ先の事、ユキ君にしか興味が無かった私は全く気付かなかった。


コレが私とユキ君の始まりでもあり、私とアオミちゃんの出会いでもある、全ては校庭の隅から始まった。

――――――――――――――



















隣には今でもユキ君がいる、東京ではアオミちゃんもお兄ちゃんも待っててくれてる、みんな私のかけがえのない人達、私の口で‘ありがとう’って言いたい人達。






アオミちゃん、私はアオミちゃんのお陰で、私の小さな両手じゃ抱えきれないくらい幸せだよ、だからアオミちゃんも幸せになって、それが私の最後の幸せだから。

本作で度々出てくるパンクバンドの小説を始めました、その他で『不思議パンク』として連載中です、良かったら読んで下さい。

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