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黒と白1

私の前には私が想い続けた人がいる、2年前に死んだハズの彼が、でも今こうやって身を寄せあってるって事は生きてるんだ、彼の温もりも声も笑顔も、全部が戻って来た、今の私は世界一幸せ。

そう、この幸せが始まったのはあの時だった、あれから私は本当の幸せを手に入れたんだと思う、ユキ君のあの言葉から。













――――――――――――――

私達がまだ高校に入ったばっかりの頃、私もユキ君もまだお互いの気持ちを知らない、ただの幼馴染みだった頃。


私とユキ君は違うクラスだったし寮も違ったからあんまり会わなかった、学校で会っても軽く挨拶するくらい、でもその時の私には挨拶だけでも心が踊ってた。


昼休みのお弁当は仲良くなった友達と一緒に食べてたけど、その日は一緒に食べてる友達が休んじゃったから一人で食べれる場所を探してた。

お弁当と飲み物を持ちながら外を歩いてる時、校庭の隅に一人で食べてる女の子を見つけた、黒染めした真っ黒なウェーブの髪の毛、モデルみたいに美人な女の子、それが同じクラスの四色蒼海ちゃん。

私は誰とも話さないアオミちゃんを不思議に思って近寄った、アオミちゃんは一人で黙々と食べてる。


「一緒に食べて良い?」

「嫌だ」


それは冗談じゃなくて本心だったと思う、でもそれで私の何かに火が付いて、アオミちゃんとお友達になるって心に誓った。

私は嫌な目をされながらも隣に座ってお弁当を広げた、高校ってこんなに人がいるんだから友達を沢山つくらなきゃね。


「四色って名前珍しいよね?私の蘭も珍しいけどね」

「…………………」

「どこの中学校から来たの?私は遠くの島から」

「…………………」

「それ黒染めでしょ?しかも何回も繰り返した」


最後の質問だけは微妙に反応した、でも他の質問はピクリと反応せずにひたすらお弁当を食べ続けてる。

普段他人と率先して喋ろうとしない私が何故かアオミちゃんをお友達にしたかった、本当に何でかは分からないけど。


「髪の毛凄く痛んでるよ」

「良いのよこんな髪の毛」

「何で?」


何よりその時は話してくれた事が嬉しかった。


「忌々しい」

「せっかく親から貰った体の一部なのに」

「だからよ」

「それなら今度染める時は私に言って、髪の毛の事は人一倍詳しいから」


私は精一杯の笑顔で笑った、でもアオミちゃんはそそくさとお弁当を畳んで立ち上がる、私を見下したその目は凄く悲しく冷たい。


「もう私に関わらないで、友達ゴッコは嫌いなの」


そのまま帰って行った、一人残された私はショックや恐れの前に、意味の分からない闘志が沸々と沸き上がってきた。



次の日もアオミちゃんは同じ所で同じく一人で食べてた、今日は登校してきた友達には理由を話して一緒に食べるのは断って。

アオミは可愛いというより綺麗だけど、何も話さないその様や、話した時の冷たい目で敬遠されてる、だから私の友達も来なかった。


「関わらないでって言ったでしょ」

「別に、私はココでお弁当が食べたいだけよ」


アオミちゃんは舌打ちをして黙々と彩り豊かなお弁当を食べ続ける、何してても様になるくらい綺麗な人だなぁ。


「お弁当は自分で作ってるの?」

「…………………」

「私は毎日自分で作ってるんだ」

「……………………」

「ちょっと味見させてよ?」

「嫌」


やっぱり手強い、でもココで食い下がったら私の負けよね、それにアオミちゃんは今後ずっと一人のまま、それは可哀想だよ。


「お願い!私の玉子焼きとアオミちゃんの玉子焼き交換しよ?」

「………………交換なら良いわよ」

「ありがとう」


私はアオミちゃんのお弁当に私の玉子焼きを持って行ったついでに、アオミちゃんの玉子焼きを貰って口に入れた、コレが私とアオミちゃんの友達の第一歩。


「美味しい、アオミちゃん美味しいよ!」

「……………あ、ありがとう」

「アオミちゃんが作ったの?」


アオミちゃんは何も言わないし頷きもしないけど、多分ありがとうって言ったから自分で作ったんだろうな。

アオミちゃんは私の玉子焼きをゆっくりと口に入れた、無表情で食べると言うよりはただ口を動かすだけと言った感じ。


「美味しい?」

「…………不味くは無いわね」

「アオミちゃんには敵わないけど、これも私が作ったんだよ」

「あっそ」


簡単に流すとまたお弁当を食べ始める、食べてるのが絵になる女の人なんてそんなに多くは無いよね?アオミちゃんは本当に完璧な容姿、とても同じ高校1年生には見えない。




私はその後も毎日アオミちゃんと一緒にお弁当を食べた、アオミちゃんはあんまり話したりはしないけど、最初に比べたらまだ喋ってる方、一言くらいしか喋らないけどね。

今日もほとんど私が一方的に話てる時、遠くから真っ白な髪の毛を逆立てた長身の人が。


「マミぃ!何してるのぉ?」


ユキ君だ、ユキ君はバスケットボールを持ちながら笑顔で走って来る、アオミちゃんは珍しく手を止めてユキ君を見た。


「お弁当食べてる」

「この子はぁ?」

「四色蒼海ちゃん」

「よろしくねぇ」

「よ、よろしく」


ユキ君は友達に呼ばれてそのまま走って行った、ユキ君はどうか知らないけど、私はこの時は既にユキ君の事が好きだった。


「誰?」

「へ?」


アオミちゃんが急に質問してきてビックリしちゃった、だってアオミちゃんが私に質問したの初めてなんだもん。


「今の人誰?」

「幼馴染みの樹々下雪君」

「ふ〜ん」

「そうだ、アオミちゃんって好きな人とかいるの?」


アオミちゃんだってやっぱり女の子だもん、恋のお話とかなら少しは話してくれると思って聞いたんだけど、失敗だったらしい、少し嫌な顔をして私を睨んだ。


「男なんて大っ嫌い」

「何で?」

「あんな浅はかな生き物」


アオミちゃんはあっという間にお弁当を片付けてそのまま帰って行った。

その時から私は男嫌いの理由を聞こうとはしてない、嫌われるのがイヤとかじゃなくて何か大きな傷を背負ってると思ったから。






1年生恒例の親睦キャンプ、私は一人だったアオミちゃんを誘って6人の班にした、皆には嫌な顔をされたけど頼み込んで入れて貰った。


バスに乗ってる時に隣に他のクラスのバスが止まった、丁度向かい側にはユキ君がいる、ユキ君は笑顔で私に手を振ってきたから返した、ユキ君はそのまま私の隣の窓際に座ってるアオミちゃんはにも手を振る、アオミちゃんは小さく手を振るとユキ君の周りの男の子が集まって来た、私はユキ君に手を合わしてカーテンを閉めた。


「何かいっぱい集まっちゃったね」

「やっぱり浅はか」


私はその時から薄々感付いてた、アオミちゃんがユキ君の事を他の男の子とは違う目で見てる事を。



私達は恒例らしい旅館まで歩くイベント、こんな苦痛じゃ深まる親睦も深まらないよ。

グチりながら歩く者、夜に出てくるゼリー1個に燃える者、諦めて楽しんで歩く者。


「アオミちゃん頑張ろう」

「嫌よ」

「でも歩かないと………」

「着けば良いんでしょ?」


アオミちゃんは反対側に向かって歩き始めた、班行動は厳守だから皆はブーブー言いながらアオミちゃんに着いて行った。


5分くらい歩くと民家の前で立ち止まる、アオミちゃんは振り返ると、私がいつもお弁当を食べてたお友達の前に立った。


「東雲さん、私の背中に乗って」

「な、何で?」

「良いから」


カナコちゃんは渋々アオミちゃんの背中におぶさった、アオミちゃんはそのまま民家のインターホンを鳴らす、私達はビックリして見てると中から小さい人の良さそうなおばさんがが出てきた。


「あのすみません、クラスのキャンプで旅館まで歩いて行かなきゃいけないんですけど、この子が足を捻っちゃって歩けないんです、もし良かった車で送って欲しいんですけど…………」

「あらあら、大丈夫?」


アオミちゃんは声色を変えて喋ってる、悪知恵だけはあるんだ、他の子は喜んでアオミちゃんに期待を寄せてる。

おばさんはちょっと見せてと言いカナコちゃんの足を触ろうとしてる、ヤバい、これじゃあ嘘がバレちゃう。


「痛い!」


おばさんが足に触った瞬間にアオミちゃんがカナコちゃんのおしりをつねった、おばさんは慌てて手を離す、アオミちゃん凄いよ。


「これは大変、すぐに手当しないと」

「早く行かなきゃいけないんで出来れば車の方をお願いしたいんですけど………」

「でも早く手当しないと」


今度こそ絶体絶命のピンチ、ココまできて嘘がバレたら大変な事だよ、やっぱり引き際も肝心だよね?


「それなら湿布と包帯だけ頂けないでしょうか?時間が無いですし私どもで手当しますので」


それが懸命な判断だよ、早く退散しなきゃバレて大変な事になっちゃう、それに本来なら歩かなきゃいけないんだから。


「それなら車出すからその中で手当しなさい」


そう言っておばさんは家の中に入って行った、アオミちゃんは振り返ると背負ってるカナコちゃんを見た。


「ごめんなさい」

「良いよ、それに四色さんのお陰で楽に行けそうだし」


皆口々にアオミちゃんを誉めてる、おばさんが車のキーと救急箱を持って出てくると、皆でバンに乗って旅館へと向かった、当然怪我してないカナコちゃんの足を手当しながら。




私達はおばさんのバンを見送ると、アオミちゃんがカナコちゃんを下ろして皆でハイタッチした。


「四色さんありがとう!」

「何か四色さんのお陰で楽して着けたね」

「でもよくあんなのすぐに思い浮かんだね?」

「面倒だったから」


そのままアオミちゃんは歩き出した、私達も意気揚々とアオミちゃんの後ろを着いて行く。

旅館の前には先生が立っててそれで順位を決める、アオミちゃんが先生の横を通り過ぎようとした時、先生がその行く手を阻む。


「お前ら早くないか?」


ヤバい、確かに早すぎた、コレってずるがバレたらお説教だよね?せっかくアオミちゃんと皆が仲良くなったのに、これじゃあアオミちゃんのせいになっちゃう。


「タクシーか何か使ったのか?」

「地元住民が近道を案内してくれました」

「そうなのかお前ら?」


皆目を真ん丸にして頷く、先生はそうかと行って通してくれた。


私達は部屋に着くと大騒ぎ、全部アオミちゃんの悪知恵と口のお陰、可愛い顔した悪魔ってアオミちゃんの事だね、私も人の事は言えないけど。






このキャンプが私とアオミちゃんの距離を近付けた、その時の私は近付いたのは私とアオミちゃんだけじゃないという事を知らずに。

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